言葉が焚きつけてくる
ななくさつゆり
1話目【昂揚の芽吹き】
私とヒヨリさんは、「同じゲームが好き」という点だけで繋がる間柄でしかなかった。繋がりというには
こちらは地方で、彼女は東京にいる。コミュニケーションのほとんどはSNSを介した他愛のないもの。音声通話の機会は皆無で、対面して会話したのも数回だけというありさまだった。
それなのに、ヒヨリさんの存在感は自分の中で決して小さくない。理由は様々。たとえば、SNSのタイムラインをざっと眺めていると、日に一度は躍動する当人の創作物を見かけるから、というのがある。彼女の日々の活動が自分の内側にするりと入りこんできた。それが彼女の存在感を徐々に強めていくのだけれど、やがてその刷り込みじみたものが、さらに一歩踏み込んだ作用を自分にもたらしてくる。
ヒヨリさんはイラストを描く。
新作の公開。ドローイングの配信。活動を重ねるごとにフォロワーを増やし、活動の幅を広げていた。それを追うなかでふと、彼女自身の胸の内にあるもの——ひたむきさの正体のような何か——を考えるようになっていく。タイムラインに立ち並ぶ成果物たちを前にして。
こうも日々動けるものなのか。
なにが彼女を動かしつづけているのか。
描くほどに上手くなっている。
描くのが速くなっていく。
線に迷いがなくなっていく。
去年よりも、先月よりも、昨日よりも。
そうした姿を目の当たりにして、いつしかそれを眺める自分の内に、ひとつの小さな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます