第19話 仮面の歌姫 前編
生徒会一行はショッピングモールに向かっていた。
学校から自宅までは徒歩距離だが、今日はショッピングモールに行く為、生徒会一行でバスに乗る。
乗り合わせた生徒達の熱い視線を浴びながら駅前に向かう。
バス停に降りショッピングモールに向かう。このショッピングモールは2年ほど前にオープンし地元民なら必ず来たことがあるくらい人気のスポットだ。
必要な物はここへ来ればたいていは手に入る。
一人の時は自転車でここに来て、近所の書店に置いていない新刊のラノベや漫画などを買ったり、アニメショップも出店しているのでグッズを見たりと色々重宝している。
「さてと、なに食べる?」
「そうね、これといって何が食べたいってのもないのよね。あまりこういった感じで外食しないから、私は皆にまかせるわ」
「会長、実はお嬢様なのか?」
「まあ、会長お嬢様ではあるが外食はしないだけだ。カンズメの時はピヤング焼きそばにマヨネーズでデロデロにして食べてるよ」
「す、すみれちゃんやめてよ!それになによデロデロって」
すみれさんの会長いじりはさておき、モール内を歩いているとビラ配りのお兄さんに遭遇した。
「今なら学生割引でルーム代80%オフになりますよー!お兄さん方どうですか?」
「なるほど、カラオケボックスもありだな、フードの種類も豊富だし、シェアすれば色々食べれるしな。准弥どうだ?」
確かに、歌ってワイワイ色々つまみながらもありだな。
「良いんじゃないか?テストから解放されたんだし、打ち上げってことで」
「なあ進、あの、歌ってくれるか?、そのコンクリとか」
「すみれちゃんが聴きたいのなら全然歌うぜ!」
ということでカラオケ屋に行くことになったのだ。
案内されたルームに入り各々席に腰掛ける。
「えーと、みこちゃんとカナンは何飲む?俺取ってくるわ」
「え、私たち取りに行くよ。ね、みこ?」
「いいよついでだから、ドリンク取りに行ってる間に、適当に食べ物頼んどいて。会長とすみれさんは?」
「こういうところなんだよな。この女たらし」
「え?どういうことですか?」
「何でもない、ウーロン茶2つお願いする」
女たらしってどういう意味だ?
普段、姉にパシらされたり、母親にお使いを頼まれることも多いので勝手に体が動いてしまうだけなんだがな。
テーブルにはフライドポテト、誰が頼んだのかロシアンたこ焼き(たぶんすみれさん)、ピザ、唐揚げ、シフォンパンケーキなどなど、パーティー感に溢れている。
「それじゃ、淳弥、音頭を取ってくれ」
「いや、なんで俺なんだよ!進がしろよ」
「元から学年一位のすみれちゃんはともかく、この生徒会学力問題に大きく貢献したのはお前なんだからさ」
「実際、私もみこもあんたのおかげで順位上がりそうだしね」
「それはカナンとみこちゃんの努力だろ。それならすみれさんでもいいだろ」
「私は、だめだ。私の熱心な教育も空しく、会長を赤点ギリギリまでしか上げれなったんだ。私の力不足だ。」
「や、やめてよ。大手術を執刀した外科医みたいな発言。それにまだ結果出てないじゃん」
「実際会長は重症だったんだ。一命を取り留めただけだ」
「わかりました僕がします」
「ちょっと、淳弥君、さっきのやり取り突っ込んでよ。神妙な顔もやめて」
「それでは、期末テストお疲れさまでした。そして涼陽祭も生徒会一同がんばりましょう!乾杯!」
『乾杯!』
皆は各々、タッチパネルで選曲したり、黙々と食べてたり、イチャイチャしたりしている。
ミコちゃんはというと、おとなしく端っこ座り周りを見ている。
みこちゃんには苦手な場所だったかもしれないな。
隣に移動し話しかける。
「ごめんね、こういう場所得意じゃなかったよね」
