第4話 ほんと私!モブの人生で十分ですから

 第7章。求職活動


 あの後、街道警備の騎士に拾われて、荷馬車に放り込まれ、帝都の職業斡旋

ギルド前で解放された。

私を、対抗手段散布犠牲にして先に進んだ鉄馬車隊は、魔狼の群れに蹂躙され、

全員行方不明らしい。


しかし、どんな状況になろうと、生きていかなくてはいけないわ。

だから、求職板の前で、私は目を皿にして、求人票を探している。


『なかなか、3食昼寝付きの求人はないですね。』


あんた、大商人の妾にでもなれというの。もとより、そんな美貌はないわよ。


『カオ・ルーさま。そんな事より、まずは私の名前を付けてもらえませんか?』


あのね~。


『なるほど、アノ・ネーですね。了解しました。』


ま、いいか。本人も納得しているようだし。さあ、求人票を探すわよ。

財布の中には、餞別にもらった銅貨があと3枚だけ。初日から野宿はいやだわ。

やっと、紋章付きの板に一枚だけ貼ってある求人票を見つけた。


織物をつくる職人(女)さんの求人。その手伝いと、家の掃除と食事の用意。

即日住み込み可! 契約妖精の縛りは? やった~、級外枠下妖精でもいいんだ。

香茶・食事は、向こう持ち、これだったら給料は安くてもいい。


受付に、この求人票を持って向かったわ。

そしたら、受付のお姉さんが絶叫。


「ギルドマスター。ユウイさんの求人票を、持ってきた人が!」


「絶対に逃がすなよ!」


あれよという間に、屈強な男の人達に囲まれ、否応もなく、鉄馬車に放り込まれた。


『ま、どうにかなるんじゃないですか。』


アノが能天気な事を言っている。こいつは~と思っている内にも、

鉄馬車は全速力でどこかに向かっている。


第8章。邂逅


「・・・・・・・カオ・ルーさんも、ガルスの街の出なの、私たちもよ。」


「この前まで、織物を手伝ってくれてたが他の事で忙しくなって、

代わりの人を探していたの・・・・・。」


私は、ポカーンとして、その神秘的な美貌の女性が話しているのを聞いている。

たしかお名前は、ユウイさんって言ったけ、どこかで聞いたような。

なんか催眠術にかかったみたい。一方的に話されてるのだが、ほとんどうなずくだけ。

ただ、今日から住み込みで働くのに、いつの間にか同意していた。

不思議な事に、このお家の前に来た時から、アノは一言も喋らない。


「じゃ、一緒に住んでいる妖精さんを紹介しようかしら。」


え、妖精さん? ユウイさんが、椅子から立ち上がって、部屋を出て行く。

部屋の外に超常的で物凄い圧が、この前の流星雨の比ではないわ。なによこれ!

扉が開く。


「あんたなの。セプティの代わりに、ユウイを手伝うって奴は?」


長身・緑黒色の長い髪・雪白の肌・黒の瞳・超絶の美貌・・・もしかしなくても?

私は、恐怖のあまり、気を失っていた。


☆☆☆☆


涼しい風が体の中を駆け抜けていくわ。意識が、暗闇の世界から現実の世界へ

浮上していく。


「あ、気付かれたようですよ。けど、ラティスさんあの挨拶の仕方メンチを切るは、

やめて欲しいんですがね。」


「ラファイア。回復魔力ご苦労。、私はなにもしてないわよ。」


え、ラファイアさま?白光の妖精さま?別の異次元の恐怖で体が硬直する。

気絶はしない。えらいぞ私。


「白光の妖精さま?ラティスさん、私の正体ばらしました?」


「ああ、それはね。こいつと妖精契約をしているアノとかいう三下を締め上げて

聞き出したから。アンタにもその内容を送るわ。」


「・・・・・。なるほど、この人は、私たちとも別の世界から転移してきたと。

へぇ~、私たちの事が、この人の世界のサーガ小説になってるんですね。」


「全く、人の言の葉にのらない、知られてないサーガみたいだけどね。」


「それは、サーガの題目に、ラティスさんの名を入れたためじゃ

ないですか・・・。」


「ラファイア。何か言った?」


「いえいえ、何も言っていませんよ。」


アノ、あんた私の記憶を探る事ができるの?問いかけてみるが反応がないわ。


「そうそう、ラファイア。カオ・ルーは、聖剣の事を想うだけで、

流星群が襲来するのよ。これはぜひ、経験せねばと思わない?」


「はあ~、そうきましたか。もう止める気ははないんでしょう。

リーエさんにも声をかけますから、仲間外れにしたら拗ねちゃう

超上級妖精さんですから。」


『おふたりに加えて、超上級妖精さまも!?ふぇ~。』


しんだふりをしてたアノが耐えきれなくなって、本当に気絶?したようだ。


終章。


 ラティスさまに首根っこを掴まれて、何もない大地の上に滑空して、

連れてこられている。満天の星空が美しい。

ラファイアさまも、本来の姿に戻られて、動くたびに白金の背光の一部が

虹色に、そして49色の光の粒に変わっている。

もうひとかた、目を合わせてくれない、緑光に包まれた、超絶美貌の妖精さん。

超恥ずかしがり屋さん、という小説の話はホントなんだ、といらぬ事を思い出した。


「ラファイア、持って来たでしょうね。カオ・ルーに渡して!」


「はい、これですよ。」


これって何ですか?ラファイアさま。


「ああそれですか、【聖剣エックスクラメンツ】ですよ。」


本物!!! 


次の瞬間、満天に圧倒的な数の火球が現われ、次々とこちらに降ってくる。


ひぇ~~。神様~、仏様~、雨蛙大明神様~!!!


「やるわよ、ラファイア!リーエ!」


ラティスさまの白銀の魔法円、ラファイアさまの白金の魔法円、

リーエさまの緑光の魔法円から、凄まじい光が放出され、

上空、落ちてくる火球を破壊、消滅させていく。

これって、創成期の世界?

ラファイアさん、その隕石の破壊の手法って、NAGOYA打ちですか!?


どのくらいの時間が経ったのであろうか。いつの間にか夜空の火球が消えていた。

なんか、空の上で、誰かが肩で息をしている映像が、心の中に浮かぶ。


3人の妖精さまは・・・・、スッキリした顔をしていらっしやる。


「カオ・ルーさん、楽しかったです。この世界は温泉と香茶ぐらいしか楽しみが

なかったからですね。」


「カオ・ルー。命令よ、私たちと一緒にきなさい。この下らない世界を

変えるわよ!」


ラティスさまの、黒い笑顔が炸裂する。


「そうですよ、私たちと共に歩めば、がありますよ。」


ラファイアさんの優美な笑顔も・・・裏があるようで怖い。


リーエさま、それって、⦅一緒に行きましょう⦆のポーズですか。


うすら悪い未来しか、思い浮かばない。


私は、今、痛烈に思ったわ。 モフモフのナウマン象が好き~! 違った!!


ほんと私!モブの人生で十分ですから。






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井の蛙線沿いに住む JK 【ラティスさま】 の世界に転移させられてしまう 稲の音 @inenooto

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