世界史嫌いでも面白い!

 この『世界史嫌いのchronicle(クロニクル)』は、ほとんど全ての教科が優秀だが歴史、世界史の教科が苦手で嫌い(訳有)、な、宍戸奈穂が、高校受験で、志望校のコードを打ち間違えていたが為に、よりにもよって、『聖リュケイオン女学園世界史科』に受かり、滑り止めなど一切考えていなかったので、そのままその苦手な教科の。全寮制の学園に入学せざるを得なくなる。

 というのが始まりです。(序盤ネタバレ注意)

 実は、自分も菜穂と同じで、歴史教科、日本史は好きではありませんでした。その範囲が世界まで広がってしまう世界史なんて、特に嫌いでした。

 過ぎ去った過去を覚える事に、何の意味があるのか。自分は未来に生きる、とか何とか、したくない勉強への意味不明の言い訳でも手に入れた気になって、ほとんど勉強していませんでした。(でも信長とか真田十勇士は知ってました。BASA〇Aをやると、日本史が歪む……)

 じゃあなんで、この話を読んだのかというと、それはやはり、この話に出て来る『アリストテレスシステム』に興味をそそられ、読み始めたのでした。

 自分は菜穂の様に、他の教科は優秀な天才、ではないのですが、歴史嫌い、という僅かな共通点から主人公にかろうじて感情移入をする事が出来て、話を読む事が出来ました。

 この『アリストテレスシステム』とは、自分の理解出来る範囲に要約すると、電脳世界のVRで、世界史の世界をリアルに体験出来ると同時に、その世界に介入して、歴史を変える、変革する事の出来る世界を見れる、という、リアルシュミレーションシステムみたいです。で、この学園の授業の中核だそうです。

 この、すでに終わった過去の出来事、決まりきった過去の歴史を改変する事が出来る(あくまでそのVR世界内で)、というのは世界史とかに門外漢な自分でも、胸がワクワクする、心踊るものがありました。

 すでに終わった、天下分け目の関ケ原の戦い、二度に渡る世界大戦、小国で起こる内乱、それに、当然変革出来るのは戦いに限らず、歴史的な事件の何にでも関わる事が出来る、というのは誰でも一度くらいは夢見る、浪漫溢れる英雄的な行為です。

 時間跳躍機(タイムマシーン)じゃないので、変えた世界がどうなってしまうとかの責任を考える事もしなくて済みます。安全安全。

 その上、神の視点から、その世界に自由に干渉するだけでなく、その当事者の一人に成り代わり、限られた行動の範囲内でその歴史に関わる事も出来るのです。

 更に、複数参加も出来て、敵味方に別れ、歴史の趨勢を違える事も……。

 下手な歴史戦争のシュミレーションゲームなんて、足元にも及ばない、物凄い面白さなんじゃないでしょうか?遊びで使う為の物ではありませんが。

 自分が、この時代に生まれ、この人物だったら、きっと歴史を変えられた、とか自負している人は、きっとこれをやってみるといいでしょう。そして、自分の限界や、歴史の潮流の流れを変える事が、どれだけ大変かを、思い知る事になるのかも……。

 この『アリストテレスシステム』は、歴史学科を学ぶ者には知っていて当然なシステムで、学園外にも提供されているのか、すでに中学生で活躍して、好成績を納めている者もいるらしく、全寮制な学園の寮のルームメイトに、菜穂が『アリストテレスシステム』を知らない、まったくのド素人である事を看破され、「そんな人にこの学校に入学してほしくはない」と言われてしまうのです。

 菜穂自身は、元々入学するつもりなんかなく、いずれ他の学校への転入を考えているので、内心ムっとするのですが~。

 こういう、スポーツ物なんかでも、凄い優秀な成績をすでに納めている人が、そのスポーツの初心者な主人公に、ド素人が、思い付きでやれる程甘い世界じゃない、云々、とイチャモンつけるのがよくありますが、普通に誰だって最初は初心者なのに、ガチ勢が、何を思い上がっているのか、初心者に絡み、偉ぶりたがるのか。(この話はそこまでワンパな感じではありませんでしたが)

 それでも、菜穂の非凡な所に目をつけたルームメイト、知恵=ベルナルディは、菜穂に『アリストテレスシステム』を試させてみる。

 すると―――

 何度か海外でホームステイの経験がある、陽キャラな菜穂なのですが、その天才さ故に、同等の立場で語り合える、真の友、はいなかったらしく―――

 『アリストテレスシステム』によって、歴史への苦手意識、世界観が菜穂の中で、確実に大きく変わって行き、それと同時に得る、独特の才能と個性を持つ、楽しく語り合える親友を―――っと、

 ちょっとネタバレが過ぎるかもなのですが、そんな感じです。

(最後に、どうでもいい話を。その昔、ジャ〇プで〇塾という漫画がありまして、最初戦って、そして仲間になっていくパターンなのですが、学校物なので、それが『世界史嫌いの~』もバトルな展開で印象が重なって、主人公は菜穂で、完全同等でライバル的存在、伊達〇人は桃かな。二号生筆頭の明石先輩は、宗世先輩。じゃあ、三年に巨人の様な存在感を持つ先輩が?
 とかアホな事を考えて楽しんでます)