「ううん。私こうして、カラオケて初めてで」
「そうなんだ配信とかでやってないの?」
「あー歌枠とか?恥ずかしいからそんなのはやってないんだ」
「そうなんだ」
俺も決して得意な場所ではない。家族でたまに行って、姉ちゃんが母さんの曲を歌って、後から母さんが登場して、姉ちゃんと歌う。ものまねご本人登場ごっこに付き合う程度だ。
姉ちゃんも母さんも歌は上手い。
父さんと俺はいつもタンバリンとマラカスを持って盛り上げる係だ。
知っている曲も母さんの曲と進の曲とアニソンくらいしかわからない。
「誰か曲入れないのか?俺入れたぞコンクリ」
とコンクリートジャングルが流れる。
まあ安定の曲だな。
一人感動で涙ぐみ、気絶しそうになってはいるが。
いや過呼吸なってるぞ。大丈夫かすみれさん。
歌い終わった進は、カナンに声をかけた。
「カナンもミュージシャンだから歌うまいんだろ?」
「いや、私リードギターだから歌わないわよ、コーラスぐらいしかしてないし」
しばらくしたらカナンの選曲した曲が流れた
海外の女性ロックスターの曲だった。
なんだかんだ上手いな。それに英語歌詞なんてよく歌えるな。
「カナンお前上手いな。どうだ?サポートギターじゃなく俺のプロデュースで曲出さないか?」
「嫌よ。あくまで私はギターリストなの。はい淳弥」
カナンにタブレットを渡されたが、一体何を歌えばいいのか。
これなら歌えるか?
俺はほとんどカラオケで歌うこともない。進でさえ俺とカラオケで歌うところは見たことないはずだ。
風呂場で鼻歌を歌う程度だ。
とりあえずこれなら歌えるはずだ、母さんがレコード新人賞を取った曲を最近男性ダンスボーカルグループがカヴァーした曲を選曲してみた。
かなり原曲よりアップテンポではあるがキーが男性だけあって歌いやすく、やり切れたような気がする。
歌い終わるとシーンとなった。
「淳弥、お前さ?」
「ん?ああごめん」
やっぱり音痴だったか、音痴って自覚がないっていうもんな。
「あーーーなんかむかつくわー」
そんなにやばかったか。進にこんなにムカつかれるなんて
それに周りの女性陣も頬を赤く染めて憤慨している。
「会長すみません。眠たくなるくらいつまらなかったですよね?」
「違うぞ淳弥、会長はウトウトしてるんじゃない、うっとりしているのだ」
「すみれさんがおっしゃってることがよくわからないんですが?」
「まあそうだな。淳弥、お前の歌声が、エロいんだよ。この18禁前世サキュバス男が」
なんか俺放送禁止用語でも言ったのか?
とにかく俺はみんなに不快感を与えたようなので、今後迷惑にならないよう、歌うのはやめておこう。
会長とすみれさんは仲良く女性アイドルユニットの曲を歌い盛り上がっていた。
「みこちゃんは何か歌わないの?」
「私はいいです」
んやっぱりみこちゃん楽しめてないな。
セッティングした当事者の一人として大変申し訳ない。
するとおもむろにすみれさんがタブレットを取り、曲を送信した。
「これなら歌えるだろ?」
タイトルは『光は暗闇の中へ』
ああ知っている、数年前魔法少女アニメの挿入歌で大ヒットした曲だ。
確か苗字は覚えていないがかすみさんって声優さんが歌っていた曲だったはずだ。
「わ、私、人前で顔を出して歌うなんてできないです」
「ああ、そう言うとと思ってな」
すみれさんはカバンから何かを取り出した。
「ん?、お面?」
それは、狐をモチーフにした口元の空いたお面だった。
樫木くんは周りがそうさせた~俺以外周りが裏では超有名人なんだが~ 火田タカヒロ @umia
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