第7話 これが、私の力。すっげぇ

「あ……。私、カロライナといいます。ライナって呼んで下さい」


 ライナはほんのりと顔を赤くしてこっちを見ている。熱でもあるのかな?

 そして私はライナを下ろし、ゴブリンとの戦闘に参加。


 すぐに退治に成功。するとハイドがライナの頭を軽く殴りつける。



「本当に使えねぇなあこのクズは」


「す、すいませんでした」


 ──本当に嫌なやつね。

 取りあえず先に進もう。






 私達は周囲の警戒を怠らないまま道の先へ。



 途中、敵に出くわすことはなかった。しばらく進むと道の先が光っているのが見えた。

 光の先へたどり着くと、そこは大きな部屋。




 明るくて広い部屋。壁には女神のような姿をした女性の壁画や神秘的な幾何学模様の絵。

 さらに見たこともない文字が描かれている。


 そして──。


 グォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


 この辺り一帯に届く大きな叫び声。

 部屋の中心に、その獣はいた。


 白く光っているからだ。オオカミのような外見をしているが、軽く人間ほどの大きさがあり、オオカミにしてはかなり大きい。

 鋭い目でこっちをにらみつけている。


 フェンリルというやつだ。


「みんな、こいつを倒して宝を手に入れるわよ。戦う準備をして!」


 私の掛け声と同時に冒険者たちは戦闘準備を始める。前衛組は前に出て剣や槍などを握る。


 後衛の冒険者たちは後方に移動し攻撃を発射。

 しかしフェンリルはかなりすばしっこくその攻撃をかわしてこっちに向かってくる。


「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォ──!」



 私はすぐに身を投げ、攻撃をかわした。フェンリルは後ろへ。

 っていうか私センドラーの魔法、使えるのかな……。


(多分違うと思うわぁ、自分の使える魔法を考えなさい。そうすれば心の底からそれがわいてくると思うわ)



 なるほど、私の術式──ってこれか。


 なんだか脳裏に言葉や文章が浮かんでくる。文脈や私の勘から判断する。これこそが私が使える術式ではないかと判断。




(ありがとう、助かったわ。私、生まれつき攻撃系の術式が使えないのよ。防御系は豊富なんだけれど──)


 確かそうだった。センドラーの時は、ほとんど守りの術式ばかりだったな……。

 私の術式は、口上から予想するに攻撃系の術式ばかり、つまり私と逆ってことだ。

 だから二人の短所は補完できる。けれどうまく連携をとってうまく入れ替わらないとピンチを招きそうだ。



(ありがとう、センドラー)


(どういてましてぇ)



(ありがとう、センドラー)


(どういてましてぇ)


 まずは背後のミットとライナのところへ。真っ先に狙われたからだ。


 何度か攻撃を受けて傷だらけだが、命に別状はなさそうだ。



 しかしハイドは彼女を気にも留めない。同じパーティー仲間だというのに──。



 それから私達は、フェンリルたちをばっさばっさとなぎ倒す。私は魔物との戦いは初めてで、要領とかはよくわからないけれど、向かってくる敵に対して力任せの剣をふるう。


 フェンリルたちはその攻撃に一刀両断にされる。

 そして最後に。


「これでとどめよ。くらいなさい!」



   集いし光の輝きが、希望の光を照らし出す。

    

      ──サンライズ・ソニック─



 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン──!!


 強大な魔力が伴った閃光がフェンリルたちに襲い掛かる。

 その攻撃によって周囲のフェンリルたちを一掃。


 取りあえずハイドの仲間たちは救えた。



「じゃあみんな、こいつらを一掃するわよ!」


 他の冒険者の叫びとともに、私達は一斉攻撃に入る。


 そして強敵ではあったが連携して何とか倒す。


「何とか片付いたね」


「そうね、みんなありがとう」


 息が上がる中、健闘を称えあう私たち、するとハイドが叫ぶ。


「待て、喜ぶには早すぎるだろ馬鹿ども。財宝だ、どこにある!」


 そうだった、ここへ行く目的は眠っている財宝だった。すると斧を持ったハイドの仲間が奥への道を指さす。


「おい、あそこに道があるぞ、あの奥にあるんじゃねぇのか?」


 確かにここにはないし、ちょっと探してみましょうか。

 そして私達は道の奥へと進んでいく。そして──。


「おおっ、お宝じゃねぇか。あってよかったぜ」


 先頭を早足で歩いていたが道の先で見つけた。


 その言葉通り、その先には金銀などの財宝がたんまりとあった。

 冒険者達はその光景を見て表情を明るくする。


「それなりの金にはなりそうね」


 冒険者の一人が明るい表情でそう言うとハイドがイラついたような表情で言葉を返し始めた。


「俺たちが一番敵と戦っているんだ。だったら俺たちに財宝を多くよこすのが筋ってもんんだろうが!」


 ハイドはあろうことか自分たちに分け前を多くよこす様に要求してきたのだ。

 その言葉に他の冒険者たちはオロオロし始める。まずい、このままだとこの域委に押されて報酬を独り占めされてしまう。


「ふざけんじゃねぇ、不愉快だ、この俺のおかげでせっかく手に入れた宝を横取りしようなんてよ。欲しかったら頭を下げて謝罪しろよ。そうすれば少しくらいは分けてやってもいいぜ」


 この世界では実力がある奴が偉い。だからここで一番の高ランクの彼には逆らえないのだろう。

 平謝りする冒険者。ちょっとやりすぎよ。ここは、私が一発言ってやらなきゃ。


 私はハイドにずかずかと歩み寄り抗議をした。



「ちょっと。いくら何でもひどすぎるわ。確かにあなたたちは先陣を切って戦っていた。けれどみんなの支援が無かったらもっとダメージを負っていたはずよ。だから宝の独占なんてダメよ!」


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