第17話 恋人つなぎ、そして怪しい場所へ
「手? いいよ」
するとライナは私の手をぎゅっと握ってきた。
それもただつなぐだけではなく、互いに指の間に相手の指を絡めあうつなぎ方、恋人つなぎだ。
指一本一本にライナの指が振れる感覚に思わずドキッとしてしまう。
ライナも、やはり意識してしまうのか顔を真っ赤にしてもじもじとしている。
そんなロマンチックなつなぎ方でしばらく歩いていると、とある店の前で立ち止まった。
「ここです、センドラー様」
「ここ、おしゃれなお店だね」
噂には聞いた事がある。
いろいろな雑貨を売っている店という感じだ。
「香水とか、見てみたいと思ったんです。まあ、生活のこともあるんで高いものとかは買えませんが──」
「そうだね、色々見てみようか」
そして私達は店の中に入る。
ドアを開けた瞬間チリンチリンとおしゃれな音がすると、店主のおばさんらしき人が「いらっしゃい」と気さくに話しかけてきた。
それから奥にある香水売り場へ。
香水たちは、どれも水晶の様な模様をしたガラス瓶に入っていてとてもおしゃれな外見をしている。
そんな香水たちを眺めながら私達はいろいろ会話をする。
「私は、柑橘系の香水かな。オレンジとか、レモンとか」
「へぇ~~、センドラー様に似合っていると思います。私は、ラベンダーとかが好きです。ただ、あまり買えないんですけどね……」
「実は今もバラ系の香水を髪に振りかけたんです。以前お金があった時にたまったお小遣いで買っておいた香水ですが。……まあ、今日使った分でなくなっちゃったんですけどね……。ちょっと嗅いでみますか?」
「ありがとう、ちょっと失礼するわね」
私は試しにライナの髪に顔を近づけクンクンとにおいをかぐ。
ライナは、目を大きく見開き、表情を失ってしまう。
「うん、本当だ、いい匂い。いいね~~」
「セ、センドラー様。そこまで喜んで……、私幸せすぎて死んじゃうかも~~」
お、大げさだな……。でも、いい香りだったのは本当だ。
「まあ、もう香水はないし、しばらくは買えないから我慢するしかないんですけどね」
ライナはどこかがっくりしている。ライナの家はあまり裕福とは言えない。これから先も欲しいものを我慢する生活が続くんだろう。
しょうがないな……。協力してくれたお礼に、一肌脱いであげよう。
「おばさん、その香水いくら? 私が払うから──」
「ま、待ってください。そんな事しなくて結構です。我慢しますから」
「気にしない気にしない。おばちゃん、その香水いくら?」
「銀貨十五枚だよ」
そして私はその代金を支払い、すぐに店の外へ。
店を出るとすぐにライナがあわあわとした態度で話しかけてきた。
「あ、ありがとうございますセンドラー様。このお金は、ほ、報酬が支払われたた必ず返させていただきます!」
「いいっていいって。そんな必要ないよ。それにもし返したいんだったら、これから頑張って、私の役に立つことで返してほしいな」
「分かりました。このご恩は必ず返させていただきます」
ライナは遠慮深くて、分別があるいい子だ。だったら無理に善意をそのままにするより、これから頑張って返してほしいって言った方が罪悪感を持たなくて済む。
事実、店を出た時よりも表情が晴れやかになっているしね。
そして私たちは再び商店街へ。
その後も、私たちは街でいろいろ楽しんだ。出店でパフェを買ったり(当然私はチョコミント味)、珍しい雑貨を見たり。
「じゃあ、今度は私のリクエスト。聞いてもらっていいかな?」
「は、はい。センドラー様のリクエストなら、どんな場所でも構いません」
ライナが
そして私達は移動を開始。人通りが多くてにぎやかな繁華街をそれて細い横道へ。
そこはさっきまでのにぎやかさとは打って変わり、ひっそりと物静かな雰囲気をしている。
裏通りのような場所。怪しげで独特な雰囲気
その中で一軒の出店の前で私は足を止めた。
「この店。いろいろ見てみようよ。前に噂で聞いてみて、行ってみたいと思っていたんだ──」
「へぇ~~。なんか面白そうですねぇ、いいですよ──」
ライナも興味津々な様子だ。ということで私達はその店へ。
見たこともない怪しげな商品を眺めていると、店主のおじさんが声をかけてくる。
「へいいらっしゃい。初めて見る顔だねお嬢ちゃん」
どこかみずほらしく、貧しそうな服装。ひげを蓄えていて怪しげな雰囲気をしている。
「うん。噂に聞いた店でね。どんなものを売っているかちょっと見て見たかったの」
そして私とライナは陳列されている
どれも見たことがない商品ばかりだ。
すると店主の人がとある粉状の薬草を紹介してきた。ピンク色の、手のひらサイズの薬草。
「嬢ちゃんや、この薬草なんかどうかい?」
「これは、そんな薬草なの?」
するとおじさんはにやりと笑みを浮かべ、答えた。
「これを使うとだな。本当のことしかしゃべれなくなるんだよ。口にしてから丸一日。嘘が言えなくなって、本能むき出しに本当のことしか話せなくなってしまう代物なんだよ」
その言葉を聞いて、私は冷や汗をかいて身震いしてしまう。
冗談じゃない。こんなものを使ったら人間関係が崩壊しそうだ。
プライベートでも使いたくないし、仕事関係で使ってみようものなら宮殿全体で大問題になりそうだ。
このことは内密に、そのままにしておこう。
そう考えていると、ライナが顔を赤くして店主の人に話しかけてくる。
「その薬草、一つだけください」
「あいよ。毎度あり」
そしてライナは代金と引き換えにその薬草を受け取った。
「ラ、ライナ。買っちゃったの?」
「はい。使ってみたいと思って。大丈夫です。迷惑になるような使い方はしませんから。安心してください」
ニッコリとライナが返事をする。
ライナちゃんがそう言うなら、いいか。人をだましたりする子じゃなさそうだし。
その時、後ろにいたセンドラーが話しかけてくる。
(秋乃。そこにある白い貝。噂には聞いた事があるわぁ。ちょっとなんなのか聞いてみて)
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