4-2
朝7時に署に着くと、一番で大木から報告を受けた。
「おはようございます。斎藤宅を張り込んでいた捜査員から報告がありました。昨晩は自宅に帰っておりません」
斎藤の母親から聞き取りをした捜査員二名は、その後斎藤宅近くに車を停めそのまま張り込みをしていた。 斎藤は、妻と離婚しており、子どももいない。大きな家で母親と二人で暮らしている。母親は、昨日は一歩も外に出ていなかった。引き続き捜査員交代後任務は継続されている。
「3軒の店の方はどうなんだ」
「各店舗にそれぞれ二名づつ就いておりますが、こちらも動きはありません。引き続き張り込みを継続しております」
「はい解った」
「それと、コンサートに同伴した男の足取りですが、三島駅東側の駐車場出入口の防犯カメラに、駐車場内に歩いて行く二人の姿が映っておりまして、その後、車が一台駐車場から出ております。ガイ者が同乗したかは解りません。時間は21時55分、ナンバーは解析出来ませんでした」
「ナンバー確認が出来なかったのは痛いな。車種と色は」
「それが珍しい車でして、赤のランチアデルタインテグラーレ、92年から95年製のエヴォルツィオーネⅡというモデルだそうです」
「イタリアのラリーカーだな。生産台数が少ない上に日本での流通は絞られるはずだ」
「へー、警部お詳しいですね」
「あぁ、イタリア車は好きなんだよ、特にデルタはね。希少価値が上がり、中古市場での取引は高値で売買されている。車に何か特徴はないか、ラリーカーだけに泥除けが大きいだとか、ステッカーが貼ってあるとか」
「はい。車体の上面に、青と黄色のストライプが」
「それならば95年製造の最終ロット、日本市場向けのものだな。限定で200台かそこらだろう。ただデルタの場合、塗装を変えたり、ストライプをあと描きする場合もあるが」
「うひょー、お見逸れしました。先程デルタの情報をググってましたが、仰る通り。その線で所有者をあたっているところです」
大木は握り拳を胸の前で踊らせ、子供のような眼差しで新見を見つめた。
「ところで、川村さんが見えないが何処へ」
新見の問いかけに、
「はい。実は午前4時から勤務に戻りましたが、5時過ぎに急に胃の痛みを訴え倒れ込みまして、少し血を吐いて。そのまま救急車で病院のほうに」
大木は、すまなそうな顔をして答えた。
「それを早く言えっ!……血を吐いたのか」
「申し訳ありません。病院からの連絡では、胃潰瘍で
「穿孔……酷いな。それで川村さんはどうなんだ」
「先程娘さんから連絡があり、明日には署に戻ると。それまでは、私と早川さんで代行を務めます」
「いや、1日では済まないだろう。後で病院に行ってくる」
(七海の心配事が、現実になってしまった。彼女はどうしているか……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます