私の夏と祖母

八草秋水

私の夏と祖母

「はぁー」

車に揺られながら私は、深いため息を着いた。

なぜこんなことを思い立ち行動してしまったのだろう。

車の外に広がるのは、壮大な自然だ。

昔は、素敵な場所だと思っていたが今では、何もない面白みの無い場所としか見れない。

「そんなに祖母の家に行くのがいやなのかい?陽菜さん」

横で私の為に車を運転してくれている大学の後輩である秋山透あきやまとおるは、そう声をかけてきた。

「いや自分がなんでこんな事を思いたったのか、、、。ちょっと過去の私を殴りたくなった。

なんで探しに行こうと思ったのか、、、何もないかもしれないのに」そう愚痴る。

「何もないなんてことは、ないよもしかするとまだ世に出てない物語が眠ってるかもしれないじゃないか!君の祖母がこの世から居なくなってしまったのは、悲しいが君の祖母がこの世に遺した物語の全ては、多くの人に感動を与えてきた!そんなものがあるかもしれないじゃないか!」

「うるさいもー叫ぶな騒ぐなバカっ!そんなことしてると事故るぞ」そういうと透は、すいませんと言って平常になりあまり整備されていない道を少しスピードを上げて進み始めた。


私の祖母は、世に名を馳せた文豪であった。

祖母の書いた物語は、難しいく子供の頃は、あまりよくわからなかったが高校ぐらいになって久しぶりに読んでみると教科書に多分いつか載るんだろうなと思うようなそんな過去の名作と呼ばれた本達と肩を並べるような本だった。

しかしそんな祖母に私は、あまりあった事がない。

なぜならこんな山奥にあって行きずらくまた多忙の為あまり会うことが出来なかった。

仕事の為に私に会えない事は、脳では、わかっている。けど心は、それを許してくれなかった。

けど今では、昔ほど嫌いでは無くなった。

なぜならもう祖母は、この世にいないからである。

祖母は、半年前から具合が悪くなり約2ヶ月に亡くなってしまった。

亡くなってしまってすぐに祖母の家に片付にいったのだが祖母は、自分の死期を悟っていたのか家は、とても綺麗に整備されていたのでぱっと探すものだけ探して帰るつもりだったが見つからないものが一つだけつある。

