樹皮の傷より流れ出している

もっと古い記憶の

もっとも深い血溜り

立ち昇る匂い


砕かれた日

陰る陽だまり

やがて

物語は終わってしまった


夜という白い冷たさ

風がシャッターを揺らす

どうして

ただ明るいだけの街灯があるのか


それでも朝は来る

死に絶えた屋根の上に

まだ緑を残す東の山際に

眩しい光りが昇る


姿のない傷があるかぎり

やわらかな声を求めるということ

誰かが誰かを求めていること

いつまでも変わらないこと


そして目に見えることは

色を変えていく

青ざめた鋼の針は巡らない

誰もが誰かに染まっていく

全てがそのままでいられないこと


だから傷よ

決して癒えるな

お前こそが

旅立ちの孤独の中の

唯一つの徴だから


この星が呼んでいる

震えることばの源へ

旅立つものはだれであるかと

光の尽きるその果てへ

恐れることなく

旅立つものはだれであるかと

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