好きな人出来ました~友達と被っちゃったどうしよう

東雲三日月

第1話 嘘でしょ被るって

──クラスで一番仲のいい親友と被った。


──そう、それは好きな相手。


親友の心愛 ここあは元彼とは別れたばかり……男子に良くモテるタイプの女の子で、良く女子から恋愛相談をされたりする。ロングヘアの似合う女の子だ。


その点私菜々香 ななかは彼氏なんていたことは一度もなく……恋には奥手であまり慣れていない女の子。だから、心愛に良く恋愛相談に乗ってもらっていた。


──そんなある日の出来ごとだった。


今日は高校がお休みで、中学も高校も同じ仲良し三人組の心愛と私と恵那 えな、恋には積極的なタイプだけど、皆の恋を何時も応援してくれる優しい女の子。この三人で心愛の家にお泊まり会を開催している時に衝撃の事実を知ることになってしまったのだ。


昼過ぎ……心愛の部屋に集まってジュースやポテチ、ポッキーやクッキー……色々お菓子を持ち寄り女子会真っ最中に女子三人集まって盛り上がる話といえばそう、恋の話……恋バナである!


「ねぇ、菜々香最近好きな人できたでしょ? なんか雰囲気で分かるって言うか……最近可愛くなってるような?」


「えっ……心愛お世辞やめてよ! 最近可愛くなんかなってるかな? えへへ」


「うんうん、私も最近菜々香が可愛くなったような気がするよ! これはお世辞じゃないからね。絶対好きな人出来たんでしょ?」


恵那まで私のことを可愛くなったと言ってきた……。


「正解だよ。二人とも良く分かるね……えへへ」


ずっと二人にはバレてないって思ってたのに、二人とも感がよすぎるのだから流石である。


「ずっと好きな人が欲しいって言ってたんだから、好きな人が出来て良かったじゃん」


「心愛のお陰だよ……前に言ってたじゃん。待ってるだけじゃ何も始まらないって! だから、勇気を出して挨拶してみたんだよね。そしたら私に挨拶返してくれてさ……えへへ」


