第3話 フィルガンの王子とキュルシェンの王女

「うっはさみぃ…!」


カイロも買ってマフラーやら手袋も全身装備なんだけどまだ寒い…でもすぐ目の前にめっちゃ大きい石壁…城壁っていうのか?が見える…!


「そうですか?そこまで寒くはないですが…」


してサクラはなぜこんなにも寒さに強いんだ…


「…まあ、フィルガンには街の至る所に暖を取れる場所があるので…まずはそこで休むとするのです!」


「てかよく森の中に城とか建てられるよな…」





30分くらい…


城壁のところにある大門らしきところに着いたぞ…!めっちゃツンドラ気候。

てか門番の人が重装備でわからないけど尻尾が出てる…これが人狼か…


「冒険者ですか?」


「そうなのです」


「では通行証を…」


え?通行証?


「これでお願いするのです」


「…はい。大丈夫です。そちらの方は?」


「…あぁ、フォリンは…あのカードを見せれば大丈夫だと思うのです」


「お、おっけ?」


そんなんでいいんだ…


「…これで大丈夫ですか?」


「…なるほど、バイヤーの方でしたか。発行日からして、ここに来たばかりですね?」


「あ、はい」


「わかりました。では…我々フィルガン族一同、心からあなたをおもてなしさせていただきます」


「は、はぁ…」


すっごいこういうのに慣れてないから困る…てか人狼ってすっごい怖いイメージがあったんだけど世界によって違うんだなぁ…


「隣国のキュルシェンと未だに争ってる物騒な国ですが、よろしくお願いします。この国を案内する必要は?」


「あー…サクラ、この国についてわかるか?」


「ある程度なら!」


「よし!あ、大丈夫です」


「わかりました。では、今日は我が国の王子と隣国の王女が歩き回っている日ですが、気にせずにこの国を楽しんでください」


あ、そんなイベントあるんだね…



「ねぇサクラ」


「ん、どうしたのです?」


「暖を取りたいんだけど」


「そうですね…あそこの焚き火で暖を取るとするのです!」


あ、焚き火なんだ…


「あぁ…暖かい…」


「落ち着いたら出発するのです…」


「…さて、少しでも勉強しておこう」


この世界について少しでも知っておかないとね!


「…なるほど…革命王と呼ばれていた人が魔帝王の起こした大厄災を止めて、光の革命王と呼ばれたのか…」


めっちゃゲームの物語っぽいけどそこには触れずにいよう。


「…で、その光の革命王を祀った遺跡は現在、海底にあると…」


「光の革命王が止めた大厄災は今でも魔族が引き起こそうとしてるのです」


「は?」


てか大厄災ってなんだよ…


「ねぇサクラ、大厄災って?」


「現在の名称で言われている、最悪の魔法の「終焉魔法 メテオ」という魔法を使ってこの地を無くそうとした魔族の王…まあ、魔王が使った魔法なのです」


やっぱ魔王いたわ。


「その被害が一番大きい地に大陸王都のアズガルが建てられたのです」


「へぇ…」


「お、おい!」


と、どこからか大声が聞こえたんだよね?聴きすましてみると?


「王子様だぞ!」


「なにっ!?」


すぐそばで暖をとっていた人狼さんもすぐに立って走っていったよ。…まあそうだもんなぁ。一国を治める王の子供だもの。

…一回見ておこうかな


「…サクラ、俺も見てくる」


「私も行くのです!」


走っていこう!


…あっらー…すげぇ密ってる。


「王子様!今日もスッキリしていますね!」

「質問に答えていただきたいです!」

「関係は深まっていますか?!」


さすがは王子様。すっごい人だかりができるくらい人気者だよ!


「うるさい!」


でも…意外な一言が飛んできた。うるさいの一言。姿もなにも見えないけど…


「静かにしていてくれ…!」


その言葉が聞こえると人狼のみんなはどんどん離れていくよ。


「「…!」」


…やべぇ、目があっちゃったよ。つい俺も驚いちゃったよ…


「ね、ねぇ!どこ行くの!?」


「まあ待ってろ…」


めっちゃ怖い顔でこっちに近づいてくるんだけど!?てか近づいてくる王子の近くにオドオドしている狐がいるんだけど!?どう見ても王女様だろ!?さっき言ってた!


