わたしのわたし
霧夜
わたしのわたしは
「七海って性格だけが取り柄だよね〜
笑」
「辞めてよ〜!!!笑」
私は適当ないじりに対して手作りの偽装の笑顔をしっかりと貼り付けてにこやかに笑った。心の中でまた傷ができた音がした。
今日も濁った満月は綺麗だった。
淡い水色の青春をみんなが纏う学生時代。
学生の頃は大人になれば今とは違う生き物になれるんじゃないかって思った。
大人ってもっとすごいと思ってた。
しかしそれは幻想であり残念ながら今もこういう女だし、変われてもないよ。と過去の自分に教えてあげたい。
私は未だに自分が大嫌いなんだよ、好きになれないよと。
数年前の話だ。
小学生にして自分がブスだということに残念ながら気づいてしまった不幸な私は
できる限り愛嬌のあるブスになろうと思い
様々なことをした。
プライドを捨てて自虐もしたし常に笑顔でいた。その頃から好きな人の為には料理も作るし謙虚でいたはずだし性格も良い方だと思う。
でもやっぱり顔という大事なピースが足りないだけでこんなにも人生が円滑にいかないものなのか。
顔がブスというだけで街では笑われるし
ブスというだけでいじめられてブスというだけで好きな人を諦められなきゃいけなくて人生ゲームはいつもクリアできない。
私だってぶりっ子したり可愛いピンクの服を着たかった。ツインテールだってしたかった。でもできなかった。
ブスは何もしていないのに。可愛い人と目の大きさが0.01m違うだけ。鼻が少し低いだけ。一重なだけ。なのに。なんでだろう。この違いは。
自分の駄目な所は自分が一番わかっているはずなのにそのを直せない自分嫌だった。
何回心を殺されても殺しても
実際は死ぬ勇気すら無くて
こんな事を語って自分を誤魔化そうとしてる自分が一番嫌いだった。
だから整形をしてみた。
たった目の上に線が増えただけなのに、鼻が少し高くなったけなのに、歯並びが良くなって、少し痩せただけなのに。
それだけで世間は少しだけ私に優しくなった。
整形は魔法なんかじゃないしそっからどうするか、が大事なのだけれど…
でも世間はある程度は顔と言う事がわかった。
頭の良い人や権力がある人は、可愛い美人と結婚するから頭と顔の良い子供が産まれる。
そういえば、小学生の時学年一可愛くて秀才の子はバイオリンを習っていてパパがお医者さんなんだよ、と言っていたっけな。
つまり顔が良い人間は産まれた時から運命は決まっているのだ。
私達は何もしていないのに産み落とされた時からブスで何もしてないのにブスと罵られた。しかしそんな生活とはもうさよならだ。
中学生の頃私をいじめたショートカットのりおちゃんよりも高校生の時私の好きな人を奪ったタレ目でボブのゆかちゃんより大学で私をフッた健人くんより顔の可愛い私は上なのである。今なら私は、私は。
「あの子ってブスじゃね〜w?」と私は呟きけらけら笑ってみせる。
「やだぁ〜!!本当に七海性格悪い笑
七海って顔だけが取り柄だよね〜」
二年前性格だけが取り柄と言われた事を
ふんわりと思い出す。
あの人もこの人も私の本当を見てくれないんだ、と思う。
私も変わってしまったし、もうあの頃には戻れないなと気づいた。
今日もまた濁った様な月が揺れた気がした。
本当の私ってまずなんだったんだろうと
治せなかった馬鹿で回転の悪い頭でふと思った。
今日もまた濁った様な月が綺麗だった。
そんな月が私の事を馬鹿にする様に静かに揺れた。
わたしのわたし 霧夜 @_1142_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます