第13話 まずはライナと

 まず私は今の状況を説明。ハイドの失踪のことだ。けど、ライナも知っているらしい。



 次に聞いたのは他の仲間たちのことだ。突然の失踪、そしてそれについてわかる仲間がいるかどうかなのだが──。


「申し訳ありません。ハイドさん、突然失踪したのでよくわからないんです。普段どこにいるかもわからないですし……」


 そしてライナは自分の今の状況を説明し始めた。


「というか、クエストの報酬を先延ばしにされたので、報酬が支払われていないクエストも多いんですよ」


「つまり、報酬を受け取らないまま持ち逃げされたってことよね」


「……はい。ただでさえ家族を養っているのに、生活が苦しくて」


「そ、そうなんだ」


 確かにライナの家や家族の人の服装を見てもそれはわかる。

 ──何とか、力になってあげたいな。


 それから、他の仲間について何がわかっているかを聞いてみたのだが。


「う~~ん。それも申し訳ありません。パーティー仲間といってもそれぞれが自分のために戦っていて連携も悪くていがみ合っていましたし……。あっ、そういえば一人思い当たります 腰巾着みたいな人です。彼なら何か知っているかも」


 う~~ん、そうそう都合よくはいかないか



 それに、ちょっと嫌な言い方になっちゃうけど、あのダンジョンでわたしはライナを助けた。だから他の仲間よりも私に対する印象はいいはずだ。


「じゃあ最後にお願い! 私達に協力してハイド達の調査に協力してほしいの。報酬は弾むから!」


「センドラー様に、協力ですか?」


 その瞬間ライナの表情がぱっと明るくなった。これはチャンスかもしれない。そう考えさらに強く出る。


「うん。そうすればライナだって報酬を取り戻せるかもしれないし。危険な目には、合わせないから」


 私の強い押しに、ライナは顔をはっとさせて言葉を返した。


「はい。分かりました。協力させていただきます。私、センドラー様の力になりたいです」


「え、本当に? ありがとう!」


「ただ、一つだけお願いがあるのですがよろしいでしょうか」


 お願い。何だろう、無茶な要求じゃないといいけど──。

 するとライナは急に顔を赤くしてもじもじとし始めた。


 そしてぺこりと頭を下げて言い放つ。



「この任務が終わったら、私とデートをしてください!」



 予想もしなかった言葉に、私は固まってしまう。

 デートか、女の子同士の。


(ちょっと考えた方がいいわぁ秋乃ぉ。何か変な気がありそうよ、この子)


 センドラーは、少し疑っている。恐らくだが、デートという言葉で交際とかそういうものを想像しているのだろう。

 彼女は生まれてからずっと政争争いや内部抗争をしていたから、そこら辺の女の子の距離簡易疎いんだと思う。


 けど私にはわかる。だって前の世界じゃあ女の子同士でじゃれついたり、おふざけでチューしたりして遊んでいたから。たぶんそうやって一緒に遊びたいとか、そんなことを考えているのだろう。

 別に、変なことをするわけじゃないし、それくらいならいいか。


「いいわ。一緒にデートしましょう!」


「あ、ありがとうございます。私、センドラー様の力になります。一生懸命頑張ります!」


「じゃあ、これからはよろしくねっ!」


 ライナが、心の底から喜んでいるのがわかる。これから、一緒に頑張ろうね。

 センドラーは、どこか警戒している。


 まあ、彼女は王家から裏切られた手前、他人を信じ切れないところがあるのだろう。

 私も警戒するところはするし、無防備になるわけじゃない。


 これから協力して活動するうえで、信頼関係を作っていけばいい。


(大丈夫。私にはわかるって。ライナは信用できる子だって)


(まあ、あなたが手綱をつけるならいいわ)




 あの後も、ライナといろいろ話をした。

 内容はもちろんハイドの正体についてだ。


「別にわからなくてもいいわ。それなら、ハイドの事を一番知っているやつのこと、とかわかる?」


「あっ、それならわかります。そうか、もしかしたらその人に聞けばいいかもしれません」


 私はすぐにその人物の名前を記録。名前はディールス。もちろん居場所や、かつてどんな人物だったかも。


「ありがとうライナちゃん。助かったわ。これでハイドの居場所がわかるかもしれないわ」




 それから、数日後。下調べを終えた後、私達はその人物のところへと向かう。

 貧困層が住んでいるエリアを抜け、数十分ほど。


 ライナの生活のことなど、たわいもない話をしながら歩く。


 場所は比較的裕福な人たちが住んでいる、物静かなエリア。

 その中でも大きな家屋。そこそこ裕福に暮らしているのがわかる。


「確か、この場所です」


「ありがとう」


 家の前にたどり着くと、センドラーが私達の一歩前に出てきて話しかけてくる。


(もしかしたら私に変わった方がいいかもしれないわぁ)


(理由は?)



(まあ、答えは三つあるわ。一つ目、彼を見たことあるからわかるけど、正論を突き付けてもしらばっくれたり開き直る恐れがある。二つ目、そういう理屈が通らない相手には力でねじるセルのが一番。三つ目、私だって、たまには表に出てスカッとしたいわぁ。)


 なるほどねぇ。確かにどれだけ理屈が通らない相手ってのはいる。そういう人物なら、センドラーの方がいい対応ができると思う。


(わかったわ。その時は任せるわセンドラー)


 センドラーという心強い味方を得て、私はディールスの家の扉をノックする。


 コンコン。


「んだよ、こんな真昼間によ──」

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