「…おい、そこのお前ら」


「は、はい!?」


「お前ら…どう考えても…てか、尻尾がないからな…旅人だな?通行証は持ってるのか?」


「は、はい!これなのです!」


「…サクラか…出身は?」


「隣のソルディの村…なのです…!」


「…ふん、なるほど…お前は?」


「これです…」


「…はっ、やはりな…」


「何々?どうしたの?」


「こいつ、バイヤーだ」


「バイヤー!?」


めっちゃ怖い目で見てくる王子様とは違ってめっちゃ目をキラキラさせながら走って王女様が近づいてくるんだけど!?


「はじめまして!私、隣の黄狐国キュルシェンの王女、「ヒィル・キュルシェン」です!あなたと出会えたことを嬉しく思います!」


「お前が自己紹介したなら俺も自己紹介しないといけないな。この国の王子、「クォルク・フィルガン」だ。以後、よろしく頼む」


「俺は…けんっ、違う…フォリンです」


「フォリンか。いつも能力を持った人は変わった名前だが、お前は違うみたいだな」


「あ、いや…これ偽名です」


「偽名か」


「本当の名前は堀崎健二で、通販をするときの名前をこの世界で使ってるんです」


「なるほど…ちなみにそこのサクラとやらも異世界人か?」


「いえ、私は…違います」


「なるほどなぁ…まあ、ここじゃあ話しにくい。場所を変えよう。いいな?ヒィル」


「もちろん!」


「よし。イチオシのカフェに行こう。…ヒィル。この子…アレだよな…」


「だよね…!」


カフェもあるんだ…てか何を話してるんだ?



「…さて、俺たちの質問に一つ答えたらお前らも一つ、質問もいいぞ」


「そんな!恐縮な…」


「まあ、他の国の人からは「雰囲気からして怖い」と言われているがこう見えても器が大きいからな…自分で言うのもアレなんだが」


「じゃあじゃあ!私から質問!フォリンってさー、なにが好きなの?」


「通販と…料理だな」


俺、料理大好きなんだよなぁ…


「へぇ!料理かぁ…!あ、質問どうぞ!」


「じゃあ…2人の関係ってなんですか?」


「つがいになりかけてる…まあ、付き合ってる感じだね!だよ…ね?」


「あぁ。事情があってこの関係になってるが、好きな気持ちがあることは変わらない」


「だよね!よかったぁ…」


別種族なのに?


「じゃあ次は俺だな。お前らの関係はなんだ?」


「俺たちはただ村であっただけの関係です」


「旅に出たことがない私のことを連れ出してくれた恩人でもあるのです!今の目標は私の夢がある場所でもあるグラデントに向かっているのです!」


「なるほどな…じゃあ、2個目の質問をくれ」


「なんでお二人は別の種族なのに付き合ってるのですか?」


それ俺も思った疑問。


「…言ったはずだ。事情があってこの関係になっている、とな」


「あ、ごめんなさい…」


「別に謝ることではない。次は俺たち、だな。お前たちの夢はなんだ?」


「俺は…とりあえずこの世界を旅してこの世界で生きる価値のあるものを見つけることですかね」


「私はグラデント1の魔工具研究者になることなのです!」


「ほう?いいことを聞いたな!サクラ…だったか?俺の部屋に読み古した魔工具研究論本があるが…欲しいか?」


「!?…欲しいですが…王子様の物をもらうなんて…」


「俺が目指そうと思っていた夢を捨ててこの国の王になることを決めた俺にとってはいらないものだ…それに、俺にはヒィルがいれば他にはなにもいらない」


「わー!久しぶりにクォルクの口からその言葉が出たー!」


「…悪いか…」


「悪くないよー!」


…リア充だ…


「…とまあ、後で城によって…よし。この手紙を城の兵に渡してくれ。「これをクォルクの執事に読ませてほしい」とな。俺たちはあいにくデート中なんだ」


「わかりました!ありがとうございます!」


めっちゃ嬉しそうだよ。


「うーん…せっかくだったらキュルシェンの料理人になってほしかったんだけどなぁ…」


「ご遠慮しておきます」


料理が好きなだけで別に料理の腕前がいいってわけでもないし…


「…さて、この辺でお開きにしたいが…いいか?」


「はい!」


「よし…おっとそうだ…さっきのあの手紙を」


「?わかりました」


なにがあるかと思えば判子を押したぞ?


