第251話 屋敷にて1
シャワーを浴びながら風呂の中にお湯を入れ、湯船に入って肩までお湯に
しばらくお湯に浸かって身体が十分温まったところで、身体を洗おうと湯船からでたところ、左手の甲の上に赤い
「あれ? いままでこんな
痛いわけでもないし、みっともないってほどじゃないから、ま、いいか」
赤い痣も風呂から出てしばらくしたら消えてしまったようで、キーンは着替えを終わったときには痣のことはすっかり忘れてしまった。
夕食の準備ができたところで食堂に呼ばれたキーンは下着の上にテンダロスのガウンを羽織っている。
「キーン、そのガウンは懐かしいですね。少し小さいようですがよく似合っています」
「そうかな。えへへ」
食堂の中には4人がけのテーブルが置いてあり、テンダロスがまだ元気なときは3人で囲んでいたが、テンダロスが寝込むようになってからはキーンとアイヴィー二人で食事をしていた。
そのテーブルを挟んで二人が昔のように食事する。
「このテーブルも懐かしいね。もっと大きかったと思ったけど、なんだか小さく感じる」
「セントラムに出ていた2年半でキーンが大きくなったということでしょう」
「そんなに大きくなった意識はなかったんだけど、うちにあった服がどれも小さくなって着れなかったからだいぶ大きくなってたみたいだね」
「そういうものなのでしょう」
「爺ちゃんの貴重品の中に
「どうでしょう。
「古文書となると僕でも読めるかな?」
「いろいろな言葉で書かれている可能性がありますから難しいかもしれません。大抵の文字は私が読めますから大丈夫です」
「明日が楽しみだね。今日は早く寝て朝早くから仕事しよう」
「キーン、シーツとか毛布は
「はーい。毛布は少しくらい孔が空いてても平気だし、軽く電撃をかけておけば虫も死んじゃうから大丈夫だよ。アイヴィーのベッドも準備しておくね」
「ありがとうキーン。私はここと台所の後片付けをしておきます」
その夜早々に眠りについたキーンは夜半に夢を見た。モーデルの地下で見た青白い鎧の巨人、デクスシエロに自分が乗り込んでいる夢だ。デクスシエロはキーンを乗せモーデルの上空高々と昇っていき、とうとう地面が丸く見えるほどまで昇った。地平線から上は星空だった。
キーンはデクスシエロの視界を通して下界を眺めている。
キーンは目が醒めた後もしばらくその夢のことを覚えていが、ほどなくすべて忘れてしまった。ただ、なにか大事な夢を見たということだけは覚えていた。
まだ日も昇らないうちからキーンは目が覚めてしまったので、さっそく屋敷の地下に下りて隠し倉庫に向かった。キーンが起き出したことを知ったアイヴィーもすぐに地下に降りてきた。
屋敷の地下に降りて重い扉を開けるとその先は一見ワイン蔵になっているだけだが、奥に並べられているワイン棚に並べられている、あるワインのボトルを動かすことでロックが外れるようになっており、その状態で棚を押すと、隠し倉庫側に向かって棚が開くようになっている。
「アイヴィー、ここのワインだけど、全部で10本くらいしかないじゃない」
「そうですね。テンダロスも元気な頃はよく飲んでましたがそれほど好きではなかったようで、最期の5年は仕入れてなかった関係で今はこれだけです」
「これだと、隠し倉庫の鍵の位置が簡単にわかると思うけど」
「そういうこともあるかもしれませんが、現にここに人が入った気配はありませんでしたから問題ないでしょう。将来キーンがこの屋敷に戻ることがあればワインを揃えましょう」
アイヴィーの言うとおりなのでキーンもそれで納得した。
キーンがワインの位置をずらし、ワイン棚を押すと、ゆっくりとワイン棚が隠し倉庫側にズレていき通路が出来上がった。
隠し倉庫の中にはもちろん明かりは点いていないので、中にはいったキーンはさっそく『ライト』を灯した。
隠し倉庫の壁際に沿って本棚が並んでおり、テンダロスの蔵書が並べられている。本棚に入り切らない本は、台の上に平積みにされている。貴重品は床に並べられたケースや奥のキャビネットの引き出しの中に収められている。
「それじゃあ、手分けして本の方から調べていきましょう。私は1時間ほどしたら朝食の準備を始めます」
まず二人で左右の本棚から本を確認していく。テンダロスの蔵書の中には革の
探しものは『古文書』なので明らかに見た目が新しい本は確認する必要はないが、古ぼけた本も多数あった。その中で、キーンは自分では読めない字で書かれたものを探していく。
1時間ほど二人で本棚を
「キーン、私は朝食の準備をしてますから、呼んだら食堂に来てください」
「はーい」
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