第18話 次期生徒会


「いやー終わった終わった」

「で、どうだったんだ手応えあったか?」

「勉強会のおかげで少し余裕があったよ」

「みこちゃんはどうだったんだろうか?」


 無事に期末テストを終えて、解放感で溢れている教室のみこちゃんの席に向かう。


「どうだったテスト?」

「うん、准弥くんのおかげでかなり問題解けたと思う」

「それは良かった。勉強会した甲斐があったね」

「うん」


 皆テストは好感触のようだ、ほっとした。


「さーて准弥、みこ!飯でも食いに行こうぜー!と言いたいところだけど、生徒会室に寄らないといけないんだっけ?」

「そうそう、夏休み以降の活動について話があるみたいだな。ランチはその後で行こうぜ」


 期末テスト最終日の金曜日、今日は午前中で終わりなのだけども何やら生徒会で話さないといけないことがあるらしい。

 まあ、話が終わったら会長、副会長、カナンも誘ってランチでも行くとしよう。


「じゃあ行きますか、生徒会室」

「おう」

 進、みこちゃんと途中でカナンも合流し、生徒会室に向かう。


 コンコンとノックをし生徒会室に入る。

 しかし様子がおかしい、いや二人とも精魂尽き果てグッタリしている。

 あしたの○ョーのようになっている。

 すみれさんが付きっきりで光先輩に勉強を教えていたのだろう。

 まるで死闘繰り広げた戦士のようになっている。千豆でも与えてあげたい。


「おーい!大丈夫かー?二人とも」

 進が声をかけるとすみれさんがゾンビのようにムクーっと起き上がる。


「お、おう来たか」

「大丈夫ですか!?」

「ああ、ここまで会長が勉強できないと思っていなかった、ほんと胸と文才だけはあるのにな」


 胸は置いといて、文才と勉強が出来るは比例しないのだろうか。

 姉ちゃんは胸はあるけど勉強もなんだかんだ天才肌で出来てしまうけども。

 まあこれ以上話を広げるとカナンやみこちゃんに引かれそうなのでやめておこう。


「で、すみれちゃん話ってのは何?」

「まーとりあえずアトリエに来い」


 生徒会一同は隣のアトリエに向かう。


 アトリエといってもそもそもは生徒会の会議室だ、職員室のようにおのおのの机が用意されていて、そこで作業したりしている。

 生徒会の仕事はほとんどアトリエではしていないし、光さんの執筆とすみれさんのイラスト作業にもっぱら使われている。


 進もみこちゃんもカナンもやることは自宅の方が適している為かあまり使っていない。

 まあそもそも生徒会の活動の為の部屋なんだがな。


 各自自分の席に着くと、すみれさんはホワイトボードを出してきた。


「さて、今日は次期生徒会の私たちが今後やらなければならない事を伝えるために集まってもらった」

「まあ俺達生徒会だから、何かはしないといけないんだろうけど、正直まだ現生徒会が仕切ってるわけだからさ、俺たちは何したらいいのかもわからないんだよな」

「確かに進が言っているように、俺たちはいつ正式に生徒会の活動をするのかもわからないし、何をしていくのかすらわからないよな」

「正式に我々の生徒会が引き継ぐのは秋の涼陽祭以降からだ」


 涼陽祭とは俺達が通う涼陽学園の誇る一大イベント、いわいる文化祭だ。


「文化祭の実行委員とかそういう文化祭を手伝うって話ですか?そりゃ当然でしょうけど」

「いや違う、涼陽祭の自体は、実行委員と現生徒会が仕切る」

「んじゃ、俺たちは何をするんですか?」

「新生徒会での出し物だ」

「出し物ですか?じゃあ屋台やったりとかそういうのですか?」

「いや、違う、ある意味この出し物で今後の生徒会の行く末が決まるといってもいい。この涼陽祭を境に新生徒会体制になるんだ」

「新任決議みたいなものということですか?」

「ま、そうところだ、学校の生徒に支持されてこその生徒会だからな、新生徒会の御披露目の場でもあるんだ」

「なるほど力で示せということですか」

「まあそういうことだ。この出し物出来によって支持されるか決まるからな。涼陽学園の伝統だ」

