第248話 遺跡探検1、倉庫
アイヴィーの肩も無事治った。後は遺跡を出て帰るだけだ。
キーンたちはやってきた通路を戻っていったが、キーンが斃したはずの2体の鎧の巨人は消えてしまっていた。
「あれ? 確かこの辺りで鎧の巨人を斃したんだけど?」
「自力で動いたとは思えませんから、誰か、もしくは何かが回収していったのでしょうか」
「この遺跡は、遺跡じゃなくて誰かがいるってこと?」
「分かりません」
「ちょっと怖いかも」
帰りの道筋では用心して歩いたものの、鎧の巨人が消えてしまっていただけで何事もなく、きたときと同じく、1時間ほどで二人は最初の部屋まで戻ってきた。
部屋に入って驚いたのは、右手の壁の中央に新たに通路ができていたことだ。
「通路ができている? というか、通路を塞いでいた壁がなくなった? とにかく、その先に入ってみよう。財宝とかあるかもね」
「そうですね」
「もし財宝が見つかっても背嚢にそんなに入れることはできないし、あまり持って帰れないか」
「キーン、財宝を見つけてから心配しても遅くはありませんよ」
「ハハハ、それはそうだよね。ほんとに見つけたら、キャリーミニオンに持たせればいいから心配無用だった。アハハハ」
「ここは、モーデルですから、将来キーンがモーデルのために働くとなれば、資金はいくらでも必要でしょう。入り口を塞いでしまえば見つけた財宝はここに置いててもいいかもしれませんね。もちろん財宝があればですが」
「そうだね。そしたらセルフィナも喜ぶだろうし。真面目に探さなくちゃ」
「フフ。見つかるといいですね」
おそらく北に向かっている通路を『ライト』の明かりに照らされたキーンたちが進んでいく。
1時間ほど歩いていくと、アイヴィーがいた部屋と同じような扉があった。
「勝手に開いてくれればいいんだけど」
キーンが扉の前に立ったが、扉は何も反応がない。
「だめか。扉を壊したくはないけど、仕方ない」
キーンがファイヤーボールを撃ち込もうとしたところで、アイヴィーが、
「キーン、待ってください」
アイヴィーが小さな金属製のパネルの前に立ち、パネルを触るとそのパネルは蓋だったようだ。一度パネルの端を押すとかチリと音がして蓋が開いた。蓋の開いた先には四角いボタンが10個と長四角のボタンが1個並んでいた。各々のボタンの上にはそれぞれ違った記号が書かれていた。
「上に書かれた記号は数字です。このボタンを正しい順序通り押して最後に長四角のボタンを押せば扉が開くのでしょう。残念ですが、どの順に押せばいいのか、何回押せばいいのかも分かりません」
「やっぱり壊すしかないか」
「そうですね」
「ファイヤーボールを撃ってみるから少し下がって」
いったん後ろに下がって、キーンは扉の手前でファイヤーボールを発現させて爆発させたのだが、扉はびくともしなかった。
「この感じだと、ファイヤーボールをいくら強くしても無駄みたいだな。
やはり、
背嚢を床において、鞘から
「このまま、2、300回くらい斬りつければなんとかなりそうだけど、ちょっと違うような」
「キーン、さっきの
「使うと言ってもどこに使おうか?」
「テンダロスはアレを持っていたおかげで鎧の巨人が襲ってこなかったのでしょうから、
キーンが
「あれれ。いやに簡単に開いたな。扉がボロボロになっちゃったけど斬りつけるんじゃなかった。とにかく中に入ってみよう」
扉が開いたことで、部屋の照明が点いたようだ。
「なんだ、ここは?」
アイヴィーのいたという部屋の天井も高かったが、その部屋の天井はもっと高く、部屋そのものもとてつもなく広かった。そして床の上には金属のインゴットを積み重ねた小山がずらりと並んでいた。小山一つの高さは5メートルほど。山ごとに金属の種類は異なるが、どの山のインゴットも同じ大きさで、アイヴィーが見たところ正確に縦30センチ、横10センチ、高さ5センチあった。
「倉庫?
財宝ではなかったけれど、財宝より価値があるかもしれない。いや、金の山もあるから財宝だ」
金属の種類は、金、銀、銅、
「キーン、どうします?」
「財宝ならキャリーミニオンに持たせて運べばいいやって思ってたけど、無理そうだね。
セルフィナやモーデルのために使ったとしても使い切れない」
「これで将来、セルフィナさんがモーデルに戻ったとしても、お金に困ることはなくなったと言うことですね」
「そうだね」
「金、銀、銅、鋼はわかるけれど、この半透明の金属は何かな?
「恐らくですが、アダマンタイトではないでしょうか。キーンは
「強化でアダマンタイトを作ったのか。そうだね『黄金の獅子』は硬かったけど
「なにか硬いものを加工するための特別な装置があるのでしょう。そう考えると、木だろうが鉄だろうが先に形を作ったものを、アダマンタイトに変えることができるというのはすごいことです」
「エヘヘへ。たまたま目一杯強化したらああなっちゃただけで、自分で考えてできたわけじゃないけどね」
「何であろうと、キーンにしかできないことです」
「そうだね。
それじゃあこの部屋の中を一周りして確認したら、帰ろうか」
「はい」
[あとがき]
底辺100個(横10センチ、一段ごとに並べる個数を1つ減らしていく)、高さが100段(1段あたり高さ5センチ)、奥行きは50個分(縦30センチ)とすると一山252500個のインゴット。金の場合比重が19.32なので金のインゴット一つの重さは28.98キロ。一山では約7300トンになります。
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