第328話 帝国の守護者
[まえがき]
ここまでお読みくださりありがとうございます。最後までよろしくお願いします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
キーンが以前
パトロールミニオンを飛ばしたついでだったので、
前回10トン分の金、銀、銅の延べ棒をそれぞれの小山から運び出したのだが、延べ棒を抜き取ったはずの小山を見ると、減った分だけ補充されて小山がもとに戻っていた。
「なんだ? 使っても減らないのか? 使い切れない量あると思ったけど、ほんとに無尽蔵だったのか。
今は宮殿に全部移してしまった関係で空になった兵舎の延べ棒倉庫部屋にミニオンを飛ばし、そのまま金を転移させてしまった。
「これだけだと何があってもとは言えないけれど、マアマアなんじゃないかな?」
一仕事終えた気になったキーンは、デクスシエロに乗り込んで、パトロールという名の散歩にでかけていった。
遺跡内でいなくなってしまったデクスリオンについては、もともと乗り手がいるわけでもないし、聖王宮の門前に置いておけば魔除けくらいにはなるかと思った程度だったので、デクスシエロに乗り込んだときにはキーンはすっかりデクスリオンのことを忘れてしまっていた。
用事がなければ適当に駐屯地近辺で遊んでいたキーンだが、それでもちゃんと前線にはパトロールミニオンを飛ばし、都市制圧などの要所要所で派遣軍と連携を取ってアービス連隊を投入していった。そういった形でソムネアに対する侵攻作戦が継続される中、年が明け3月となった。
セルフィナのモーデル帝国皇帝としての戴冠式の準備はすっかり整っており、傘下の公国から今では侯爵、伯爵となった旧王族たちがモデナに参集している。モデナ市街には中央の大通りだけでなく、いたるところに紺地に赤の五葉の
セルフィナの皇帝戴冠式に先立って、メアリー・ソーンはモーデル帝国硬貨なるものを10万枚鋳造している。ロドネア共通金貨は1枚あたり金2.5グラム、銀0.5グラムなので、モーデル帝国金貨1枚でロドネア共通金貨10枚相当となるようモーデル帝国金貨は1枚あたり金25グラム、銀5グラムで作った。硬貨の表面にはセルフィナの横顔。裏面には五葉の楓と皇帝の姓と同時に帝国を意味する『
セルフィナの帝冠だが、当代一と言われる金属細工師に純金で王冠の土台を作らせ、同じく当代一と言われる宝飾職人に色とりどりの宝石をちりばめさせた。その宝石のちりばめられた冠の金の部分をキーンが強化変性させ、やや黄色味を帯びた半透明の冠が出来上がった。最後に紫のビロードで内張りが取り付けられ帝冠は完成した。あとは戴冠式を待つばかりとなっている。
セルフィナのモーデル皇帝としての戴冠式の前日。
キーンは、宮殿奥のセルフィナの自室に呼ばれた。部屋の中には向かい合って座るセルフィナとキーンだけだ。
「キーンさん。いえ、お兄さま」
改まったセルフィナの物言いに向かいに座ったキーンも居住まいを正した。
「お兄さまを皇帝に望む国民の声を私も耳にしています。お兄さま、本当に私が皇帝の座についてもよいのですか?」
「もちろんだよ。
そうだなー、デクスシエロは『帝国の藩屏』だから、僕はさしずめ『帝国の守護者』ってところかな。おおっ!『帝国の守護者』って何だかカッコイイ響きだ。僕が生きているあいだはデクスシエロとしっかりこの国を守るから、セルフィナさんは安心して国の発展に力を注いで」
「お兄さまありがとう」
「セルフィナさんは僕がいなくなった後でもこの国がちゃんとやっていけるよう国の仕組みをしっかり作っていかなくてはならないから大変だと思うよ。僕のあとデクスシエロを動かせる者がこの先出るとは限らないから」
「わかりました。
それと、これからは二人でいるときはセルフィナと呼び捨てにしてください」
「了解。セルフィナ。
これでいいかい?」
「はい」そう言って、セルフィナがにっこり笑った。
翌日の戴冠式は盛大に行われた。今回の戴冠式後のパレードではアービス連隊2000名が参加し、兵隊たちが持つ全ての黒槍の先にモーデル帝国旗とも呼べる紺地に赤の五葉の
パレードの先頭を進むブラックビューティー上のキーンの後ろには、騎乗したゲレード大佐と徒歩のボルタ中尉、その後ろにドラムを叩く鼓手が横一列に10名続き、ドラムの音に合わせて10列縦隊の1000名の兵隊たちが行進し、その後をセルフィナと護衛のノートン姉妹の乗る無蓋の馬車、そして1000名の兵隊たちが続いた。セルフィナの乗る馬車の移動に合わせ、つめかけた群衆の拍手が移動していった。
[あとがき]
2022年6月28日。
明日『第329話 終話、ロドネア戦記』で完結します。おまけとして『キーン40歳時の登場人物たちと名前の由来』を少し後に投稿します。最後までよろしくお願いします。
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