第127話 必死の戦い

 争い合う姿を見ながら、センドラーに話しかける。


(私、どうすればいいんだろ……)


 センドラーは私とは違う、強い気持ちのような、全てわかり切っているような──自信たっぷりの表情。 


(どうするって、決まってるじゃない)


(決まってるって?)


 強気な笑みを浮かべて、話しかけてくる。


(あなたなら、絶対にできる。今までだって、やって来たじゃない。どんな苦労だって、乗り越えてきて)


 その言葉に、思わずはっとなる。


(そうね、あきらめるわけにはいかないものね)



 センドラーの言葉のおかげで、元気が出て来た。

 確かに、今の状況は最悪だ。強大な敵の前であることだけでなく。街はバラバラに分断され、争い合っている。


 けれど、みんながそんな状況を望んでいるわけではないのも知っている。そういった人がいたから、私はここまで戦ってこれたのだから。

 必ずいるはずだ。ここにはいないけれど、こんなことを望んでいない人が。


 声なき声にこたえるため、戦わなきゃ。


 いままだって、楽な事ばかりではなかった。苦しかったことも多く、折れそうになることも当然あった。


 それでも──私は最後まであきらめずに戦う。たとえ一人になってしまっても戦う。

 それが、私が決めた覚悟なのだから。


 ハスターをにらみつけ、ガンを飛ばす。

 目が合ったハスターは私の存在に気付き、にらみ合った。


 思わず足が竦み、逃げ出したくなってしまう。それを、気持ちで強引に抑えた。


 逃げるわけなんて、行かない。


 この国を守るため、逃げるわけにはいかない。



 剣を召喚し、立ち向かっていく。


 ハスターは私の方を見るなり口を大きく開け始め、紫色に光らせる。すぐに攻撃が来ると理解。


 危ない!


 ハスターの攻撃が私に向かってくる。

 何とか防ごうと考えるが、私が障壁を出したところで一瞬で崩壊し直撃するだろう。

 仮に建物に隠れて身を守ろうとしても無駄だ。ハスターの攻撃では、建物は直撃の瞬間に一瞬で崩壊。


 体は攻撃を直接浴び、消し炭と化すだろう。

 攻撃を出したところで、私では力不足だ。


 そして、ハスターが私に向かって紫色の光線を吐き出していく。その攻撃が私に直撃しようといたその時──。


「えっ??」


 障壁が突然現れ、私を救ってくれたのだ。

 当然、私が出したものではない。何が起こったのかと唖然としていると、後ろから聞き覚えのある人の声が聞こえた。


「大丈夫かセンドラー」


「貴方は、カルノさん??」


 細身でスーツを着た長身。眼鏡をかけていて落ち着いた雰囲気の男の人。

 以前であったことがある正義感が強い人だ。まさか、協力してくれるとは


「聞いたよ。あなたが何をやってるか、加勢しよう」


 それだけじゃない。あの人もいた。


「味方してやったぜ。一緒に戦おう」


 黒いサングラスをかけ、軽くヒゲが生えているダンディーな男の人。

 元々は私と組んでいたが、それが原因で私が追放された時に立場を失った。


 そして、私がリムランドに戻って来た時、私の権限で政府の業務に復帰させたのだ。

 カルノさんに、コンラート。


「ありがとう」

 そう言って、コクリと頷いた。2人とも、今まで、いっしょに戦ってきてくれた人たち。


 思い出した。今までだって同じだった。私は、一人戦ってきたわけじゃ無い。

 周りの人たちが戦ってくれて、力になってくれて、今の私がいる。


 さらに、戦おうとしていたのは私達だけではなかった。




「ったくよぉ。何グダグダしてんだおめぇ!」


「ラヴァル!!」


 目つきが悪く、白髪でツンツン頭の男。毛耳をしている。間違いなくそうだ。

 ついこの前、スラム街で死闘を繰り広げた男。


 確かに悪い奴だったが、そうなったのにはしっかりとした理由があったし、戦いが終わった後は心から語り合った。


 そして、後方にはラヴァルの手下たちの姿。

 みんな剣や斧を持ったりしていて、戦う意思があるというのがわかる。


「加勢してくれるの?」


 ラヴァルはへっと言葉を吐いた後ニヤリと笑った。


「ったく。お前は仮にも俺に勝ったやつなんだぞ。そんな奴が苦戦なんてしてるってなったら、俺の名誉にかかわるんだよ」


「何言ってんのよ。まだ負けたわけじゃないわ」


「だろうな。お前がこの程度でくたばるわけがねぇ」


 ラヴァルは冗談交じりに笑い、剣を肩の上に置く。全く、素直じゃないんだから──。


「お前ひとりじゃどうにもなんねぇようだな。まあ、俺も協力してやるよ」


「──ありがと」


 ニッコリと笑ってウィンクをする。ラヴァルは、ペッと唾を吐き捨てて不機嫌そうに言葉を返した。


「ケッ、褒められてもなんも出ねぇぞ」


 そう言ってラヴァルはハスターへと突っ込んでいった。

 慌てて止めようとする。


「待って、一人で行くなんて無茶よ。あいつは──」


「うるっせぇ。お前なんかに指図されるいわれ何かねぇ」


 私の言葉に、耳も傾けない。うん、彼らしい──。


 色々あったけど、みんなが協力してくれたという事実が、本当に嬉しい。

 不思議と、力がわいてきた。どんな壁でも、乗り越えられるような気がする。


 ラヴァルだけでは難しいらしく、苦戦一方だ。


「俺達も一緒に戦うぞ」



「そうだな。あんなどこの馬の骨とも知れないやつが懸命に戦ってるんだ。俺達だって戦わないわけにはいかねぇ」

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