それは、祖母の亡くなる前に書いていたはずの原稿である。

祖母が亡くなった後に家族総出で探したが見つからなかった。

私の家族は、「おばあちゃんが探して欲しくないんだろうねー」と言って諦めてしまった。

私も無論同意見であった。

しかし大学の後輩であるこいつに話したらこうなってしまったのである。

こいつに後輩の祖母の大ファンである秋山透にこの話をしたのがそもそもの間違いだった。


「はぁー陽菜さんどうして先生は、こんな山奥に家を建てたんですかね、、、」

山道に入って1時間この悪路に嫌気が刺したのか透は、そう言った。

その問いの答えを私は、知っている。

「あと少しで着くからそうすればわかるんじゃない?」



それから10分後

「、、、」

祖母の家に着き透は、言葉を失うほど驚いていた。

目の前には、絵の中から取り出したような綺麗な家が建っていた。

そしてその目の前には、自然豊かな森。

まるで違う世界に迷いこんだかのようなそんなものを感じる。

近くには、菜園もありまたこの家自体も多くの植物に囲まれていた。

庭には、桜と紅葉の木がありどちら木も青々とした葉を風になびかせていた。

家は、木製二階建て。

部屋の数は、リビング、書斎、祖父の部屋と祖母の部屋そして小さな屋根裏部屋と物置部屋がある計6部屋ある家である。

ひとつひとつの部屋が広く特に書斎は、1階の半分を占めるほど大きいのである。

「さっ車から降りて早く行くよパッパっと終わらせて帰ろう」

そういい私は、車から出てトランクから自分の荷物を取り出し祖母の家へ向かう。

後ろからは、透の声が聞こえたような気がするが気にしない。

そうして私は、祖母の家の扉に手を掛けた。


「全然綺麗じゃん」

中に入ってみると2ヶ月前から掃除をしていないとは、思えないほど綺麗であった。

「さて、、、おーい早くおいでー」

そう後ろに向かって叫ぶ。

「ちょっとくらい待ってくれればいいのに、、、」

透は、手にカメラやら着替えやらなんやら多く荷物を持ってきた。

「ここに何日いるつもりよ、、、」

そう私は、ため息をつかずには、いられなかった。

「見つかるまでは、いるつもりだよ?」

透は、さも当然かのようにそういった。

「、、、はぁ〜。まぁ期限は、3日それ以上は、ここにいられない。わかった?」そう言うとわかりましたと透は、頷くのだった。


私たちは、まず水道や電気が通っているか確認した。

「水は、山からひているから使えるわねで電気は、、、」

「奥に太陽光パネルがありましたー」

そう遠くから透の声が聞こえる。

よし大丈夫。

キッチンのコンロを使ってみたところまだガスが残っているのか使えた。

「よしこれでここのライフラインが使える事が確認出来たわね」

「あの、、そう何日もいないのにどうして確認したんですか?いちょう僕キャンピングセット持ってきてましたけど、、、」

「私が好きでやったと思う?両親にたのまれたのよ」

「なるほど」

「ほんと関係ない話になるけど昔ほんの一週間だけこの家に泊まったことがあったのあの時は、私の希望で屋根裏に泊まったわ」

「へーなんで屋根裏に」

「なんか秘密基地ぽくっていいじゃない」

「、、、まぁそうですね」



少し時がたちもうそろそろ夕方と言うべき時間にさしかかろうとしていた。

「うーん何処にあるんだろー」

そう私は、つぶやきながら祖母の部屋をあさっていた。

「まぁ一度探して見つからないんですからそう簡単に見つかりませんよね」

と透は、いった。

「まぁ黙って探すのもなんですし何か喋りながら探しません?」

「いいわね!」

私は、そう返し一旦手を止め透の方を向く。

「探しながらって行ったんですけど、、、」

「まあまあちょっと休憩だから」

透は、少しため息をつき話を振った。

「まぁ話と言うより質問なんですけど先生は、どんな本が好きだったんですか?」

「うーん多分だけど少年の日の思い出は、好きだったと思うなー。あの人毎年何かしら誕生日プレゼントを送ってくるんだけどだいたい自分の本だったり暇な時に編んだマフラーだったりするんだけど一度だけ違ったものを送ってきてそれがその少年の日の思い出だったの」

「へぇーあの中学校の教科書に載っている 。」

「そう何故かは、知らないけどそうなの。まぁ私もあの本好きよ。読む年によって感じ方が変わるのよ。中学生の時は、エーミールめっちゃやな奴って感じだったけど今になって読むと主人公とっても自分勝手に見えるの 」

「へぇーそうなんですね。僕あの物語あれしか覚えてないですよ。エーミールのそうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。ってところしか」

