第2話 転移した!んだけど

第3章。妖精契約の日


 私の名は、カオ・ルー。ガルスという街の孤児院に居住している。

今日は初等学校卒業前の妖精との契約日で、今その最中。

光る巨大な城のような中の、上下左右の感覚すら消えた白い世界。


4色の数多くの光球が飛び回っていた。


赤色は火のエレメントに属する妖精・青色は水のエレメントに属する妖精・

緑色は風のエレメントに属する妖精・黄色は土のエレメントに属する妖精・


けど、どの光球も、私の近くに寄ってこなかったし、当然契約成就がならないので、

私は、あせっていた。


白い世界が揺らぎだし、残りの時間もあまりないようだし、らしきところで

逃げ遅れた感のある紫色の光球を、むんずと踏みつけ、


『汝・妖精よ、我を通して力を得る事を認める。かわりに、我が力を欲する時、

制限なく奉仕せよ。』


と、聖呪を唱えたら、凄まじい衝撃が、・・・・・・・。


☆☆☆☆


≪もし も~し、カオ・ルーさん、私は伊邪那カオル。ちょっと、答えなさいよ。

彼女の記憶はあるけど、彼女の意思?魂?はどこ、ひょっとして失敗。

もしかして、私が追い出しちゃったの。わ~これから、どうしろというのよ。≫


☆☆☆☆


妖精契約の場でパニックたけど。もう私が、カオ・ルーとして生きるしかないわね。

契約の場を脱出して、覚悟を決めて【アピ・ラス】の世界に踏み出す。

私に、妖精契約の門の守護の騎士がひとりが話かける。


「遅かったな、君で最後だ。早く妖精契約の可否を図る精密機械の元へ進め。」


前回、アマトという影の薄い先輩が、正統な契約に失敗して、

道端で妖精を拾って、契約したって話ね。πから流された小説の中にもあるわ。

そいつが、極めてヤバイ奴、≪暗黒の妖精ラティスさま≫だったから、

今回からは、即時鑑定になってしまったというわけか。


そう、ヤバイ妖精との契約だったら、即、隔離をしてしまえという事かしら。

火あぶりにしようとしたら、自分達が焼かれる方になっちゃたら、

皆嫌だろうからね。


ま、今回から失敗したら火あぶりっていうのは、無くなったので、まあ、楽勝ね。


・・・・・・


「級外枠下妖精だ。」


え、何言ってるの、このおっさんは。紫の光球よ。の色よ。前の世界では!


「聞こえなかったか、級外枠下妖精だ。」


「ショックだったのはわかる。だが、お嬢ちゃん⦅生きてりゃいい事もあるさ⦆。」


なに、そのモブ道の究極奥義のような言葉は。私は今、いい事が欲しいの!


・・・・・・・・


仕方なく、孤児院に帰ってきたけど、姉御(シスター)に、


「聞きましたよ、カオ・ルー。枠下妖精との契約だったそうね。

昔から、鈍くさい子供だったけど、初級妖精との契約もできなかっとは。

紫色の光球でも捕まえたんですか!?」


あんたはエスパーか、と言いたいけど単語自体が通じないだろうから、沈黙を守る。

なんて賢いのかしら、私。


「カオ・ルー。このような事になった以上、ガルスの街はおろか、公都ノープルでも

職探しは無理です。だけど、大乱で荒廃した帝都ならひょっとしたら、

職があるかもしれません。」


「残念だけど、明日からはあなたの食事も寝所も用意できません。

あなたも、孤児院の仕組みは知っていますよね。」


わかってますよ。ある年齢に達したら、自力で生きていかなくてはならないのは。

それでも、今のレオヤヌス大公陛下即位以前だと、初等学校にもいけずに、

自分の食い扶持を稼がなければならなかったのよね。


ま、前の世界みたいにニートはできないのね。働かざるもの食うべからず真理だわ。

これが、〇〇令嬢だったら、実家の力なり、彼氏さんの力なりで、

フラグが立つ日まで、食う・寝る・恋愛するは、何とかなっていたんだろうけど。


「カオ・ルー、聞いていますか?帝都への定期鉄馬車は、月2度しかないので、

明日の早朝の便で、帝都に立ちなさい。」


「どうせ、ボッチだったあなたには、別れを惜しむ相手もいないでしょう。」


ごもっとも。え、同じ立場だった、カレー・ルーは中級妖精と契約したんですか、

費用公国持ちで、ノープルの高等学院へ改めて進学ね。やはり、名前どおり

美味しいところをいくわね。


私も妖精契約が上手くいけば・・・。どこからともなく、メテオ隕石マーチ行進曲が聞こえてきそう。あぶない、あぶない・・・。


第4章。ガルスの駅にて


 朝早くから、鉄馬車の駅にきている。


姉御(シスター)は旅行ギルドに話を通しておいたと言ったけど。

キノコ・クラスとは何よ、鉄馬車の最低切符は、梅・クラスじゃなかったの。


『 松・クラス・・・鉄馬車内乗車、車内泊、食事・警備あり。

  竹・クラス・・・鉄馬車内乗車、屋根付き荷車泊、食事・警備あり。

  梅・クラス・・・屋根付き荷車に乗車、車外泊、食事・警備あり。

  キノコ・クラス・・・荷車に乗車、適当に泊、食事・警備あるわけないしょ。』


警護の冒険者に言われたわ。


「お嬢ちゃん、オレも長い間、この職をやっていたけど、キノコ・クラスの客は

初めてだな。」


「だが、悪い事ばかりではないぜ。魔獣とか、盗賊とかでたら、一番に逃がして

やるからな。」


それって、餌代わりに、一番に隊列から放り出されると言う事じゃなくて。


「そうとも言うな。ま、それが、キノコ・クラスのお約束ってやつだ。

ハハハ・・・。」


もう、何とでも言いなさいよ。


「いや、いや、魔獣や盗賊に出くわすのは10回に1回ぐらいだし。」


前回はいつよ?


「そう言えば、ここ9回ぐらいはなかったな。」


ならもろ今回は、そろそろ危ないと言う事じゃないの!?


「そうかもな。ま、お嬢ちゃん⦅生きてりゃいい事もあるって⦆。」


もう、その究極奥義は、いらないわよ!





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