第3話 筆おろしで交わす永遠の契り💒

——チュパチュパ……ジュルジュル……

 隣から音が漏れて来る。僕も同じ音を立てるのか?

 するとスカートの幕が上がった!

 僕は童貞のまま処女を捧げるんだ!

 あれっ?

 現れたのは黄色いバナナだ。正真正銘のバナナだ。いちゑ様はピッタリ閉じた太腿にバナナを挟んでいる。覚悟してたけど肩透かしをくらった。でも胸をなでおろした。


 僕はバナナの先っぽを齧る。黄色い皮を少しづつ剥いていく。案外うまくできた。白い果肉が頭を出している。白い果肉が口の中に入って来る。

「まだ齧っちゃダメだよ。折れない様に咥えてね」


 彼女は、ゆっくりと腰を引く。黄色い皮が綺麗に剥けた。白い果肉が僕の口から、そそり立っている。これはAVでも未見だ。どうするんだろう?

 僕よりも先にバナナの筆おろしか?


「一緒に食べましょう」

 彼女も膝立ちになり、そそり立つバナナを咥える。バナナを使ったポッキーゲームが始まった。いやボッキーゲームと言うべきか?

 どんどん彼女のご尊顔が近づいてくる。いつもの苺いちゑ様とは様子が違う。彼女は乱れない。涼しい顔をして童貞を喰う。今は琥珀の瞳を潤ませている。切れ長の目をとろりとさせている。僕を見つめる視線は熱い。

 苺いちゑ様のご尊顔が間近だ。鼻先が衝突する。

 彼女に抱き着かれたまま押し倒された。僕は身を委ねる。唇を奪われると、バナナよりも甘い味が広がる。口の中に舌が滑り込む。口の中を犯されているみたいだ。舌と舌を絡み合わせた。息つく暇がない。でも、窒息死しても構わないや!

 ようやく息つく間ができた。口は解放されたが、体が身動きできない。細腕に抑え込まれている。柔肌の下敷きになっている。完全にマウントポジションを取られた。でも抜け出す必要はない。もはや僕の身も心も苺いちゑ様のモノだ!


「あの……いちゑ様、僕の初キッス有難うございました。とっても嬉しいです」

「お礼を言うのは私の方よ。こんな美味しいキスは、私も初めてよ。君って、酒も煙草も女も知らなかったんだね。口の中、未だ乳の残り香がするわよ。口からも、童貞臭さが溢れ出て来るわ。今まで味わったことが無いくらい濃厚よ。魔王様の唇は極上の前菜ね」


 白魚が僕の胸や腹の上を泳いでメインディッシュを包み込んだ。黄金の指で弄ばれている。

 いつの間にか、苺いちゑ様は苺のパンツもスカートも脱ぎ捨てていた。下脱ぎは僕のツボだ。下半身だけ、すっぽんぽんである。パイパンが神々しい。

「こんなの邪魔ね」

「でも妊娠とか大丈夫ですか?」

「撮影でも、つけたこと無いわよ。つけたら童貞力を吸収できないわ。それにね、わたし、な~💛」

「安室逝きま~す♡」


 さくらんぼのような唇と白魚のような指は、僕の体中を弄ぶ。弱点を波状攻撃される。尻の皺まで数えられてしまった。なんか処女を奪われた気分だ。そして僕も導かれるまま、彼女の躰を貪った。柔らかくて温かくて、とても甘い。もちもちしてるけど、すべすべしている。白い肌には染み一つない。今までモザイクで隠された秘部も堪能させてもらった。桃のような尻に敷かれている。

「ケンちゃん、

 心に残る名台詞だっ!

 僕は苺いちゑ様の中に呑み込まれて逝く。脳も体も溶けてそう。蜜の底なし沼から抜け出せない。どんどん沈んで逝く。魂が体から離れて吸い取られていく。そんな感覚だ。これが本当のHなんだ?——気持ち好さは想像を超えている!


 ついに童貞卒業した!

 もう死んでも悔いが無い。いや、むしろ死んだ方が好い。このまま生きていても、人生これ以上良いことはないだろう。一合一会だから苺いちゑ、一生に一度きりだ。もう、彼女と永遠に離れ離れだな。隣からは未だ甘い声が漏れて来る。そんな中、僕は再び一人ぼっちにされる。そう思うと、とても切ない。切なくて涙がこぼれ落ちそうだ。僕は彼女にしがみついた。僕の頭を撫で撫でしながら囁く。

「君は甘えん坊さんでちゅね。ママはどこにも行かないわよ」

「でも思いを遂げたら、もう離れ離れなんですよね?」

「そうね、撮影でもプライベートでも、並の童貞さんはそうよね。一回で童貞力が尽きちゃうの。まるで味の無くなったガムみたい。でも君の童貞力は全然減ってない。いくら舐めてもしゃぶり尽せないチュッパチャプチャプ飴みたいなもの。さすが魔王様ね。私も、まだ君が欲しいなっ💛」

「じゃぁ、一回限りじゃないんですね?」

「そうよ。二回三回、十回、百回、千回、万回でも未だ未だ終わらない気がする。私も、こんなの初めてよ。いま本当に女に目覚めた気がするわ。女のさがが満開ね。セカンドヴァージン喪失したみたい。もう永遠に君を放せないかも💛」

