第294話 翔べ! デクスシエロ2
アイヴィーからの返事の中でデクスシエロを動かすヒントをもらったキーンは、さっそくゲレード中佐とノートン少佐を引き連れてデクスシエロのところまでやってきた。
「アイヴィーからの返事にヒントになるようなことがあったので試してみます。なにが起こるかわからないので宮殿の中から見ていてください。
デクスシエロ、インペルム」
キーンがデクスシエロの中に入ってしばらくして、目の前の壁に外の様子が映し出された。
前回までは気付かなかったが、壁に外の様子が映ると、天井の明かりは少し暗くなるようだ。
「まずは『ソウ』からだな」
ゲレード中佐たちが宮殿の中に入ったところで、さっそくキーンはアイヴィーから教えてもらったキーワードのうち最初の1つを試してみた。
「デクスシエロ、ソウ!」
あの返事のような言葉が頭の中に響き、キーンの足元からわずかに振動が伝わってきた。部屋が傾くことも、
「飛んだ! デクスシエロが飛んだ!」
一度、目の前を雲が遮ったが、デクスシエロはすぐに雲を突き抜け周囲が見回せるようになった。
視界の右下にあたる位置で何か動いているものが壁に映っていた。よく見ると、視線をどう変えても視界の左下にあたる位置に6桁の文字だか数字のようなものが並んでいる。右端の文字は白い四角で止まったままだが、その隣の文字はすごい速さで変わっている、さらにその隣の文字はゆっくりと変わっている。
「これって、今の高さを表してる数字じゃないか?」
どうもそのようだ。どういった単位なのかは分からないが、高度を示していることは間違いないようだ。
『どこまで昇っていくんだろ?』
飛び上がってすぐに聖王都モデナの街並が見えていたが、雲を抜けたあたりではモーデルを囲む山並みが見渡せるようになり、そこから視界はさらに広がっていって、とうとうサルダナの王都セントラムらしき街まで見えてきた。目を凝らすと街並だけでなく、行き交う人も区別できた。
『あれ? この景色はいつか見たことがある気がする。そんなはずはないけど。おかしいなー』
キーンを乗せたデクスシエロは上昇を続け、とうとう地平線がわずかに丸く見えるほどまで昇った。地平線の上には水色の層がありその上は星空だった。
『やっぱり、これは以前見たことがある。不思議だ』
とうとう、ロドネア全体が見渡せた。西半分は緑が多いが、東半分を占めるソムネアの地は黄土色が多く、ところどころに緑が広がっていた。そこで視界の右下に見えていた数字?が止まった。デクスシエロの上昇が終わったらしい。右端の四角い文字?も今は別の記号になっていた。
『思い出した。これはこの前モーデルの屋敷で見た夢の景色だ!』
一方こちらは宮殿の中に入って中庭との出入り口からデクスシエロの様子を見ていたゲレード中佐たち。
デクスシエロが6色のまばゆい光に包まれたと思ったら、その光をまとったままゆっくりと浮き上がり、上昇を始めた。すぐに速度が増しあっという間に空高く昇っていき雲の中に入って見えなくなってしまった。
「デクスシエロが空を飛んだということは、モーデル帝国復活の
「とうとう飛びましたね」と落ち着いた声でゲレード中佐。
「そうです。デクスシエロが空を飛んだんです!」
ノートン少佐はデクスシエロが飛んだことにひどく興奮しているようだ。
ゲレード中佐もキーンの簡単な説明で、デクスシエロの足元の銘板に記されていた銘文のことを知ってはいたが、デクスシエロが飛んだからと言ってそれがすぐにモーデル帝国の復活につながるとは思えなかった。たとえ戦いに全戦全勝したとしても、敵の諸都市を
「どこまで上がっていったんでしょう?」
「それはもう空の彼方、どこまでもでしょう。きっとこのロドネア全体を一望できる高さだと思います。デクスシエロが世界を
偶然かも知れないが、確かにノートン少佐の言った通りデクスシエロはロドネアを一望できる高さまで昇っていた。
ゲレード中佐たちが宮殿の中から中庭に出て真上を見上げると、雲が流れたようで、かなり上空で星のよう見えるがギラギラと光っている点が見えた。
「あの光がデクスシエロですよね?」
「そうでしょう。ここの真上に見えますから」
「たしかにあの高さまで昇っていればロドネア全体が見渡せそうだ」
キーンは上空に昇ったデクスシエロからロドネア各所を見渡すことができたのだが、逆にロドネア各所からもデクスシエロの光を見ることができた。
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