第325話 モーデル帝国2、『デクスシエロ、フェンディ!』
セロトに侵入したソムネア軍の駆逐について実施が簡単に決定され、大まかな作戦が決められた。
まず、デクスシエロでセロトに向かい、ソムネアの軍事アーティファクトを発見次第直接攻撃でこれを排除し、そのままセロトの王都ハイネリアに向かう。
ハイネリアでは低空で王宮に侵入し、
兵隊たちは王宮内のセロト兵を排除しつつ王族を見つけ確保する。その間デクスシエロは王宮上空を旋回して王宮内外のセロト兵を威嚇し続ける。
王族を確保しだい、ソムネアの軍事アーティファクトを破壊したことを伝え、モーデルへの帰順を促す。
という、いたって簡単かつ自分本位な作戦が立てられた。
一般的に言ってこのような作戦とも呼べない作戦が
翌朝。
訓練場で実戦準備を整え整列した兵隊たちを20倍強化したキーンは、デクスシエロに乗り込んでいったん上空に舞い上がり、一路セロトに向かった。デクスシエロの左手には大剣、
兵隊たちはその場に腰を下ろし転移に備え待機している。今回の作戦では近接戦闘を想定しているため長槍は持たず、武器は短剣だけである。
いったん高空まで登ったキーンは、ソムネアの進撃速度からいって、既にセロトの東半分はソムネアに飲み込まれていると見当をつけた。そこでセロトの王都をまず目指し、そこから東に向かってセロトのアーティファクト、デクススコルプを探すことにした。
高度2000メートルほどで、北上したデクスシエロは、セロトの王都ハイネリア上空で東に進路を取り、200キロほど東進した後、南に進路を取って300キロほど進んだところで、3つの軍団を見つけた。各々の軍団はそれぞれ別の街道を進みハイネリアに向かっているようだ。
3つの軍団とも兵隊の数はざっと見で各々5万、上空から注視すると、確かにサソリ型をした大型のアーティファクトらしきものが中央を進む軍団の先頭にいた。
上空で輝くデクスシエロを見つけたその軍団は街道上で停止したようだ。
『サソリ型のアーティファクトか。サソリだからしっぽの先に毒があるかもしれないけれどそんなものがデクスシエロに効くはずないしあまり強そうには見えないな。上空から近づいて、通り過ぎざまに
あんまり簡単に斃しちゃうと、逆に迫力不足かもしれないから、素手で格闘してやった方がいいかもしれないな』
などと考えていたキーンだが、
『そうだ! いままで怖くて試したことなかったけれど、キーワード「フェンディ」を使って見てもいいかもしれない』
この時点でキーンはメアリーからデクスシエロについての伝承を聞いていなかったため、『フェンディ』が一体どういう効果のあるキーワードであるのか想像すらできていなかった。
高度を1000メートルまで下げたデクスシエロの小部屋の中で、キーンはソムネアの軍事アーティファクト、デクススコルプを注視する。大映しになったデクススコルプはハサミの付いた両腕を広げ、デクスシエロを見上げているようだ。
「デクスシエロ、フェンディ!」
キーンがデクスシエロに向かってキーワド『フェンディ』を口にした。
そのとたんに、デクススコルプを大きく映し出していた前方の壁の3分の1が真っ白になり何も見えなくなってしまった。その白さがだんだんと広がっていく。
『マズい! デクスシエロ、
白い広がりは止まり、少しずつ目が慣れたキーンが目にしたものは一面真っ赤に溶けた大地だった。その間ほんの数秒。溶けた大地のいたるところから煙が上っているが、ただそれだけでデクススコルプはもちろん後続していた5万の兵もどこにも見えない。
上空からではあるが直径10キロの範囲で大地は真っ赤に溶けてしまっている。溶けた大地の周りに立っていたはずの木々は溶けた大地に向かって倒れ、近くのものは火が着いているわけではないが煙を上げている。溶けた大地の中や周辺に街はなかったはずだが、なかったとも言い切れない。今さらキーンには確認できない。
残った2個軍団各々5万の兵隊たちの隊列は糸が
『ヤリ過ぎた。フェンディは一度試してから使うべきだった。……。
反省は後だ。セロトの王都に予定通り向かおう』
キーンはそのままの高度でセロトの王都ハイネリアに向かった。
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