第5話 エピローグ
鉄格子が、消えた。
今日一番の歓声が聞こえたかと思えば、ここに連れてこられてからずっと私を覆っていた重みが消えた。信じられない気持ちで部屋が出ようとする。が、上手く歩くことが出来ずにすぐ転んでしまう。歩こうとしたのは最後に兄さんに会った日、兄さんが私を解放してくれようとした日以来だった。
ふと床に視線を向けると赤い点があった。唇に手を当てると、血が指を濡らす。転んだ時に唇を切ったらしい。少し時間を置いて再度唇に手をあてる。また血が指を濡らす。この部屋に入ってから何度自分の体を傷つけてきたことだろう?その度にすぐ傷は塞がっていった。
ゆっくりと立ち上がり、壁に手を置いて進んでいく。暗い廊下を抜け、階段をあがり、出口にでると―――空が、青い空がどこまでも広がっていた。
自然と涙がこぼれ落ちていた。
ノタマノーライフ @ichiryu
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