 嬉しさのあまり強く抱きしめる。乳離れできない幼児みたいだ。彼女も僕の頭を強く抱きしめてくれる。胸の谷間で窒息死しそう。


「僕、ずっとずっと、いちゑ様のお傍に置いてもらえるんですか?」

「そうよ。私も君の傍から離れないからね。君が望むなら、君の恋人にも、君のお嫁さんにも、君のお母さんにもなるわよ♡」

「本当ですか?」

「本当よ。魔女は嘘つかないから」

「じゃあ、僕と結婚してください。心を入れ替えて一生懸命働いて、あなたを幸せにしてみます」

「私のような不束者でよろしければ、どうか貰って下さい。喜んで、あなたの妻にも母にもなりましょう。それでは、婚約の儀式を始めましょう。——大いなる知恵の光・松田大明神、大いなる契りの光・弥勒尊、大いなる恵みの光・弁天尊よ、三柱の神々に誓います。魔王ケン様、ケン魔王様、犬魔王ケン様、あなたはここにいる雌犬でビッチでウィッチな、いちゑを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、この世が終わるまで永久とこしえに、妻として愛し、母として敬い、貞節を守る事を誓いますか?」

「はい、大いなる知恵の光・松田大明神、大いなる契りの光・弥勒尊、大いなる恵みの光・弁天尊よ、三柱の神々に誓います。僕、犬魔王ケンは、いちゑさんが雌犬でビッチでウィッチであろうとも、いちゑさんのことを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、この世が終わるまで永久とこしえに、妻として愛し、母として敬い、貞節を守る事を誓います」

「大いなる知恵の光・松田大明神、大いなる契りの光・弥勒尊、大いなる恵みの光・弁天尊よ、三柱の神々に誓います。雌犬でビッチでウィッチな、いちゑは犬魔王ケン様のことを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、この世が終わるまで永久とこしえに、夫として愛し、子として慈しみ、貞節を守る事を誓います。——これで私たち、天にあっては比翼の鳥、地にあっては連理の枝、そして赤い糸よりも太い絆で結ばれるのよ。この世が終わるまで」


 二度目は、初めての接吻よりも更に熱くて甘い。舌を絡め合いながら、二人とも溶解して融合していくようだ。今度こそ本当に、魂が体から離れて吸い取られていく。甘い蜜の沼に落ちて目も開けられない。

 濃厚な甘さに溺れなら、頭によぎった。誓いを立てているときは気が付かなかった。言われたとおりに復唱しただけである。何処か引っ掛る。夫や妻は判る。母とか子とか、この世が終わるまで永久とこしえって何だろう。かなり後になって、その意味が分かった。誓いは言霊に縛られている。これが魔法だったんだな。


——ピピピピピ、ピピピピピ……🎶

 無粋な着信音に陶酔を邪魔された。陶酔権侵犯だっ!

 僕は携帯持ってない。いちゑ様は髪を振り乱しながら携帯を取った。

「ぁん、もしもし、ぁん、わたしよ。どうしたの?」

「……ドウシタ?……イマドコ?……」

 好く聞こえないけど男の声かも。やっぱオトコいるよな。それでも好い。いちゑ様の尻の下にいたい。

「あぁ……ぁん、えっと、ドウテイクンノウエヨ💛」

「……エッ?……コナイノカヨ?……」

「あぁ、うん、わからない。ぁん、もう逝ってるけど、もう行けないわね。ごめんなさい。じゃあね、バイバイ……ぁぅ💛」


 二人は息も絶え絶えのところで一息入れた。いちゑ様のオトコのこと考えるとモヤモヤする。でも、僕が寝取ってオトコの方が振られたんだよな。罪悪感なんて無い。人生はじめて勝ち誇れた気がする。


「ねぇ、さっきのデンワ気になるんでしょ?」

「ぃぇ、まぁ……カレシとかですか」

「やきもち焼いてるのね。うれしぃっ。でも彼氏じゃないわよ。元彼ですらないわね。……なんて言ったらいいかしら。……自意識過剰なイケメン・ストーカー・ヤリチン・チャラヲ君かしら?」

「やっぱ、いちゑさんモテますもんね」

「人のオスから好かれるのは確かよ。でも、いままで彼氏なんて作ったこと無いわよ。女の子の恋人除いたら、あなたが初めての恋人で夫よ。……でもね、なんて他人行儀ね。もう他人じゃないのよ。呼び捨てで好いわ。あなたは御主人様なんだから、メスイヌとかメスブタと呼んでも好いのよ」

「流石にメスイヌとかメスブタは気が引けますね」

「みんな私のことドSだと思ってるみたいだけど、実はマゾなのよ。魔女だけに」

「でも僕は、いちゑさんの尻に敷かれて弄ばれたいんです。僕こそ、いちゑさんに隷属したいんです」

「あなたが私に甘え、私があなたを甘やかすってことね。……う~ん、お母さんとお子ちゃまみたいね。……私のことママって呼んでね。尽くすわよ」

「わ~いママ大好き♡」

「もう私は、あなた、これからは、あなた一筋よ。私の軽いお尻は魔王様、あなたのモノよ。だって二回目なのに、違和感も拒絶反応も全く無い。御珍宝は新鮮ピチピチな童貞のまま。魔王様の新鮮御珍宝は、私のモノ💛」

 激しくキス攻めしてくる。なんか誤魔化されたな。彼女を信じたいし、オトコの存在は認めたくない。嫉妬心がちょっと燻るけど、ああ、もうどうでも好いや。もやもやした気持ちは、気持ち好く彼女にぶつけよう。

 最中たびたび呼び出し音が響く。もちろん、そっちのけだ。

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