「この判子は俺が書いたことの証になる。俺の執事は注意深いからな…前に俺からの手紙だと渡してきたやつがいるが、俺の執事は嘘だと一瞬で見抜いたからな。今後そういうことがないようにと俺が出す手紙には判子を押すことにした。ちなみにだがその手紙を送ってきた差出人は当然俺が投獄した」


「なるほど…ありがとうございます!」


「じゃあ俺たちはそろそろ行くからな。いい時間だった。感謝する」


「また会うことがあったら次はキュルシェン城を案内したいなぁ!」


「ありがとうございました!」


「またねー!」


…元気な女王様、ヒィル様と冷静な王子様、クォルク様か…ギャップありすぎだろ…


「…さて…私たちも行くとしますか…」


「だなぁ…」


てかもらっちゃってもいいのかよ…でも大丈夫。手紙を書いていたところを見ていたからね、怪しいことは書いてなかった。



城前…


「なんだお前たちは!」


まあ当然だろうね。


「王子様の執事さんにこの手紙を渡すために来ました」


「その判子…本物か…すみませんでした」


てか友好的っていってもセキュリティはいいみたいだな…


「エントランスにいる兵士に事情を説明して呼べば大丈夫です」


「ありがとうございます」


でもちゃんと礼儀正しくはするんだな…



すっげぇ豪華なエントランスだな…the 洋って感じ…


「あのー」


「はい、どうされました?」


「この手紙を王子様の執事さんに渡す用事で来たんですけど…」


「クォルク様の執事ですね。少々お待ちを…」


走って行ったよ。てか人狼だからか…さすがに四足歩行はしないか。


「…ワクワクするのです…!クォルク様が読み古した魔工具研究論本…!」


「そんなにすごいものなの?」


「もちろんなのです!魔工具研究論本は基本魔法学校にしか置かれないものですが、それがまさか私個人のものになるなんて…!」


「…よくわかんないなぁ…」


そう喋くってると奥からめっちゃ服が整ってる人がきたよ。


「お待たせしました。私がクォルク様の執事、「ハグラル・サグファル」と申します。以後お見知り置きを。私に王子からの手紙を預かったと聞きましたが」


「あ、これです。もらったらすぐ読め、とのことです」


「ありがとうございます。えっと……なるほど。あの研究論本は…あの棚に!少々お待ちを!」


すげー速度で走っていったよ…


「これです…!あと、これを」


なんか紙をくれたよ。なにこれ


「はい?」


「あれ?手紙を見る限り、これもあげるようにと書いてありましたが…あぁ、アレですか」


「アレって?」


「王子は未来を見る目を持っていますから…多分この子の未来を読んだんでしょう。それにヒィル様は…大きな魔力を察知することができるんです。サクラさん、ですね?」


「は、はい!」


「王子から、魔法学校シャルガンの推薦状ですよ?」


「え!?」


「手紙には『あと、その子の未来は面白いものになる。ヒィルの魔力眼も大きく疼いていると言っていた。魔法学校シャルガンへの推薦状を俺の名義で渡してやれ』と書いてありましたよ?」


「ほ、本当にいいんですか?」


「あ、でも条件が書いてあります。『俺が奴らにケリをつけて王になった時にその推薦状で俺のところに来てから入学しろ』ということです。まあ普通の人が思う奴らとクォルク様が思う奴らは少し違うから勘違いしがちですが…」


ここの国の王子様…器大きすぎだろ…!?

てか奴らって誰?普通の人が思う奴らは…狐か?いや、狐の王女を愛してるんだからそんなわけない…じゃあ誰だ?


「あ、ありがとうございます!」


「では、要件は終わりですね。お気をつけて」


「ありがとうございました!」


…サクラ…すごいもんもらったな…

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