第11話、見下げた男とイースさん
「
イースさんの機械が鳴らせながら今日の宿に馬車ごと向かう。今晩は休んで明日は荷を馴染みの店に届ける、僕は形だけの護衛で小遣い稼ぎの荷下ろしの人足になる。
スミスさんは今日と明日で荷を売り、明後日に買い明明後日にこの町を出る予定。僕達は出発を見送り今回の仕事は終わりとなり元の町に戻る。
そしてアネモネさんは寝たきりだったのにすっかり元気そうで小さな酒樽を馬車から荷下ろししていた。何をどうしたら彼女がパワフルな筋力を持つようになったんだろう?そっとイースさんを見る。
「施術中ニ 出血ガ 酷クテ 強イ薬ヲ 使ッタ」
今の彼女はトロルの半分くらいの力と回復力だそうだ。どんな薬を使ったんだろう?
「興味ガ アルノカナ 試シテ ミルカイ!」
「興味ガ アルノカナ 試シテ ミルカイ!」
嬉しそうに左右のハサミでいつもより高音で発音してきた。いやな感じがするので止めよう。
「残念デス」
イースさんは頭も口もハサミもショボンと力が抜けてガッカリして紫色の瓶を鞄に仕舞った。
「何でお前がここにいるんだ!」
そこにはアネモネさんに怒鳴りつけている見知らぬ男がいた。
「誰ですか?」
記憶の無いというか人格と共に捨てた彼女が覚えている訳は無くキョトンとしていた。男は顔を真っ赤にして怒鳴り続けた。
「
「お前が逃げたら村に山賊が来るじゃないか!」
どうやらアネモネさんを山賊に差し出した村人らしい。何とも見下げた男だ。
イースさんがアネモネさんと男の間に入り守る立ち位置にスルスルと移動した。
「彼女ヲ 山賊ニ 売リ渡シタノダロウ?」
「
イースさんがハサミを広げ庇うようにして強い音で話している。顔色じゃ判断出来ないけど、珍しい怒っているようだ。
「村の総意だ、山賊に差し出す女が必要だったんだ仕方ないだろう」
「ソレデ君モ 彼女ヲ 辱シメタノダロウ?」
「
「悪いか!弱いコイツが悪いんだ!」
「ナラバ、次ハ 君ラガ 山賊ダ」
「女性ヲ襲イ、売リ渡シ、財産ヲ奪ウ」
左右のハサミで大きく鳴り話す。
「「36匹ノ山賊ノ首ハ並ンダ、ツギハオマエタチダ!」」
「
男は赤かった顔色を真っ青にして逃げていった。
事を見て聞いていた僕達と商人組の方々は何も言えずアネモネさんを見つめた。
「私は忘れて気にしていないのに少年がそんな顔をしない、しない」
あっけらかんと笑って彼女は僕の頭を撫でた。
「元気出せ少年、おっぱい揉む?」
ぎょっとして回りの男共がアネモネさんの胸部を見つめる。D……いやEランクか!?
「ダ、ダメです。アルさんに何を言うんですか」
残念ながらイブに止められてしまった。
皆で笑い、荷下ろしの仕事に戻った。 面倒だし、これ以上アネモネさんが下らない奴等の事に縛られるのは良くないので村の事は放っておくことになった。
たぶん、これで良いんだろう。
「
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