第18話、鹿と猪とイースさん

 前日の酔いもすっかり抜けきった僕達は肉を求めて町を出た。やっぱりというかお付きの担当者はハイドラさんだった。


 薄々気が付いていたけど彼女はレンが気に入ったらしく馬車の扱い方を手取り足取り腰取り教えている。レンも満更でも無さそうで楽しそうに手綱を握っている。というか騾馬らばだから騾馬車らばしゃというべきかな?


 イースさんはともかくパーティーの女性達の冷たい視線をモノともしない御者席の2人。無敵だ。


「アル、君モアノ2人ニ混ザリタイカイ?」


「だ、駄目です!」


 イースさんが少し笑っているような声で鳴ると僕の腕を引っ張りイブが抗議した。仕事中だもの真面目にやろう。


 それでいて仕事は忘れずに仕掛けた罠を確認して回り10個の内3個にかかった鹿と鹿と猪を処理した。仲良く内臓を処理され川に沈められて明日引き上げて町に持ち帰る。

 3匹のキモは取りに来た者の特権として皆の夜の食事となった。役得役得!


「滑車ハ便利ダヨ、活用シヨウ」


 次の日、川で冷した鹿2頭と猪1頭を騾馬車に載せる時にイースさんの道具が活躍した。カッシャ?を荷台に設置して一方を鹿に固定して僕達は別の端のロープを引いた。思ったよりも軽々引けたけどやけに長かった!イースさんに言わせると軽くなる分長くなるそうだ、理屈はよくわからなかった。


 ともかく3匹の獲物を無事に得て返り道。御者のハイドラさんと足の遅めのイースさんは騾馬車の荷台に乗せて他のメンバーは歩きだ。帰路で出会ったのは町へ向かう商人さん達と旅人達、それと道と川を巡回警備中の町の騎士団員さん達だった。


「やあ、御苦労さん、大漁じゃないか!」


 魚人さん達が川から首を出して挨拶してきたのはビックリした。これは日常の出来事なのだろうけどまだ馴れないなあ。川でも海でも自由に出来る彼等は天職だよなあ。

 イースさんは彼等に顔?を向けて大きくハサミを振っていた。

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