「家に帰ったら一度読むことね」

そんな会話をしているうちにあたりは、暗くなっていった。



「こんだけ探してもないだなんてこの家にないんじゃないの!」

あれから3時間ぶっとうしで探していたが一向に進

まない。

今はリビングを

ついに疲れがきてそう私は、言葉をこぼした。

「そうかもしれませんね。陽菜さん一度休みましょう。僕は、これ読みたいですし」

そう言って彼は、少年の日の思い出を私に見せびらかした。

「あっあったんだ。」

「はいリビングにあった棚の上にありました。」

「いやおばあちゃんそんな 高くないけど、、、」

おかしいここで私は、少しの違和感を感じた。

けれど差程気にする事ではないのですぐに忘れた。

「まぁー休もっか!休憩ー」

私は、リビングの絨毯の上に寝転がって透の方を見て言った。

「透くんも一緒に寝転がろうよ」

「嫌です」

私は、意外と透の事を気に入っている。

真面目でそしてからかいがいがあるからだ。

「そういうんだったらえいっ」

私は、真剣に少年の日の思い出を読んでいる透に後ろから抱きついてそのまま押し倒した。

「もうちょっとかまってくれてもいいんじゃない?」

どうだどうだちょっとドキッとしたかっと思い顔を覗くと

「あーもうっ!」

っと言って私の拘束を取り払って何処かへ行ってしまった。

「つまんないの」

私は、そう一人つぶやきまた寝転がりゴロゴロとし始めた。

そういえば昔あの人言ってたなーその時々で本の読み終わったあとの感情は、変わるって。

それだからかなー少年の日の思い出をくれたのって、、、。私の今のあの人に対する気持ちも時が経てば変わるのかな

あーやばいちょっと眠くなってきた、、、。


「起き、、ださい、、てください」

なんだろう声が聞こえる。

「起きてください!!」

「おっビックリしたー何かあったの?」

「陽菜さんがいつまでも起きないからそろそろ起こしたほうがいいかなって思って」

「なるほど。ちょっと聞きたいんだけど私何時間寝てた?外を見る限り三、四時間寝てたっぽいんだけど」

「その通りです」

「まじかーでなんか見つかった?」

「はーもういいです。まぁ見つかりましたよ。はいどうぞ中身もう見てしまってますけどとても申し訳ない事をした。と思ってます」

そう言い渡されたのは、原稿用紙を折りたたんだ手紙のようなものだった。

「なにこれ」

原稿用紙を開くとそれは 、祖母の遺書だった。

今この手紙を読んでいる方へ



この手紙を読んでいるのならもう私は、この世には、いないのでしょう。

さて定型文は、ここまでにして多分私の手紙を読んでいるのは、私の家族かそれか私のファンでこの家に侵入した貴方でしょうね。

どちらの手にわたっても私としては、嬉しいので私の通帳と遺作となるであろう物の場所をお伝えしたいと思います。

どちらも床にあります。

最後に家族とそしてこの2ヶ月間私と過ごしてくれた貴方へ

どちらも大切な時間をありがとう。

私が死んでもその足を前へと進めてより良い未来を勝ち取ってください。

冬木 十五夜いさよより

「おばあちゃん、、、」

私は、体から不意に力が抜けて床に倒れてしまった。

「大丈夫ですか!!」

「、、、大丈夫ちょっと今までおばあちゃんが死んだ事あんまり実感わか無かったんだ、、、家に行ったらまた前見たいに笑顔で出迎えてくれるって心のどっかで思ってたんだと思う。だから今ほんとにもういないんだと思ってちょっと、、、ごめん少し一人にさせて、、」

「わかりましたでは、またちょっと時間がたったら来るので」

透は、そういってリビングを出ていった。

透のああいう気遣いが今の私の胸には、とても響いた。

「私って良い後輩持ったなぁ。死んじゃったのかおばあちゃん、、、」

私は、静かにおばあちゃんが過ごしたこの家一人泣いていた。


コンコンッ

「あのーすいませんもう大丈夫でしょうか、、、」

「うんもう大丈夫。ありがとう透」

そういうと透は、扉を開けてリビングに入ってきた。

「そういえばおばあちゃんの言っていたもとい書いてあった遺作は、ゆかにあるって書いてあったけどこの家に地下は、ないよ多分」

「多分あれは、2つの意味を持っていると思います。先生の部屋に向かいましょう。」

そうして私と透は、祖母の部屋に向かった。


「けどここっていっかいちゃんと探したよね?」

そう思い今日の昼間のことを思い出す。

「そうですねこの本棚も先生の机もクローゼットもベットも全て探したね。けど先生の言っていることは、多分、、、」

そう言って透は、ベットの位置をずらした。

「ちょっと何してるの」

「ここにあるはずです」

そう言って透は、ベットの下の床を指さした。

「けど何処にも隠せそうなとこなんて、、、」

「あった」

そう言って透は、床にあった小さな突起に手をかけた。

そうすると

「こんなのがあったんだ」

ちょっとした物を置くスペースがあった。

「昔の家のキッチンには、こういうスペースがあったそうですよ。先生は、それを自分の部屋にそれを作ってんじゃないんですかね」

「なるほどじゃっ早速中にあるものをっと遺作がない」

「えっ」

「遺作がない、、、なんでないの」

「いやちょっと見間違えかも知れませんよもうちょっと見ましょ」

よく目を凝らして見てみたら。

「蝶の髪留め?なんで」

そこには、紫色の蝶の髪留めがあった。

「こんなものがもう意味わかんない寝るからもうっ早くリビングで寝袋引いて寝るよ」

「ベットあるからそれで寝ればいいじゃないですか、、、」

「シングルべットに2人は、狭いでしょ」

「えっ一緒に寝るつもりですか」

「今日は、なんかもう色々あってちょっと誰かそばに居て欲しい日なのだからお願い」

「僕 陽菜さんの事襲うかも知れませんよ」

「大丈夫そんな事する勇気透にないでしょ」

「またからかって、、、」

「まぁーそういうことだから早く準備して寝よ寝袋持って来てるでしょ」

「わかりましたじゃリビングに行きましょっか」



そんなわけで私達は、寝袋で寝ることになった。

「ねぇ透おばあちゃんの遺作どんな物語かな」

「多分先生ですからすごく面白い物語に決まってます」

「だよねじゃおやすみ」

「おやすみなさい陽菜さん」

そうして私達は、眠りに着いた。


コッコッッコッ

私は、夜中に誰かの足音がして目が覚めた。

透かなそう思い横を見ると横には、寝袋に入っている人が見えたので透だろう。

えっ本当誰?

