第10話 私が、何したっていうのよ!
「まって、おかしいでしょ!」
「僕もおかしいと思っている。けれどそれが事実として独り歩きしてしまっているんだ。 それに、それだけじゃないんだ。本当はこれが話の本題だけど、そのハイドと隣国の『トラルスカイ王国』つながりが見つかった挙句、失踪してしまったんだ」
トラルスカイ王国いくつかの山々を挟んで隣にある国。リムランドとは資源や国境線を巡って争い中よ。ほとんど国交もないし断絶状態。そんな仲が悪い国とつながりがあるってわかったら、政府の他の人たちから何か言われるわ。
(それだけじゃないわぁ。貸し付けた資金が持ち逃げされて回収できないってことよぉ)
センドラーの言葉に私は戦慄する。それじゃあ、私がその責任を押し付けられるってこと?
(そうねぇ、というかそれが目的だったんじゃないのぉ? 私をはめようとする目的とか)
そうかもしれない。けれど今はそんな事を考えている場合じゃない。
「このままじゃセンドラー様が責任を追及されてしまう。何とかしないと──」
そんなことを考えていると、再び扉が開いてきて誰かが入ってくる。
長身で黒い髪、ツンツン頭で目つきが悪い男の人。
あれはたしか財務担当のハーゲンさん。眉間にしわが寄っていて、とても起こっている。
恐らく、貸し付けの件で私に問い詰めに来たのだろう。
「おいセンドラーどういうことだ。話は聞いたぞ!」
「お前、ハイドがトラルスカイ王国の回し者あることを知っていて貸し付けをしたんだってな。城内はこの噂でもちきりになっているぞ」
その話に私は大きく驚く。やはりすべて私のせいになっているのか。
それだけじゃない、回し者呼ばわり。
「噂でしょ。私に身に覚えなんかないわ」
「ウソをつくな。センドラー、場内で噂になっているぞ。お前があいつらをごり押しして国の正式な冒険者として契約したそうじゃないか。挙句に資金に困っていると聞いて資金を貸したとも聞いているぞ!」
「貸した金。回収できないのだが、どう責任取るつもりだ?」
責任、やっぱり私のせいにされているのね。けど責任はエンゲルス様がとるって言っていたはず。
「は? お前旧リムランドの人間だからって自分の罪をエンゲルス様に擦り付けるのかよ。そんなことだから王都から通報されたんだよ」
「擦り付ける? 違うわ、本当にエンゲルスが言っていたんだって。じゃなきゃあんな奴を王国と契約したりしないわよ」
「この後の通常議会でたっぷりと尋問をしてやるから覚悟しておけよ」
そしてハーゲンはこの場を去っていく。
まずいまずいまずい、尋問だって。このままじゃ私、この国の裏切り者扱いされちゃうよ──。
冤罪をかけられた。早く誤解を取らないと──。とりあえずエンゲルスのところに行こう。
「んで、どうする気ですかセンドラー様。このままじゃあなた、書記長の地位を解かれるどころか国外追放だってあり得る。何とか手を打たないと──」
そ、そんなこと言ったって、罪を擦り付けられるなんて想定していなかったし、どうすれば──。
(ったくもう……。まずはエンゲルスのところが妥当ね。話はそれからよ)
あたふたしている私とは対照的に冷静なセンドラー。そうだね、センドラーの言う通りだ。
「とりあえず、エンゲルスのところかな。どういう事かなって問い詰めないと──」
「そ、そうかい。では僕も行かせてもらうよ」
その方がいいのかな、心強いし──。
(いや、ダメだわ。もしものことがあった場合、ロンメルまで罪を疑われるわ。ここは私一人で行くべきよ。もちろん尋問の方もね。いざとなったら私が変わるから、ここはあなた一人で行きなさい)
センドラーは腕を組みながら私に話してくる。わかったわ、ここはセンドラーを信じるしかないわ。
「いや、ここは一人で行かせてほしいわ。あなたが一緒に行ったら、あなたまでハイドとかかわっているって思われちゃうわ。こんなところでいらない疑いをかけさせるわけにはいかないもの。ここは私に任せて」
ロンメルは残念そうな表情で言葉を返してきた。
「そうか、それもそうだね。すまない、じゃあ信じてるよ、センドラー様。あなたがいなくなったら、俺の後ろ盾が完全にいなくなってしまう。立場がなくなってしまう。だから信じてるよ」
ロンメルは残念ながらもどこか焦っている表情に見えた。彼のためにも絶対に無罪を勝ち取らなくちゃ。
「任せて、絶対に無罪を勝ち取ってくるから」
そう言って私はこの部屋を出ていく。絶対にロンメルも、センドラーも守ってみせる。
私は早足であいつのところへと向かっていく。
階段を登り、奥の部屋へ。
ノックをしてから帰ってくる言葉を待たずにドアを開ける。
そこには大きな部屋で優雅にワインを飲んでいるエンゲルスの姿があった。
私はずかずかと彼女の元へ、そして強く言い放つ。
「エンゲルス様、おかしいでしょ。どうして私がハイドを無理やり王国と契約させたり、貸し付けをしたことになっているんですか、訂正してください。全くのデタラメです!」
私が詰め寄ったのに対し、エンゲルスは余裕の表情でワインを机に置く。
全く気にも留めていないような態度だ。
「全く、見損なったぞセンドラー。あなたが、あんな奴と手を組んでいたとは。責任は、しっかりとってもらう」
(そして すぐに根回しをしたってことよぉ)
「おかしいでしょ。それをやったのはあなたのほうでしょう?
「記憶にないわ。あなた、そんな裏切り行為をするなんてあなた、見損ないました。適切な処罰を与えさせていただきます。続きはこの後の通常議会で。以上」
エンゲルスはそれが正論であるかのように 堂々とふるまっている。
その姿を見たのか、センドラーは何かひらめいたらしい。
(わかったわ。初めっからこのつもりだったのよ)
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