十二話 夜のお店は大人の空間に変身
忙しかったランチタイムも後半になると、スイーツだけのお客さんも多くなって、店内にも空席が目立つようになる。
私が学生の頃にお世話になっていたのもこの時間帯だった。
よくチーズケーキと紅茶を頼んで宿題をしたり、パフェをつつきながら千佳ちゃんとお喋りをしていたなと思い出す。
この日もいつもどおり、この時間を利用して私たちも交代でお昼ご飯に入った。
「結花ちゃん、飛ばしすぎると夕方まで持たなくなっちゃうよ?」
「大丈夫、結花ちゃん若いんだもんさ」
畳の上で足を延ばしてストレッチをしている私を見て二人が笑っている。
「やす、セクハラだって言われちゃうよ? 弁護士の可愛い一人娘を預かってるんだから」
「菜都実さん、そっちの方が会話として危ないです」
「そっか。じゃぁあたしも気にするのやめた!」
こんな楽しい会話が毎日続くなんて学生時代には考えたこともなかった。
ユーフォリアは夕方になると、店内の雰囲気をがらりと変える。
ビニール製のランチタイム用のテーブルクロスを剥がして、厚手の白い布製に変更。カトラリーも昼間とは違って、注文を聞いてから必要なものをセッティングするスタイルになる。
お店全体の照明を
お店の窓の高さを堤防の少し上に設定してあって、お店の前のデッキや植栽を使って目の前の道路は見えないようにしてあるから、店内に座って外を見ると、ここが日本の地元にあるお店だとは思えないほどの風情に包まれる。
これらの備品類は菜都実さんが実家も兼ねていた以前のお店の備品をそのまま使っていると教えてくれた。
こんな大人のお店になるから、二人連れで特別な時間をという人もいる。
一方でこういう雰囲気になってもディナーだけでなく昼間のメニューも出せるから、いつも夕食をというお客さんも実は多い。
昼間のメニューにないお酒の注ぎ方も二人で教えてくれた。もちろん私はまだ飲めないけれどね。
「結花ちゃん、難しかったらなんでも聞いていいんだからね」
まさかお仕事をするようになるとは思っていなかったけれど、何度かこの時間は家族で何度かお客さんとして来ている。
昼間のカジュアルなお店も好きだけど、夜の落ち着いた雰囲気も大好きだ。
「結花ちゃん、夜も入るようになったんだね」
「はい。菜都実さんから夜のシフトに入っても大丈夫だって、合格をいただきました」
「菜都実さん、結花ちゃんもっと早く入れてあげてもよかったのに」
「まぁまぁ。それは結花ちゃんのお家の都合ってものもあるんだから、そこは許してくださいな。本当はとっくの昔に合格は出ていたんだけどね」
ランチにも来てくれる常連さんのお夕食でそんな声をかけてもらいながら、昼間とは違ってゆっくりお冷やを注いで回りながら、その日の時間は過ぎていったの。
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