10月4日

羽連

10月4日

 カチッ


「……あれ? ねぇ、これどこ押すの? ついてる?」


「えー? だからぁ……いや、撮れてる撮れてる」


「マジ?」


「マジマジ」


「……っえー……と、……あのー……え、どうしよ」


「え、何言うか決めてないの?」


「そらぁ……だって、撮るってなったのついさっきだし」


「そらそか。いいじゃんいいじゃん、レポートでも読み上げれば」


「れぽぉとぉ? あ、あの落書きのこと? そんな言うほどのもんじゃないし……。でもまぁ……はい」


「はいってなによ(笑)」


「茶化さないでよ、いま喋るからさぁ。……えっと、私は……違う違う、私たちは、あのぉ、研究をしていますっ!」


「研究(笑)」


「んもー! ……で? えーっと、研究っていうのは、10月4日のことです。あの、ほら、なんて言うんだっけああいう、うさんくさいやつ」


「うさんくさいじゃわかんないよ」


「あれだよあれ、あなた次第っぽいやつよ」


「ああ、都市伝説?」


「そうそれそれ! えっと、都市伝説です。実は、10月4日が誕生日の人がこの世にいないらしいんですよ! あの、少なくとも私たちの周りにはいないんです……」


「ほんとぉ?」


「だーかーらー! それを研究してるんでしょ? ……んでぇ、いまは10月3日、午後11時と……ごめん園香、いま何時?」


「え? あそこに時計あるでしょ?」


「あっほんとだ。11時……ごじゅう……56分でーす。あと少しで10月3日。場所は病院でーす」


「だからちょっと小声」


「ほんとはビデオ禁止なんだけど、こっそりやってまーす。んで、……そう、園香のお母さんが、もう少しで生まれそうなので」


「……くふっw」


「4日に生まれないか待って……なんで笑ってんの?」


「お母さんがw生まれるってww」


「え、そんなこと言ってた? ちょ、いまのなし! えっと、園香のお母さんの子どもがもう少しで生まれるらしいので、4日に生まれないか待ってまーす」


「ギリギリだったちょっとガマンしてもらお」


「えーそれはちょっとかわいそう……。まあ、ちょっと前に運ばれてったし、いまのところ大丈夫そうなので、えっと、大丈夫でーす!」


「語彙(笑)」


「それは許して。……でもさぁ、ほんとだと思う? 1日だけ誕生日がすっぽ抜けてるなんて」


「それを調べるためにここにいるんでしょ?」


「それは……そうだけどさ」


「というかこれで生まれる時間ずれても解明にはなんなくない?」


「……え?」


「え?」


「……ま、嘘だったってことはわかるかもしれないからさ!」


「おぉうポジティブ」


「いぇい」


「……」


「……暇ねぇ。あとどんくらい?」


「だから」


「ああそっか時計時計ね、えっと、あと」



...ワールドの読み込みを停止しました

...定期アップデートに入ります

...この操作にはあと 23 時間 59 分 掛かります

...13%

...20%

...23%

...23%

...24%

...67%

...91%

...99%

...99%

...完了しました

...ワールドの読み込みを再開します



「1分、というかもう12時じゃない?」


「0時だよ0時」


「そういう細かいのはさぁいちいち……あれ、足音するわ。生まれたんかな?」


「お、ちょうどじゃん。誕生日は……あれ?」


「ん、どしたん?」


「今日さ、5日じゃん」


「えっ嘘!? うぅわ日付間違えてんじゃんか……。そういや今日4日だったわ」


「バカだよねー」


「あーあ。……来年子ども生む予定とかないよね?」


「ないない」


「だよねぇ。……帰ろっか」


「そうだね。ビデオ切って返して」


「ういーりょうか」


 カチッ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

10月4日 羽連 @paren0609

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