井の蛙線沿いに住む JK 【ラティスさま】 の世界に転移させられてしまう

稲の音

第1話 はじまり、はじまり

第1章。はじまり


 私の名前は、伊邪那カオル。井の蛙線沿いに住んでるわ。


今年の4月から、地元では有名なお嬢様学校、Ⓚ学園に通う事が決まった、

明日は入学式。

休みは今日1日しかなくなったけど、用意もできているので、趣味の時間に使っても

いいわよね。


私の一族には秘密がある。なんと、アマテラス様の人格部分のモデルになった女性が

祖先にいるということだ。これは、世界的に有名な彗星発見の先生に暴露され

私の一族を特定されなかったものの、都市伝説となって、未だに都市伝説の世界の

片隅に残っている。

ともあれ、今の私には全く関係のない事であり、これからもそうだろう。


さて、私の趣味は、ラノベ小説を読むことだ。私一押しの、大河先生様の小説の

更新が、今日あたりなっているはず。


【更新された連載小説】の欄を見る。


『あった~。大河先生様、更新なさっている。』


急いでクリックする。急ぎ過ぎたせいか下のモブ作をクリックしてしまう。

不吉だ!朝から厄日が、決まったような感じだ。

何より、急ぎ過ぎたとはいえ、大河先生様の小説とあんなモブ作とを間違えで、

クリックした自分が恥ずかしい。


そういえば、裏の広場の桜が満開と言ってたな。不思議な事に裏の桜は常に

遅咲きで周りの桜が散ってしまってから、咲いてくる。

それを見てから、大河先生様の作品を読もう、美しい桜の花を愛でてから、

素晴らしい珠玉の作品を味わう。

我ながら素晴らしいアイデアに酔ってしまう。

そうと決まったのて、早速、でかけてこよう。


満開の桜はやはり、日ノ本の美を象徴しているみたいで素晴らしい。

背後が急速に明るくなった。

ハッと後ろの空を仰ぐ。


「天使さま?」


次の瞬間、意識が消えた。



第2章。モブの祝福



『カオルさま、カオルさま』


誰かが呼んでいる。眼を開ける、周りはボーっとしている。

霧の中にいるみたいだ。自分の周りだけが、明るい。


『前の人生お疲れ様でした。私はπパイと申します。覚えておられないかも

しれませんが、これでお会いするのは、何度目かになります。』


えらく、馴れ馴れしい声が響く。え、ちょっと待って、私亡くなったの?


『はい、私から言えばお戻りになったという、感じですが。』


まって私は伊邪那カオル。名前はわかる。家族は?友人は?どこで生きたの?


『異世界転移をなさるために、不必要な記憶の大半は消去してあります。』


『けど、これでは話が進みませんね。少しカオルさまの人生を

おさらいしましょう。』


『カオルさまは、日ノ本というところでお生まれになり、こちらにお帰りになる瞬間

まで、保育園・幼稚園・小学校・中学校とモブでボッチな人生を

送ってこられました。』


『そう、カオル様は、モブの祝福を持っておられて、それに反する未来、

《有名なお嬢様学校に通われる》事になったので、

モブではなくなってしまう、それではいかんという事で、

祝福が発動、隕石にお当たりになって、戻って参られたのです。』


ちょっと待って。モブの祝福って何よ?


『思いだせませんか?カオル様の前世のひとつが、日ノ本で一番有名な女神さまの

人格部分のモデルになってしまわれたことで、この世界では何度転生なされても、


【祝福】ーモブ以外の人生は送れないというモブの聖性ー


の影響をお受けになります。』


そうだったわね。あんたとの前回のやり取りを、思い出したわ。


『そうですか。それは良かった。前回転生なさる時、今回もモブだったら違う世界へ転移してモブ脱出を図りたいと、ダダをこねられましたので、今回は特例として

それを受け入れ、異世界転移になります。』


『ここは、中継地で、留まられる事はできません。すぐに転移に取り掛かりたいのですが。』


今さらなんだけど、異世界ってどういうとこ?


『あわの宇宙論をご存じですか。同時に無数の宇宙が存在しているという

考え方ではありますが、これは事実でもあります。』


『カオル様がよくお読みになっていた、ラノベの世界は、作者様の頭の中で

創作された世界と、実際にある無数の世界のひとつを作者様が無意識の

精神感応で捉えて、作品にしているふたつのパターンがあります。』


じゃ私、大河先生様の小説の世界に転移できるっていうの?


『残念ながら、大河先生様の小説は、先生様が創作された世界です。もし異世界だったとしても、モブの祝福を持たれるカオル様は、その世界へは転移できません。』


けど、聖女様とか女性の魔導師様とか公爵令嬢様とか悪役令嬢様とかに転移できる

わけね。


『フッ。』


なに、その吹き出し笑いは。


『まず儀式をされて、ここに来られてないでしょう。』


なによ、その儀式って。


『トラックにぶつかるとか、超過労で倒れるとかですよ。』


『隕石(笑い)だったら、モブ(小説)世界のモブキャラにしか転移できません。』


なによ、その設定。いいかげんにしなさいよ。


『設定ではないんですが。わかりました、ひとつのチートな能力を

お与えしましょう。』


『なんと、カオル様がどんなに動揺しても、だれにも悟られないという

超チートな能力です。』


なにそれ、モブ属性の強化じゃない。そんな能力いらないわよ。


『そう言わないで下さい。モブの祝福を持つカオル様には、このくらいしか

付与できないんですよ。前回でボッチの祝福は消えましたから、

ボッチになるかどうかは、努力次第という事で。』


じゃ、そのモブの世界自身は私が選んでいいの?


『フッ。』


なにその二度目の、吹き出し笑いは。


『あらわれ出でよ!』


なに急に現れた、四角い板の上に丸いルーレット?えらい安普請ね。

こっちはボーガン?


『じゃ~ん。πの転移先ルーレット。』


『今から、ルーレットを回しますので、ボーガンから運命の矢を放って下さい。

それで転移先が決まります。』


あ、回りだした。ボーガン、ボーガン、これを引くのね!


『命中です。【アピ・ラス】の世界に決まりました。おまけとして【アピ・ラス】の

小説を、現在終了している頁まで、心の中に、お流しします。』


な、なに。心に、【アピ・ラス】の小説が流れ込んでくる。

いや~!こんな世界いや~!


『もう決まったんですから。それにモブキャラの人生ですから、普通の日常生活を

送ればいいんですし。なにも御活躍なさる必要はございません。ラッキーですね。』


『あ、この世界でさえ、モブ道に反したら、隕石が落ちてきますので、

そこのところは、お気をつけて。』


モブ道って何よ。名取とか名人とか特待生とかいるの。


『ハハハ、言ってみただけですよ。それに上手く行くと、今回でモブの祝福が

無くなってしまうかもです。』


ちょっと待ちなさいよ。え、足元が光り出した。


『ではでは、行ってらっしゃいませ。』


光が包みこんでくる。まてよ大河先生様の作品をクリックしようとして、

間違ってクリックしたモブ小説のタイトルを思い出した。


・・・・【アピ・ラス】・・・・


「わ~。大厄じゃん~。」


私は果てしなく落ち込んで、かつ落ちていった。

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