第19話 【超百合回】ライナの、本当の気持ち

 夕方。

 別れの時間となった。


「センドラー様。今日は、私とのデート本当にありがとうございます!」


「私こそ。あまりエスコート出来なくてごめんね」


「いえいえ、とても楽しかったです。一生の思い出です」



 ライナは顔を赤くして、にっこりと微笑みながら答える。すると、ライナは周囲をきょろきょろし始める。

 そして顔を赤くしたまま、表情をきりっと変え言い放つ。


「それで、私、センドラー様に頼みたいことがあるんです。私、センドラー様に仕えさせてください」


「私に、仕える??」


 予想もしなかった言葉に私もセンドラーも言葉を失ってしまう。


「はい。私、センドラー様と行動して感じたんです。私もセンドラー様みたいになりたいって。憧れなんです。私、今まで他人に救われた経験とかなくて。センドラー様が初めて私のために行動してくれて、あのダンジョンで、ピンチだった私を救ってくれて、それで本当の気持ちに気付いてしまったんです」


「本当の、気持ち?」


「はい。だから、一緒に行動したいです。絶対に迷惑は掛けさせません。だからお願いします」


 そう言ってライナはぺこりと頭を下げる。彼女の表情から、決して冗談で言っているわけではない。本気で言っているのがわかる



「その気持ちは本当に嬉しい。けれど今の私の現状、ちゃんと聞いてほしいんだ」


 当然リスクについてもちゃんと話した。今、私はエンゲルスから疎まれていて、どんな罠を仕掛けられるかわからないこと。


 他にいろいろ疑惑をかけられていること。しかしライナは表情を変えない。


「大丈夫です。私だって一人の冒険者です。周囲の気配くらいは察せますし、足は引っ張りません。だから、私はセンドラー様と一緒に行動したいです」




(悪くはない選択だわぁ秋乃。彼女自頭は悪くないようだし。馬鹿なことはしないと思うけどぉ……)


 センドラーも、納得してくれたようだ。どこか嫌そうだけど。

 そして私はため息をついて結論を出す。


「わかったわ。そこまで言うならそうしましょう。これから、大変な事ばかりだろうけど、よろしくね」


 そう言って私はすっと手を差し出す。ライナはフッと微笑を浮かべ私が手をぎゅっと握った。


「ありがとうございます。私、絶対にセンドラー様の役に立ちます。これから、こんな私ですけどよろしくお願いします」


 ということで私はライナと一緒に暮らすことになった。色々大変な事もあるけれど、二人で乗り越えていこう。




「それと最後に、伝えたいことがあるんです」


「伝えたいこと?」


 するとライナの顔が赤くなり、もじもじとした素振りになる。そして私から視線を外し、話を続ける。


「わたし、知ってしまったんです、自分の気持ちを──」


 ライナの目の瞳孔が大きく見開き、うっとりとしている。そして顔をほんのりと赤くしもじもじとした態度をしている


「あ、あの──、だから私、この手紙にセンドラー様への気持ちを込めました。拙いかもしれないですけど、私の気持ち、受け取ってください!」


 そしてライナはポケットから手紙を取り出し私に渡してくる。ハートマークの模様が入ったかわいらしい手紙だ。


 そして私はライナからもらった手紙をそっと開ける。



 すると──。







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「ず、ずいぶんドストレートな言葉だね……」


 想像もしなかった言葉に私は一歩引いてしまう。ライナと親しくしているという感覚はあったけれど、流石に告白されるなんて思ってもみなかった。


 うっとりとした表情。目にハートマークがついているような目つき。完全に私のことを好きになってくれているみたい。


 う、うれしい……。けれど困ったな──。今私、恋愛なんてしている暇なんてない。というか絶対センドラーが許さないだろうし。


(断りなさいよぉ──。貞操が壊れるわぁ、こんな淫獣)


 センドラーはギッとにらみつけながら指示を出す。

 でも、せっかくの好意なんだし断るのも悪いよね……。


 う~~ん。生まれてこの方告白される経験なんてなかったし、どう返せばいいんだろうか。


 取りあえず、ライナちゃんが落ち込むことがないようにやんわりとした物言いで言葉を返そう。


「ライナちゃん、その──。好きって言ってくれたことはとても嬉しいな。私、思わず驚いちゃった……」


「あ、ありがとうございます。センドラー様。じゃあ……」


「けれど、ライナちゃんの気持ちは受け取れないな。だって私、この世界のためにいろいろやらなきゃいけない。恋愛をする余裕がないんだよね──。それに、私達まだあって間もないじゃん。だからいきなり交際相手になるのはちょっとな──って」


 その言葉を言ったとたん、ライナちゃんはとたんにシュンとしてしまう。

 流石に落ち込んじゃったかな? う~~ん。ちょっとフォローしてあげなきゃ。


「だからさ、とりあえず友達から始めるってのはどうかな? ライナちゃん、短い間一緒にいたけど、いい子でもの周りがいいし、私も一緒にいても構わないと思っているわ」


(私は思っていないわぁ。いろいろと危ない目に合いそうだしぃ。頭が良くて礼儀正しいのは認めるけどぉ)


 その言葉にライナは少しだけ表情に明るさを取り戻す。そして──。


「そ、そうですよね。いきなり恋人というのはやりすぎでしたね。申し訳ありませんでした。ではセンドラー様の素敵な親友になれるように私頑張ります」


 ライナは私をじっと見る。うっとりとした目。完全に恋に落ちた女の子の目つきだ。



(まあ、貞操だけはしっかり守りましょう。もし彼女が襲い掛かってきたら、お楽しみになってしまう前に私が変わって三枚おろしにしてやるんだからぁ)


 センドラーもちょっと敵意持ちすぎなんじゃないかな……。ちょっと強引なところがあるかもしれないけど、私に好意を向けてくれるし、いい子だし、もっと仲良くしてあげようよ。



(わかったわかった。センドラーに心配は掛けさせないから。そこは安心して頂戴)


(信じてるわぁ。あの子の子守り役、よろしく頼むわよぉ)


 センドラーもなんとか納得してくれた。

 こうしてちょっと思いが強いけれど、私に好意を持ってくれるかわいい女の子ライナが仲間になってくれた。


「じゃあライナ、これからもよろしくね!」


「はい。このライナ、センドラー様のために精一杯頑張ります!」


 元気いっぱいの、ライナの返事。


 彼女が強い気持ちで私についていこうとしているのがわかる。



 これからも一緒に厳しいこととかもありそうだけど、頑張っていこうね。ライナ。





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