第6話 ダンジョンで、初仕事。けれど──
数日後、私たちはラスト=ピアを離れて目的のダンジョンへ。
自分たちのせいで予定を遅らせるのは嫌なので早めに到着し、周囲を見回す。
道の先には明かりがなく、真っ暗な洞窟。あれが私たちが探検するダンジョン。
その他の周辺は一面ジャングル、人気は全くない。
(このあたり、最近になってようやく人が立ち入るようになった土地らしいわぁ。コポルトとか獣たちが多いらしくて人々が避けていた森みたいねぇ)
センドラーの言葉、私も聞いたことがある。つまり何があるかわからない場所ってことね。
そんな風に考えているとほかの冒険者たちもやってくる。
「センドラー様、本日はよろしくお願いいたします」
「そんなかしこまらないで、こっちもよろしくね」
しめて五、六人。そして集合時間になるが──。
(もう目的の時間よぉ)
あとはハイドのパーティーだけなのだが、当の彼らがまったくやってこない。
私たちが一緒だということを忘れているのではないだろうか。
「ハイドの奴、全然来ないじゃないの」
ほかの冒険者もいら立っているのがわかる。
そして約束の時間から三十分ほど──。
「ハイド、あんた遅すぎよ!」
「あーごめんごめん」
ようやくハイドたちがやってくる。
遅れたこと、態度の悪さに、ほかの冒険者がやってきたハイドのパーティーに檄を飛ばす。
遅刻した当の本人はをポリポリとかき、あくびをしている。
「しょうがねぇだろ。このクソ野郎がのろのろ歩くから悪いんだよ!」
ガシッ!
「痛いニャ」
そして隣にいる猫耳をしたピンクの髪の女の子を蹴っ飛ばす。さすがに似ておけなくなり、私が前に出る。
試しに女の子が持っている荷物を持ってみたのだが、結構重い。これを一人で歩いてここまで持ってくるというのは酷だ。隣にいた黒髪のツインテールの女の子もずっと荷物を背負っていたせいか疲れ切っているのがわかる。
「ちょっと、ひどいじゃないのよ。そんなに重い荷物なら、あんたもいっしょに持てばいいじゃないのよ」
見る限り彼女とほかの仲間たちは荷物を背負っているがハイドだけは手ぶら状態だ。
しかし彼はなんの悪びれもなく言葉を返す。
「ああん? 俺はダンジョンで戦うという役割があるんだよ。こいつ、戦闘ではまるで使えないからこのくらい当然だろ。仲間として雇っているだけありがたいと思ってほしいね」
その言葉に私はかっとなる。
女の子は、うつむいたまま黙りこくっている。
「もうスケジュールも押しているし、さっさと行きましょう」
仕方ない。遅れている分早くダンジョンへ行かなきゃいけないし、早く行こう。
そして私たちはダンジョンへ。
真っ暗なダンジョン。前がよく見えない。するとハイドが叫ぶ。
「おいお前、真っ暗だから明かりを照らせ」
「わ、分かったニャ」
そして女の子は左手を前に出すと──。
(明るくなったわぁ)
ぱっとこの場が明るくなり、洞窟内が光に照らされる。
天井にいたコウモリが羽を羽ばたいて逃げる。
「ありがとうあなた、名前は?」
「私は、ミットだニャ」
ハイドが彼女の頭を鷲つかみにして言い放つ。
「大したことねぇよ、こいつの魔法なんて。じゃあ行くぞ」
ミットは沈んだ表情をしている。本当にこいつ、周囲への配慮ができないのね。
それから私たちはダンジョンを進んでいく。時折闇から獣たちが襲ってくるが、すぐに他の冒険者が退治。
さらにしばらく歩いていると、背後でセンドラーが何かに気付いたらしい。
(秋乃、背後からゴブリンが奇襲をかけてこようとしているわ)
(わかったわ、伝えればいいんでしょ)
ありがとうセンドラー。助かった。
「みんな、背後からゴブリンが襲ってくるわ、すぐに戦う準備をして!」
その言葉に冒険者たちはすぐに自身の武器を握り戦闘態勢に入る。
そしてそれと同時に背後から岩陰からゴブリンたちが十匹ほど出て来る。隠れていたのがばれたからなのか、若干動揺しているのがわかる。
そして私も手に持っている武器を強く握りゴブリンたちと対峙。
というか私、どんな魔法を使えるのか全然わからないぞ。
(センドラー、ごめん。私魔法の使い方わからないわ)
その言葉にセンドラーも焦りを見せる。
(そ、そう言えば使う機会も教える機会もなかったわ)
今までこの世界に来てから、新しいこの国での職務やあいさつ回りにかかりっきりだった。
なので魔法の使い方は後回しになっていたのだ。
するとセンドラーはやれやれとため息をつきながら言葉を返して来る。
(仕方ないわね、今回だけ私が戦うわ。だから一回変わりなさい)
(ご、ごめん。よろしくね)
そしてセンドラーが私の背中をポンと押す。その瞬間私の魂は体の外に出る。
センドラーは周囲の冒険者の前に障壁を張ったり、加護を与えて強化したりして援護していく。
ゴブリンたちは一人一人の戦闘力はそこまでではない。高さも腰くらいで強そうには見えない。
しかし彼らは小柄で機動力がある。おまけに連携して攻撃してくるから結構厄介だ。
それでも何とか私達はゴブリンたちを次々と撃破していく。
ゴブリンが時折奇襲をかけてくる。すると黒いツインテールの女の子が攻撃を受けきれず吹き飛ばされてしまう。
「まてぇぇぇい。その子に手を出すな!」
そして吹き飛ばされたその子をお姫様抱っこの形で抱きかかえた。
「大丈夫。あなた、名前は?」
「あ……。私、カロライナといいます。ライナって呼んで下さい」
ライナはほんのりと顔を赤くしてこっちを見ている。熱でもあるのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます