第3話 まるで 拡散波〇砲 のようね!

第5章。かすみの妖精


 8台の荷車を後部に引いた鉄馬車が、街道を進んでいる。

1台につき1人、前後に1人ずつの計10名の冒険者の護衛。

私は列の最後尾の鉄馬車が引く、荷車に揺られているわ。


さすがにキノコ・クラス、荷車に屋根はないし、床はほとんど抜けているし、

同乗者もいないので、貸切状態。旅に出て何度も、御者の人が、連結部が上手く外れるかどうか点検していたわ。ほんと、ドナ・ドナ・ド~ナ・ド~ナ~ね。

う~ん、深く考えるのはやめた方が良さそう。


『カオ・ルーさま。カオ・ルーさま。』


今日は、風が強いわ。空耳が聞こえるわね。


『カオ・ルーさま。カオ・ルーさま。』


旅に出て、土の上で寝てるし、眠りが浅いのね。今も眠いし、幻聴まで聞こえるわ。


『カオ・ルーさま。カオ・ルーさま。』


うるさいわね!


『やはり聞こえているんじゃないですか。初めましてカオ・ルーさま。

私はカオ・ルーさまと妖精契約した、かすみのエレメントの妖精です。

名前はまだありません。』


霞? 嘘言うんじゃないわ。妖精のエレメントは、風・火・水・土のはずだよね。


『いやですね~。暗黒とか白光とかあるでしょう。水の妖精のうち

選ばれしものが霧の妖精、そのなかでも更に選ばれしもの、

それが霞の妖精。』


え、正直に言いなさいよ。級外枠下妖精と契約したと断言されてるのよ。


『なにをですか?』


水のエレメントを落ちこぼれて、更に霧のエレメントも落ちこぼれたんでしょう。


『ははは、そうとも言いますね。けど、私は超上級妖精を超えるチートな能力を

もっているのです。なんと・・・、契約者の方と自由に話せるのです。』


ほかは?


『へ?』


例えば、氷結破壊とか、氷幻の障壁とか、魔力を持ち合わせているんでしょうね?


『まさか。生粋の頭脳行動者である私は、魔力でいえば、ちょぼちょぼと水が

出せるぐらいです。そうそう、水の妖精なのに火花を飛ばせます。』


つかえないわねぇ~。チェンジ! やはりできないか~。


『何ですか、それは?』


なんでもないわよ。モブの祝福が悪いのよ、モブの祝福が!

私は、とんでもない同行者と人生を共にする事になったようね。

あ、πがボッチの祝福はないと言ってたけど、だからか~。

は~あ。


第6章。拡散流星雨砲!?


 きのうの夜から、魔鳥キルギリウスの鳴き声が、近くに聞こえ出したわ。

警護の冒険者さん達の態度もきのうの昼間までとは違う、

無口で真剣なものに変わっていった。

なのに、こいつときたら・・・。


『カオ・ルーさま、今日も朝からいい天気ですね。帝都への道程も・・・。』


心の内?脳内?で、のべつまくなしに、くっちゃべっている。

前世の経験がなかったら、おかしくなっていただろう。

点けっぱなしのTVと思えば、どうってことはない。うん、さすがボッチの人生。


・・・・・・・・


「魔狼の群れが現れた。いや、もう囲まれているぞ!」


鉄馬を操りながら、最後尾にいたイケメンの冒険者が大きな声で叫びながら、

鉄馬車と私が乗る荷車の連結部を破壊して、前方の鉄馬車へ警告に追い越していく。


運動エネルギーの供給が無くなった荷車は、街道の真ん中で、ポツンと止まる。

魔狼の群れが、土埃をあげて背後からせまる。


『ああ、これがお約束というやつですね。』


もう、しゃべるなおまえは!

荷馬車の中で頭を抱えて座り込んだ私の周りを、醜悪な匂いをまき散らしながら、

魔狼の群れが駆け抜けていく。見逃してくれたの?


『そんなわけないじゃないですか。御馳走の方を優先したんですよ。

カオ・ルーさまが逃げないように、2頭ほど残っていますし。』


あのねぇ~、アンタ。自分の契約者が危機なのよ。

助けたいとか、殊勝な心掛けはないの?


『へ?ありませんね。カオ・ルーさまがお亡くりなっても、また新たな契約者様と、

妖精契約を結めばいいだけの話ですから。』


は、アンタ。今まで妖精契約に成功したことはないでしょう。

妖精契約のあの場所で、あの紫色の光球と親近感を持つて契約を望む

人間は今後現れないと、このカオ・ルーが保証してあげるわ。


『・・・・・・。カオ・ルーさま、一緒に逃れる道を探りましょう!』


そんなこんな事をしている間に、魔狼の数が増えていた。

使えねぇ妖精と、この状況よ。私は力を欲したわ。


【ラファイスの禁呪】・・・使用者の命を引き換えにするかもしれないからダメか。

もとい、【聖剣エックスクラメンツ】でもあれば・・・。


魔狼の群れが硬直し、上空を見上げる。いつか感じた寒気が背を走る。

え、空からカウントダウンが聞こえる!


8(オクタ)、7(ヘプタ)、6(ヘキサ)、ーなぜかギリシャ語

5(ウー)、4(スー)、3(サン)、-なぜに中国語

2(ドゥ)、1(ウーヌス)、-最後はラテン語なの

0(ニヒル)!


凄まじい音響と、眩いばかりの光が天空に走る。

見上げる、超高空から火球の団体さんが、私に迫ってくる。

え、そうかモブキャラのくせに、聖剣を欲したから?

けど、祝福発生のハードルが低すぎるんじゃない。


『ひぇ~~。』


なんで、霞の妖精、アンタの方が先に悲鳴を上げてんのよ。

そう思いながらも、私自身も恐怖にさいなまれ、大声で叫んでいた。


≪わ~私はモブです。真正のモブです~。聖剣なんて求めません!≫


私の心からの叫びが、さっきカウントダウンをした、誰かさんに届いたのか、


⦅ツゥキーン⦆⦅ツゥキーン⦆⦅ツゥキーン⦆⦅ツゥキーン⦆⦅ツゥキーン⦆


高い金属音が響いて、赤白・燈白・黄白の火球が、空中で、四方八方に拡散する。

これって、まるで拡散波〇砲のようじゃない。

次の瞬間、私を避けて、火球の豪雨が周りの大地を穿ってゆく。


・・・・・・・・


シュ~ シュ~ シュ~ と地面が燃えて、音を立てている。

気絶?していた霞の妖精をたたき起こして、周りの大地を冷やさせつつ、

帝都の方角にふらふら歩きながら、気付いてしまった。


これって、結構チートな力になるんじゃない!




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