第128話 力を、合わせれば──
「そうだな。あんなどこの馬の骨とも知れないやつが懸命に戦ってるんだ。俺達だって戦わないわけにはいかねぇ」
カルノさんとコンラートも、再び戦いに参加。
即席で集まっただけあって、連携は取れない。一人一人、自分の戦い方でハスターに立ち向かう。
当然、決定打にはならない。
全て、ハスターが繰り出した障壁に防がれてしまう。
「へっ、守ってばかりのへっぴり腰で俺に勝つつもりかよ!」
それでも、ラヴァルは動じない。傲慢で、自分の強さを信じてやまない彼はさらに攻勢を強めていく。
「少年、いったん引け。むやみに突っ込んでも返り討ちに合うだけだぞ!」
「そうだ、無茶過ぎだ。死ぬぞ!」
カルノさんとコンラートが慌てて止めようとする。しかし、ラヴァルは話を聞きもしない。
それを理解したから、私は何も言わなかった。
彼と戦ってきて、彼の事を理解したからわかる。
外野が何を言おうと、自分がこうと決めたら話を聞かずに貫いていくタイプだと知っているからだ。
そして、ハスターが繰り出した
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
ラヴァルの攻撃を力任せに押し返した後、拳で殴り掛かった。
ラヴァルは──彼の意地、というか戦い方なのだろうか。よけようともしない。
殴り返すかのように、力づくで
結果は──予想通りだった。
「ぐああああああああああああああ!!」
ハスターも攻撃がラヴァルの攻撃を打ち破り、ラヴァルの身体に攻撃が直撃。 直撃は避けたものの、
悲鳴を上げながら、体を吹き飛ばされる。
「ほら、いわんこっちゃない」
「うるっせぇ。ちょっと奇襲くらっただけだ」
強がるラヴァル。しかし、やはり彼一人では荷が重い。
ハスター相手に、全く歯が立たない。
「俺達も行こう」
「ああ、あんな奴に負けてたまるかよ」
「ええ」
三人まとめて、立ち向かっていく。
コンラートが繰り出した攻撃を、ハスターは蚊を払うように追い払う。
「なんだよこいつ。見たことねぇ」
ラヴァルも、体を吹き飛ばされ後ろにある家屋の壁にたたきつけられた。
3人同時に攻撃を繰り返しても、攻撃をまともに当てることすらできない。
やはり、私たちでは敵わないのか──。
諦めの感情が、心の中に現れ始めてくる。
「俺達も力になるっす」
「やめて、死ぬわ」
慌てて止めようとする。いくら私たちが苦戦してるといたって、彼らが
ラヴァルの手下たち。
基本的には、魔法なんて使えないし、使えるやつがいたとしても、
そんな人たちが無謀に突っ込んでいたって、どうにかなるものでもない。
下手をすれば死ぬ。
しかし、そんな私の想いなど、聞きはしない。
「おい、ラヴァルさんがやられてるぞ!」
「俺達も協力するぞ! 続けぇぇぇ」
ラヴァルの手下たちは互いに顔を合わせながら戦意を高めあっていった。
流石に彼らはまずい。
「待って、あなた達が向かっていっても結果は変わらないわ。引いて」
彼らの多くは魔法が使えないだけのゴロツキ。少し使えるやつはいるみたいだけれど、それもほんの少しだけ。一般的な冒険者と同程度しかない。
確実に一蹴されて終わりだろう。カルノさんもコンラートが言うものの、やはり話を聞かない。
「まって、流石に君たちは危ない。おとなしく下がるんだ」
「バカか、死ぬぞお前ら!」
そんな私の想いとは裏腹に、ラヴァルの手下たちは無謀にも突っ込んでいった。
結果は一瞬。
ハスターの出した触手に全員まとめて吹っ飛ばされて終わった。
戦いに関しても素人だったようで、まともに反応すらできていない。
大勢の男たちが吹き飛ばされ、一瞬で彼らは瓦解。
「バカ! お前達じゃあどうすることも出来ねぇよ!」
ラヴァルが呆れ気味に叫んで突っ込む。
ちょっととげのある物言いだが、正論ではある。それなりに実力があるものでなければ、いたところで何もできない。ただなぶり殺しにされるだけだ。
勇気を出して決死の覚悟で戦うことと、何も考えず突っ込んでいって犬死にすることは違う。
彼らは、悔しそうに言葉を放った。
「俺達、力に慣れねぇってのかよ」
「なんだよ。せっかく街がピンチだってのによ……」
無力感に苛まれているのがわかる。彼らも本当は、彼らなりに力になりたかったのだろう。
それができない悔しさ。それはとても理解できる。しかし、それで大切な国民達の命を失うわけにはいかない。
私たちだって、力が欲しい。何とか彼らと私たちの想いをつなげられないだろうか。
俺達──力に。
ラヴァルの手下が言ったフレーズを思い出す。その言葉に、ピンときた。
聞いた事がある。ごく限られた人が使える、あの力。
すぐに、カルノさんの方を向いた。
彼のところまで歩いて、話しかける。
「カルノさん。ちょっといいですか?」
「なんだ、センドラー」
疲れ切っている体を動かし、カルノさんの耳元で打ち明けた。
私が今から、行おうとしていることを──。
カルノさんは、驚いて目を大きく開いて私をじっと見る。
「死ぬかもしれないぞ。正気か?」
「でも、それしかない。お願い。私は、守りたいの。この街を──この国を──」
それが、私の本心だ。真剣な表情でカルノさんをじっと見つめて、コクリと頷いた。
カルノさんは、じっと私を見ていた。やがて、私の想いは伝わったのか、ボソッとつぶやく。
「そこまで言うなら、分かった。協力しよう」
その言葉に、思わず表情が緩む。
「大丈夫、私ならできます」
そう言って、コクリと頷いた。
私は、静かにカルノさんを背にして仁王立ちをする。
「行くよ、センドラー」
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