第10話、花の名前とイースさん

「色々とお世話をお掛けしました」


 次の日、僕達の心配をしていた女性が突然に目を覚ました。痕は薬と魔法で治したそうだ。


「あはは、何にも思い出せないんですよ」

 僕達の前で笑いながら顔色の良くなった謎子さんはスープを飲みながら笑った。


「私って誰なんでしょうね?」

 ここら辺の村を調べれば判るかも知れないけど、どうなんだろう?


「今さら村も私に帰って来られても困りますよね。町で何か仕事を探しますよ」

 そんな簡単に割り切れないだろうに……。でも強がっている風でも無い?


「強イ女性デ 調整シタ」

 意味が良く判らないけど治療して治ったのなら良いか。


ピピピピキニシナイ


「良くない昔は捨てて、新しい人生を楽しまなくちゃね。ねえ可愛い名前は何かある?」


「花の名前からだけどアネモネはどう?」


 エムの考えた花の名前からアネモネになった。音の響きが可愛いらしい。それにしてもイースさんの出したシュブ何とかって何だろう??


 名前が決まり、山賊の持っていた金品の半分を被害者の彼女に渡す事にした。偽善なのだろうけど多少でも関わった人の助けになるなら気持ちが良い方が僕達らしい気がする。


 スミスさんはアネモネさんを見て話して思い出そうとしているけど会った事がある人と声は似ているけど性格が違いすぎて言葉もちょっと遠い地方のアクセントだと悩んでいた。


 ちなみに、その似ている方はご両親を病で本人も去年の秋頃に病気で亡くなったそうだ。村の人達も顔をしかめて話していたと。


 スミスさん一行と僕達は時々出てくる動物やはぐれゴブリンを狩りながら町に着いた。そして護衛の一環として自警団に生きている山賊と持ってきた幾つかの生首を渡した。全部塀の中に並べ晒され見物料を取り、孤児院の子供達が白く塗った石を売りそれを首に投げつける。


 犯罪に対する戒めと娯楽だ。生きていた山賊は薬関係の所に買われたそうだ。

 悪いことは止めよう、死後も玩ばれ割りに合わない。



 さて僕達の仕事も引き継ぐまでもう少しだ。

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