第3話 不思議な生徒3

「ふー、次はここを戦場地獄にすればいいのか?」


 次の瞬間


「なんだ!この魔力は!何者だ!」


 鬼嶋の雰囲気が変わった、ちょっと魔力が濃くなったとかの次元ではない違う別人のように、そこには鬼嶋の様で鬼嶋ではない者が立っていた。

 鬼嶋の体を侵食した何かは、即座に連合兵の近くにゆっくりと向かう


「消えろ」

「ッ!」


 鬼嶋の体を侵食した物は、あり得ない速度で、連合兵に接近。回し蹴りだけで・・・腕を吹き飛ばした。


「グ、グガァ!」


「うるさいぞ、カス」


「なんで急にここまで強くなったんだ・・・!」


「知っているか?この男が何故国家戦力級と呼ばれるようになったかを」


「し、知る訳ないだろ」


「それはな、こいつが珍しい《神格神理者ベルトラー》だからだ」


「《神格神理者》!?」


「ああ、こいつが、初めて戦場に出たのは、3歳だ」


「!!」


「ありえないだろう、たった3歳で、戦場に出て生きて帰って来たんだぞ」


 戦争とは、人間の自己満を満たすもの、勝てば国が潤い、負ければ国が内部から崩壊する。

 ただただ無益!戦争をし!人が死に!物資を失い!結局国が消える!その無益な戦いに、巻き込まれた者はどうする!?答えは、戦い勝つしかない!

 これが、この魔術で満ちた世界での、戦争孤児の生き方である!故に、経験の差が段違い!

 一人で戦場を駆けまわり、十歳の頃には、戦場の殺戮者モーリスとまで言われた、男の子は、今も尚!成長し続けている!だが、成長するにつれ、心が、神経が、どんどん暗い方にやられていった、それが、この鬼嶋を蝕んでいる魔力、世界に数名だけしか持っていない物その名も・・・


「《神格神理ベルト》。俺は、言うなれば《爆撃の神格神理者ベルトラー001》。鬼嶋は、この力を、命を奪うために使うのではなく、にこの力を振るっている」


「そんなものが、存在していい筈が無い」


「何故だ?世界は、今魔術の所為で、混沌に満ち溢れているではないか?政府は、頑張って隠している、異次元ポータル、魔物モンスターの発生、人為的災害アートカタストロフィもうどうしようもないんだよ。そんな世界で、ありえないものなど、ありはしないんだよ」


「!」


 敵兵は、気づいた。この男の人生を。人々を救うために、人々を殺していると言うを背負って生きていることを。その矛盾こそが、この男を形成している事を。


「分かったか?こいつの本質は、何処までもお人好しで、何処までも自己中だ。だってそうだろう?『俺は、この人たちを死なせたくない!だから、お前ら死ね』って言ってるようなものだろう?」


「結局自分の為じゃないか!」


「そうだ。だが、お前らもだろう?自分や自分の国の為に敵国を亡ぼす。それを自己中と言わずしてなんて言う?」


 人には、分かっても割り切れないものが在る。相手がやっていたらムカつくことも人は平然とやる、それを、不満に思わない奴が居るか?そして、注意されると逆上する。それと、何が違う?確かに違うだろうだが、本質は同じだ。


「だが・・・」


「そうしないと、こちらが死ぬ。か、そりゃそうだ人間なんて、自己満を正義と言い、人と違う価値観を悪と言う。つまり、自分たちは、敵国から物資を奪うが、これは正義だと言いたい、いや思いたいんだろ?」


「そ、そうだが。だがお前たちもそうだろう!」


「そうだな。だが、最初に言っただろう?この男は生まれてずいぶん長い間その矛盾を背負って生きていると、だから・・・今頃なんだよ」


「!、ガッ!ァ!」


 鬼嶋の様な者は、すべて話終わった途端、また戦いを始めた。ただそれは戦いではなく、一方的な蹂躙だった。連合兵の体は、向いてはいけないほうに折れ、外見からは分からないが、臓物にはいくつもの傷が出来上がっていた。

