伊藤時と炎
伊藤時が目撃した光景は、「炎の中に鈴木さんがいる」という光景だった。いつ、そう
なったのか?伊藤時は知っている。鈴木さんは、叫んだあとにそうのったのだ。
鈴木さんは叫んだあとに、ガソリンを
かぶったのだ。そして、鈴木さんは炎の中。
その光景について、その時、伊藤時はこう呟いた。「ああ。鈴木さん。死ぬのはまだ早いよ……」
そう、鈴木さんは、わたしよりも若い会社員だ。そんな鈴木さんは、今、炎の中にいる。
この時はまだ、炎は弱めで、鈴木さんはまだ、生きているが、炎がだんだんと強く
なっていく。そして!
鈴木さんは、伊藤時の目の前で、死んだ。
この時、伊藤時はまだ生きていたが……
(涙が少しずつこぼれる)ああ。ああ。ああ。(涙がたくさんこぼれる)ああ。ああ。ああ……
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!
申し訳ない。乱れてしまった。本当に申し訳ない。伊藤時は、伊藤時は、(涙が少しこぼれる)伊藤……時は……死んだ。(疲れた様子)
はぁ。はぁ。はぁ……
こ、これで……講演を……あ、そうか。この講演で、「時計とは何か」を話すつもり
だったけど、忘れてしまってたみたいで……
申し訳ない。
で、でも……思い出したため、そのことを
言って、この講演を終わりにしようと思う。
時計とは何か。わたしにとっての時計は、
「時計」ではなく、「命」。伊藤時が死んだ後、わたしは思った。金儲けでしかなかった時計だが、時計というのは「命」で。確かに、それを売って金儲け……というのが事実だが、時計、時計というのは……「命みたいに大切な、大切な、ものすごく大切なもの」だと。わたしは、そう思った。
さて、ここで終わりにしたいと思う。最後にも、口癖の「さて」を言ってしまったが、それについては、皆さん。許してほしい。
では、皆さん。伊藤時計屋でまた、お会いし
ましょう。まだ、来たことがない方は、この講演を気に来てみてください。
掛け時計・伊藤時と恐怖譚 KAZUMA @arahara07
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