第20話 新しい仲間。しかし?
ライナが仲間になった数日後、私は公務。ライナは勉強などをして過ごしていた。
「本当に、アイツが私を呼んでいるの?」
「はい。エンゲルス様よりお呼び出しです」
職務中、書類をあさっていた時に兵士の一人が話しかけてきた。
思わず私は言葉を失ってしまう。
エンゲルスに呼び出しを食らったのだ。
何のことだろうか、もしかして私、極寒の地、シベリナ送りが決定してしまったのだろうか。
そして死ぬまで木を数えるだけの仕事(極寒の地で死ぬまで強制労働)……。
(なんにせよいかないわけにはいかないわぁ秋乃。まだ悪いニュースと決まったわけじゃないしぃ)
確かに、センドラーの言う通りね。ここで命令を無視なんかしたら、それだけで敵対行為と認識されてしまうし。
(任せなさぁい、何かあったら私が変わってあげるわぁ)
「分かったわ。準備が終わったら、すぐに向かうわ」
そして私は仕事を中断。書物を机の中にしまうとすぐにエンゲルスのところに向かっていく。
階段を登り、赤絨毯の廊下を進み、エンゲルスの部屋の前へ。
ドアの前で、やはり緊張してしまう。どんな内容なのだろうか。
そしてドアをノック。
コンコン──。
「私です。エンゲルス様」
「センドラーか。入って、どうぞ」
そして私はセンドラーの部屋へ。
相変わらずの豪華な部屋。彼女の権威を示しているようだ。
「すまなかったなセンドラー、いきなり呼び出してしまって」
「いえいえ。大丈夫です」
窓際の高級感のある椅子に座っているエンゲルス。優雅に紅茶を飲み干した後、話しかけてくる。
そして隣にいるのは──。
「呼び出したのは他でもない。私の隣にいるミットという女の子。お前は知っているよな」
そう、ハイドのパーティーにいたピンク色の髪で猫耳の女の子。ミットだ。
「ええ、彼女は以前のクエストで会ったことがあります」
「そうだろう。だからセンドラーに頼んだんだ」
そしてエンゲルスは彼女と王国の事情について話し始めた。
彼女は冒険者として有用な力を持っていた。しかしパーティーのリーダーハイドが突然失踪して、仕事がなくなってしまった。
彼女は学力が全くなく、戦うこと以外まともな仕事に就けなくギルドに相談をしていた。
そして同じタイミングで政府が新しい兵士として使えそうなやつを募集していたので、ギルドから彼女を推薦してもらったという。
「そういうことだ。彼女は能力もあるし、悪人というわけではない。だから使用期間を設けて雇うことにしてみたのだよ。それでお願いなのだが、この子を君専用のボディーガードにしてもらってほしいんだ」
そ、そんなこと? 予想もしなかった言葉に私もセンドラーも驚いて唖然とする。
「エンゲルス様。要件ってそれだけですか? というかどうして私なのですか?」
「ああ、これが要件だ。理由は、ギルドから聞いたのだが、センドラーはこの子と面識があるらしいじゃないか。だから彼女も何かとやりやすいと思ってね。そうだろう、ミット」
「そ、そうだにゃ」
ミットは戸惑いながらもコクリと返事をする。
特に嫌そうといった感じはない。
「それにセンドラーも一人では身の危険だってあるだろう。だからそこの二人をボディーガードも兼ねてルームメイトとして一緒に住んでもらおうと思ったのだよ。宮殿の部屋も足りないことだしな」
(おそらくだけど、彼女を通して私達の動向を知ろうとしているんじゃないかしらぁ)
センドラーの言葉に、私は体をピクリとする。
なるほどね。これで、私も彼女の本音というのを理解した。今言っているのは恐らく建前なのだろう。
本音はおそらく、ルームメイトという名の監視役。
私が外で何をしているかは、秘密にはしている。できるだけ足はつかないようにしているし、それは気を付けているつもりだ。
掃除のメイドに秘密を盗まれないように書類の管理とかはすでにしっかりやっているしね。
しかし私が以前よりよく宮殿の外に出ているのは隠しようがない。
恐らくエンゲルスは私が何をしているのか探りを入れているのだろう。
とはいえ今の私達には断る理由がない。
変に断っても怪しまれるだけだし、ここは了承するしかない。
「了解したわエンゲルス様」
「そうか、ありがとう。この前は強く攻めるような事を言ってすまなかった。これからも、よろしくな」
……この言葉、ただのリップサービスなのか本当に言っているのか私にはわからない。
「仕事はいったん中断していい。まずは彼女を部屋へ案内しなさい」
そうはいっても仕事量が変わらない以上、どこかでしわ寄せが来るんだけどね。
まいいや、今はそこまで忙しいわけじゃないし。
そして私は彼女と一緒に自分の部屋へ戻る。
歩きながら私はミットと少しでも打ち解けようといろいろなことを話す。
「ミットちゃん。他の仲間達とは連絡を通じたりしているの?」
「していないニャ。いつもみんなバラバラに行動しているニャ」
しかしどこか元気がない。やさぐれているような印象すらある。何というか、私に対して全く信頼を向けていないというのがわかる。
そしてそんな会話をしながら私達は部屋へ到着。
ライナは机で静かに本を読んで勉強をしていたが、私達が部屋に入るとこっちに寄ってきた。
「センドラー様、どうしたんですか? ってミットまで。なんで? まさか、付き合っちゃうんですかぁぁっ~~???」
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