 それから何分経っただろう?連合兵はとうとう跡形もなく消滅した。


「これでいいだろ?鬼嶋。そろそろ変わろう」


 その瞬間、急に垢ぬけたように先程の狂暴な魔力は消え、いつも通りの鬼嶋の魔力に戻っていた。


「ああ、ありがとう。」


 そう満足したように静かに眠りにつくのであった。


 ■■■


 央血連合


 この時の、央血連合には黒いフードを被った者が居た。


「やぁ~、ガゼルド大将~国家戦力級は誕生したか~い?」

「お、お前は!」

「いや~、久しぶり~八神柱連はっしんちゅうれんの《三柱:精神支配の神格神理者ベルト004新橋あらばし助廣すけひろだ。覚えてる~?」

「ああ、覚えているとも八神柱連の三柱さまですよね?」

『アハハハハ!』

「・・・殺してやろうか?」

「それは、こっちの台詞セリフだ」


 二人の威圧は、修羅場と言うのもおこがましいまでの殺気を放っていた。


「まあ、本題はそこじゃない、でたんだろう?国家戦力級が」

「ああ、出たさ。日本の国家戦力級に負けたけどな」

「!?ありえない!」

「いやぁ~、ありえないですよね~、わざわざ他国の軍人の遺伝子を組み替えてまで作ったのにねぇ~」

「誰に、やられた」

「《爆撃の神格神理者ベルト001》の鬼嶋と言う軍人に殺されたよ」

「!?あいつまだ生きていたか!俺たちの計画をことごとく邪魔する特異点!」

「ほぅ、知っていたか」

「知っているも何も!いつもいつも俺たちの邪魔をしてくる厄介者だ!今回は、お前の思う壺にはさせないぞ!鬼嶋!」


 その害意に満ち溢れた声だけが広い部屋で鳴り響くのであった。


 ■■■


「ふぅ~、何とかなったね。みんなお疲れ様!」


 なんだ?頭が痛い。この声は、静華?


「でも、よくこんな傷負って生きてたもんだ」


 なんだ?体が動かない、いつもはすぐ動くのに何故今回は?


「静華大佐、魔力も正常に動き始めました!」

「じゃあ、そろそろだねぇ」


 よし、動けるようになってきた、


「ふぅ、やっと起きれた」

「起きたな、鬼嶋じゃあ・・・寝てろ」

「え?」

「はいはい、皆~、拘束具持ってきて~」

『はい!』


 え、え嘘!嘘!嘘!嘘!


「だって、鬼嶋の性格だと直ぐ戦場に行くだろ~、だから、拘束」

「ちょっと話が飛びすぎてないか?」

「絶対安静でいろ・・・死ぬぞ」

「なんで脅すんですか!」

「脅す方が面白い」

「やっぱドS」

「ふふ」


 何故かその笑顔がベルト時より、凶悪に満ちていたと思う鬼嶋なのであった。


 ■■■


 一方、前線では、


「ここからは、陸軍大佐、鬼嶋に代わり空軍大佐龍崎が指揮を執る!」

『はい!』

「クソッ、俺はそういうキャラじゃないのに」


 何故か指揮を取らされ、変なことを考え始める龍崎であった。


 ■■■


 ・・・五時間後


「鬼嶋!完・全・復・活!」

「うるさい」

「す、すんません。じゃあ、前線に行ってきます」

「いってらっしゃ~い」


 五時間後には、感覚を取り戻した鬼嶋は、もう一回戦場に向かうのだった。


 ■■■


「そろそろ、私も準備をしようか。秘書、あれを持ってこい」

「了解しました」

「はぁ、本当にこれで終わり。ならば最後に踊り狂おう」


 この時の敵大将の顔は、覚悟を決めた者の顔をしていた。だが、その顔には、少しの嬉しさも含まれているようにも見えた。まるで、恋人の為に戦場に行く騎士の様な。


 ■■■


 最前線


「鬼嶋大佐がお戻りになられたので指揮を鬼嶋大佐に丸投・・・譲渡します」

「ねえ、今丸投げって言おうとしたよね?」

「いえ、言ってません。自分は、丸ナゲットと言おうとしたのです」

「なんで、このタイミングでナゲット?嘘は上手につこうよ」

「では」

「あ、逃げた」


 最前線に帰ったきた鬼嶋は仕事を丸投げされていた。


「では、作戦を言う!」

『はい!』

「まず、第一、第二、第三は左翼から首都に攻めろ!第六、第七、第八は右翼から攻めろ!魔術大隊は、飛行魔術で、後ろから奇襲!第四、第九、第十は全員別行動で情報収集!俺と第五部隊は、中央を落とす!準備は良いな!?」

『了解!!』


 鬼嶋の復活に士気が上がり、よりやる気に満ちた日本軍は、このまま首都に攻める!だが、待ち受けていたのは完全な勝利ではなく、だけが残ることをこの時の鬼嶋たちは知るよしもなかった。


 第3話終了

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日出でる国の殺戮者 厨二赤べこ @sakedaruma

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