第23話、黄色い花とイースさん

「ようこそ、君……達……が屋敷……を買ってくれるのかい……」


 家主さんは引き摺るような長いコートのえりを立てて帽子を深く被り少し隠った声で歓迎してくれた。

 光が苦手な種族の方なのかな?

 ともかく彼に屋敷を案内して貰った。


「黄色い花だ」


 正面の正門を抜けると左右に花壇があり見知らぬ黄色い小さな花が咲く草が沢山生えていた。エムによると打ち身や切り傷に効く薬草だそうです、エルフは流石に詳しいなあ。


 花壇を抜け重厚なノッカー付きの両開きの扉を開けるとホールだった。少しジメッとして埃の臭いがする。家主さんにその事を聞くと普段は離れに住んでいて絵を描いているそうだ。あちこちに飾ってある花の絵が彼の描いたモノだそうだ。


「花がお好きなんですか?」


 女性だから花が好きなのだろうか、イブが絵を見ながら聞いた。


「そこまで大……好き……とい……う程では無い……よ。生……花を毎……日……飾る訳に……もい……かない……から普段は花瓶じゃなくて絵を飾るのさ」


 そりゃあ、そうか。大きな屋敷だと季節の花を育てて飾るそうだ。そんな事を出来るのは大貴族だけなんだろうなあ。


 ざっと見て1階は食堂、応接室、書斎、洋室、客間、風呂等。

 2階は寝室、客間、大広間、書斎等。

 地下は食料庫、ワインセラー、牢、何もない部屋等があった。


 外には使用人達が住んでいた家があり今は家主さんが住んで1人絵を描いているそうだ。


 その中庭の家を見せて貰おうと裏手の扉を開けると降りだした雨と質素な建物と鉄柵の向こうに墓場が見えた。


「今日はもう日が暮れましたし泊まっていかれたらいかがですか?」


 家主のピックマンさんはそう僕等に提案するのだった。


「ピピピピ」

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