ゆっくりと寝袋から出てリビングの扉の隙間からそっと覗く。

足音は、聞こえるけれど姿が見えない。

私は、そのことが怖くなりすぐに寝袋に戻り必死で目をつぶり寝ようとしてそして、、、



「起きてください朝です」

透のモーニングコールが聞こえる。

「おはよ」

「おはようございます陽菜さん。もう朝ご飯は、作ったので早く食べましょ」

「んっ」

そういい私は、机につき朝ご飯を食べ始める。

「そういば昨日夜足音が聞こえたんだよ!私めっちゃビックリしてなんだったんだろうあれ?」

「寝惚けてたんじゃないですか」

「寝ぼけたかもしれないけどあれは 、ちゃんといたと思う」

「、、、先生の幽霊だったり」

「ちょっと怖いこと言わないでよけどもう一度おばあちゃんに会えるんだったら会いたいな」

「、、、そうですね僕もあってみたいです」

「さっご飯も食べ終わった事だし探そう!」

そう言って私は、もう一度この家を一通り探した。


「このままじゃ一生見つからない気がする。

なにをおばあちゃんが考えているかわかんないけど隠していることは、わかる。」

「そうでしょうねこれ多分謎ときですよ。昨日見つかった蝶が関係してるんじゃないでしょうか?」

「蝶っていったらやっぱおばあちゃんが好きだった少年の日の思い出!今すぐ昨日読んでた少年の日の思い出持ってきて」

「わかりました!」

、、、解けるかもしれないこの謎を


「持ってきました」

「ありがとうちょっと貸して」

「わかりました」

本を受け取ると私は、本をめくった。

「この物語に出てくる蝶って実は、二種類だけでひとつは、物語冒頭に出てくるキアゲハそしてもうひとつは、エーミールを僕が嫌いになったきっかけを作ったコムラサキ 。ねぇエーミールってどういう人物か知ってる?」

「完璧でなんでも出来るやつですかね?」

「他にも先生の息子 という設定があるの」

「先生の息子、、、」

「昨日私がこの家に1週間泊まったことがあるっていったじゃない。私が泊まった屋根裏部屋もうベットも勉強机も全部あったのつまり昔は、ここを誰かが使っていた。」

「多分私のお父さん」

「けどここは、もう探したじゃないか」

「多分これがおばあちゃんの遺作だよ」

私が見せたのは、白紙の原稿用紙だった。

「どういうことですか」

「レモンこの紙ちょっとレモンっぽい匂いがする

外に行って焼くよ」

私達は、外に出て。


「じゃ焼くよ」

透から借りたキャンプで使うためだったマッチで炙る。

「字が浮き出てきてるよ陽菜さん」

「うん読んで見よう」

そこには、こんなことが書かれてた。


よくここまでたどり着いたね。

まぁ2人ともいると思うけどおめでとう。

最後にちょっと孫と遊びたかっただけだよ。

本当に天国があるのならそこから楽しく見させて貰うよ。

私の遺作は、あの子に渡した少年の日思い出に入ってるよ。

まぁ破って見てみ。

おっと死人なのに喋りすぎたかね。

じゃまた天国があったら会いましょ。


「、、、ねぇまぁ全ては、言わないし咎めもしないけど不法侵入は、良くないわよ。あと透どこまで芝居で何処から透も舞台の役者になってたかは、知らないけどこんな事しなくてもおばあちゃんへの未練なんて自分でなんのとかなるけどありがとうね。

もう全部わかったんだし帰りましょ。話は、そのあと」

「、、、わかりました」

そうして私達は、静かにその場を後にした。

その場には、私達の重い空気とおばあちゃんのイタズラを残して。



エピローグ

「はぁー」

ため息が漏れる。

息が詰まるような重い空気に嫌気がさしたのように

陽菜さんは、ため息をこぼした。

「本当にすいませんなんかもう言い表せれないんですけどすいません」

「いいよ全然許したあげるけど今度私にご飯でも奢りながらおばあちゃんとの出会いについてちゃんと話てね」

「わかりました」

ちょっと声が小さくなる。

「夏休みももう終わっちゃうよ!まだ海水浴にも行ってないな~」

「わかりました僕が運転して連れてきます」

「ほんとやったじゃ2日後ね」

陽菜さんには、敵わないな、、、。

そう思いながら僕は、アクセルを少し強く踏みひとつの春の思い出から逃げるのであった。





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私の夏と祖母 八草秋水 @Rousyu1567

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