「ってことは去年もあったってことか?すみれちゃんたちも参加したんだよな?何したんだ?」

「去年は演劇をしたんだよ。私が脚本を手掛けて、今の会長が演出、すみれちゃんが役者で。記録映像として保管してるわよ」

「すみれちゃんが役者!?それはぜひとも見てみたい」

「やめてくれ恥ずかしい」

「いいじゃない。すっごく好評だったのよ。諸星会長の演出が凄かったのもあるけどね」


 諸星会長とは現生徒会長、諸星雷伝さんのことである。

 多くの演劇やミュージカルで鬼の諸星と呼ばれている演劇界重鎮、諸星雷雨さんの息子さんで、才能は父親も一目置くくらい素晴らしいらしい。

 表にはまだ出ていないが、今後の演劇界を引っ張っていく存在あろうと言われている。

 まあ、この情報は元子役の進からの教えてもらったものだが。

 ちなみに副会長は諸星会長の恋人であり、雷雨さんの劇団に所属している相川小雪先輩である。


「とにかく涼陽祭に向けて、何をするのか決めないといけない」

「そういうことですか」

「まあ私たちの得意を生かしたものがいいかとは思うのだがな」

「それはそうですね」


 皆の得意なものか。

 進は楽曲制作、すみれさんはイラスト、会長はストーリー、カナンは演奏、そしてみこちゃんは声か。

 それなら、できるかもしれない。


「淳弥?」

「あ、はい?」

 考え事をしていると、すみれさんから声がかかった

「お前が考えていることを当ててやろうか?」

「え?」

「ゲームなら作れるんじゃないか?と思っただろう」

「いや、なんでわかったんですか?」

「お前が考えそうなことぐらいわかる」

「そんなに分かりやすかったですか?」

「淳弥、お前はラノベの読み過ぎだ、数々のラノベでゲームをみんなで作るものがあるが、実際はそんな簡単ではない」

「私はゲームやソシャゲのキャラクターデザインを担当することもよくある、進もそうだゲームの音楽やプロモーション楽曲も手掛けている。だからこそ言わせていただく、ゲームは生半可な情熱だけではできないんだ」

「そうだな。淳弥、あの人たちはプロのゲームクリエーターだ。緻密だからこそ俺も曲作りができる、俺達ズブの素人が作れるものじゃない」

「そうね私の兄貴もドラゴニュートでゲーム制作をしているけど、苦労している。そう簡単にできるわけじゃないわ」


 考えが浅はかだった。俺はできそうだけで突っ走ていた。

 情熱を持ってゲームを作っている人に失礼な事をしてしまった。

 それも俺が何かできるのでは無くすべてを皆に期待してしまっている。

 なんて愚かなことだ。肝心なゲームを作る人がいない。

 知識も持っていない俺ができるわけでもないのに。


「まあ、みこの喘ぎ声が聴きたい気持ちはわかるがな」

「す、すみれさん何を言ってるんですか!?なぜエロゲ前提なんですか!」

「カナン?エロゲって何?」

「いやっ進。こっちに話を振るんじゃないわよ、そりゃ兄貴が大量にコレクションしてるから知ってるけども」

「私そ、そんな話書けないわ経験しないと。その淳弥くんがて、手伝ってくれるんであれば」

「いや、あんたたち、高校生でしょ。それに文化祭の出し物よ。それにみこの顔を見てみなさいよ」


 カナンの鋭い指摘はともかく、みこちゃんの方に目を向ける。

 いやありえないほど真っ赤だ。


「ご、ごめんそんなつもり一才無いからね」

「とにかく、二週間もすれば夏休みだ。それまでに何をするか各自考えてくれ」

「はい」

「よし終わったか!それじゃみんな飯食いに行こうぜ!おれ腹ペコペコだわ」

「それじゃ行くか、行きますよ会長」

「で何食べに行くの?」

「とりあえず駅前のショッピングモールで決めたら良いんじゃないか?ファミレスもあるし」


 そんなこんなで新生徒会一同はひとまず駅前にあるショッピングモールに行くことになった。












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