第15話 アルブレ村へ
それから数日かけて、私は遠征の準備を行う。
道具を整え、食料品を購入。
そして私達はディールスが言っていたアルブレ村の隠れ別荘の場所へと歩を進めていった。
街を離れ、山道を北へ半日ほど。
トラルスカイ王国との国境、厳密に決まっているわけではないが、ラストピアを東へ進み、最初の山を越えたあたりが国境となっている。
それを超え、人里が全くない場所。乾燥していて丈の短いステップ気候の土地。
そこからしばらく進むと、再び山がちの場所。そこに目的の場所はあった。
「センドラー様、あの村じゃないですか?」
一緒にいたライナが指さす。そこにあるのはこぢんまりとした村。
人気があまりない、ひっそりとした村。
猫耳やうさ耳を付けている亜人がほとんどだ。
家は私達の街より、どこか古びていて昔の物のように見える。
亜人たちの服装も、簡素なもので貧しさを感じた。
「懐かしいですぅ。ここ、私達の故郷なんですよね」
「そ、そうなの?」
「はい。貧しく、仕事もあんまりない村です。なので生活できるような場所を求めてラストピアへやってきたんです」
「じゃあ、この村の地理に詳しいの?」
「まあ、少しは──」
ということでその後はライナに村を案内してもらった。
そして村のはずれまで歩くと、その場所はあった。
「おそらく、この場所だと思われます」
そこにあったのは村のはずれ、山間部の中腹にある。人気が全くない場所。
森の茂みに隠れていて、周囲からは目視することができない、別荘のような外見をしている。
人に隠れた何かをするには、お似合いの場所だ。
そして私は茂みに隠れながら別荘を見る。
しかし別荘には誰もいない。あの言葉は嘘だったのだろうか。
(ちょっと張ってみましょうよぉ、今人がいないだけかもしれないし)
確かに、まだそうだと断定するには早いわね。
「とりあえず、交代で別荘を見張ってみるのはどう?」
「それがいいかもしれませんね」
ライナも首を縦に振る。それ以外方法がないことを知っているからだ。
けれど、これだってタフな戦いになりそうだ。
いつまで見張ればいいかわからない。ひょっとしたらしばらく現れないかもしれない。
そんな状況だからだ。
けれど、他にやり方がない以上頑張って粘るしかない。
そして私はセンドラーと変わりばんこに別荘を見張ることになった。
周囲から身を隠すため、近くにある草むらに隠れながらの見張りだ。
まずはライナが見張る番。私は、夜の時間の担当だ。
辛い作業になるけれど言い出しっぺの私が損をするのは仕方がない。
近くの宿に数日分の予約を入れた後、仮眠をとる。これから夜通し見張りをするため、体力を回復と寝だめをしておかないと。
そして睡眠をとる。
長旅の疲れからか、よく眠れた。
夜になり、食事をとる。そして差し入れをもって別荘に行き、ライナと交代。
「ライナちゃん。お疲れ~~。交代だよ、何かあった?」
「ありがとうございます。こっちは特に何もありませんでした」
う~~ん。やっぱり昼間だと動きはないか。これから粘っていくしかないね──。
「でも、大丈夫ですか、センドラー様。さすがに夜通しはつらいと思うのですが……」
「心配ありがとう。辛いけど、やらなきゃいけないんだもん。頑張るよ。あとライナちゃん。これ、お礼の差し入れね」
ライナに渡したのは露店で手に入れたチキンとドライフルーツ。
貧しい村のせいかラストピアと違い、質素な食べ物しか売っていない。
しかしライナはとっても喜んでいた。
「あ、ありがとうござます。センドラー様。その──、無理しないでくださいね」
「ありがとう。じゃあお休み、明日に備えてゆっくり休んでね」
そして私は茂みに隠れ、見張りを始めた。
空は、雲一つなく星がきれい。それに静かな村だからか人気が全くない。
そのため集中しているとはいっても眠くなってしまう。うとうと──。
すると後ろからセンドラーが話しかけてくる。
(もう、今誰かがやってきたらどうするのよぉ)
「ご、ごめん。つい──」
センドラーはため息をついてやれやれとあきれてしまう。
(しょうがないわね。そういう時は、互いに無理しないで声をかけてかわることにしましょう)
「あ、ありがとう。じゃあ、代わってもらうわ──」
そして私達は体を入れ替え、私は物陰で仮眠をとる。おやすみなさい──。
それから私達は変わりばんこに見張りを続け、やがて朝になる。
目をこすりながら別荘を見続けていると、誰かが後ろから肩をたたく。
突然の出来事に私はびっくりして声を出してしまった。
「誰ぇぇっってライナちゃん?」
「す、すいません。驚かすようなことしちゃって」
ライナが申し訳なさそうに頭を下げる。
「いいっていいって。ふぁ~~あ、じゃあ交代しましょ。こっちは特になかったわ。後よろしくね」
「はいセンドラー様。後は私にお任せして、ゆっくり休んで下さい!」
そして私は宿に戻って仮眠をとる。
しかし仮眠をとったとはいえ夜通し置き続けるというのはやはり疲れる。早くハイドたちが来てほしいものだ。
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