「へぇー、恋に奥手な菜々香が実践するなんて凄いね。偉い偉い……」


私の頭を撫でながら、恵那が関心してくれている。


「ところで菜々香の好きな人って誰なの?」


好きな相手までは分からないようだ。お菓子を片手に持ちながら、満面の笑みで心愛が聞いてくる。


恵那も口にお菓子を頬張りながら、こっちに顔を近付けてきた。


「もしかして何だけど、図書室にいる尾形 尾形先輩だったりして……?」


突然そう言ったのは心愛である。


「だって最近菜々香図書室に行くこと増えたよね。しかも、行く回数が増えたのって図書室の受付が尾形先輩に変わってからだし……」


「わぁー凄い! 心愛は良くそんなところ気付くね! 恵那は全然そんなこと気にしたことも無かったよ。ねぇ、菜々香が好きな人って尾形先輩であってるの?」


「えへへ……そうだよ! 尾形先輩と委員会が一緒になったんだけど、胸がドキドキして……一目惚れってやつだよね。それから惹かれるようになったんだよね」


「わぁー凄い! 一目惚れしたんだね!」


急に恵那のお目目が爛々になり、凄いって何故か連呼された。


「でも、未だなんの進展も無いんだけどね! ついこの間私から初めて挨拶したってだけだもん」


「それだけでも凄いことだと思うよ! 今までずっと好きな人できても菜々香は遠くから見てるだけだったじゃん」


恵那が凄いってまた頭を撫でながら沢山私を褒めてくれた。


──その時だった。


「あのね、本当は言いたくはなかったんだけど……私も先輩のこと好きなんだよね」


突然、 暫く私の頭を撫でていた手を止めて恵那がひとことボソッとそう言ったのだ。恵那は随分迷ったのだろう、でも、結局教えてくれたのである。


私が驚愕する暇もなく、今度は心愛が口を開いた。


「さっきからずっと黙っててごめんね! 実は私も先輩のこと好きなんだよね」


その言葉を聞いて私も恵那も驚き、呆然としてしまった。人生で初めて好きな人が出来たというのに、まさかのライバル出現である。


この恋は未だ何も始まっていないけど、もう終わりを迎えているのかもしれない。奪い去られてしまうことも覚悟しなくてはいけないのだろう。


やがて、沈黙が続いた後、心愛がまた口を開いた。


「まさか菜々香と同じ相手を好きになるとはね! せっかく好きな人見つけたんだもんね。私菜々香と対立なんてしたくないの。恵那ともね。だから私は諦める……」


「……」


突然知ることとなった三人の思い……それなのに心愛は諦めるだなんて突然言われても、何て言えば良いのか分からない。


そっと隣に座る恵那を見ると、恵那も戸惑っているようだった。


「あのさ、尾形先輩かっこいいよね!」


戸惑っていたはずの恵那が話し出した。


「うん、かっこいいね」


私がそれに答える。


「まさか三人が同じ人を好きになるなんて思っても見なかったからちょっと驚いたけど、心愛も、好きな人が被ったくらいで諦められるような恋なわけないでしょ!」


「……ううっ……」


「ほら、やっぱりそんなの無理なんじゃないの。良い、これから三人恋のライバルだからね! でも、私達は仲良しなんだから、この中の誰が先輩と付き合ったとしても、私達の仲はこんなことで壊れたりしないんだからね。心愛も菜々香も分かった!? 」


「うん、分かったわ」


そう返事をする心愛を見て私も「うん」と頷いた。


あの時、何も言えずにいたけど、私も心愛に諦めて欲しいなんて思わなかった。何も言えずにいたけど、ライバルになる覚悟くらいできていたのだから……。


── こうして私達三人は恋のライバルになった。


──そして、お互いの恋を応援することも約束した。


──誰かが結ばれても消して壊れない友達の絆。


だから、これからも私達の友情は無くならない。大丈夫! これから何があってもずっと私達は仲良し三人組だよ。



それから色々あって、三人共各々尾形先輩に 告白をした。


「頑張ってね菜々香!」


「頑張って恵那!」


「頑張るんだよ心愛!」


私達はライバル同士、お互いの恋の行く末を応援し合った。


結果、付き合うことになったのは私……菜々香である。


失恋してしまった二人に対して、凄く申し訳ない気待ちで胸がいっぱいだった。


「心愛、恵那、ごめんね!」


放課後、屋上に二人を呼んで謝る私。


私の口からその言葉を聞いた後、心愛も恵那も泣いている……だから、私も一緒に

泣いた。


三人で抱きしめあって沢山泣いたあと、心愛と恵那に、「なんで菜々香が泣いているのよ」と言って、涙でぐしゃぐしゃになった顔で突っ込まれる。


「だって二人のこと思ったら悲しくなっちゃって……」


「ふふふっ、菜々香ありがとう。でも、これが恋だからね。上手く行かない時だってある……諦めずに告白できてよかったわ」


心愛が笑顔でそう言った。


「私も告白できてよかった! 今は失恋して泣いたのもあるけど、菜々香が上手くいったことに嬉しくて泣いたってのもあるんだからね!」


恵那は流れ出す涙が止まらないまま、そう言うと、また三人で抱きしめあって泣いた。


それから暫くして、二人から「おめでとう」と言わる。


「二人におめでとうって言われたら私……」


更に涙が止まらない! 溢れ出す涙を止めることなんて出来なかった。


「ほら、もう沢山泣いたんだから、これからは笑顔だよ! 皆で笑顔!」


心愛がそう言って笑顔で笑うと、恵那も私も一緒に笑いあった。



──素敵な仲間に恵まれて私は幸せ。


──いつか、二人の恋も成就しますように。


夏休み。三人で思い出にと遊びに来た京都でのお参り……私は二人の幸せを祈願した。


「ねぇ、菜々香は彼氏と会うんじゃなくて大丈夫だったの?」


「うん、私達の友情は絶対だからね! 彼氏とはまた今度デートする約束したよ……えへへ」










































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好きな人出来ました~友達と被っちゃったどうしよう 東雲三日月 @taikorin

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