弐「猫の舌で以て、璃々栖の体を弄る」
》同日
「……何じゃ、そなた」
麗しき主・
瞬く間に
「
「何ぞ、
おもむろにフグリを引っ掴まれる。
「に"ゃ"に"ゃ"ッ!?」
「――雄か」
初手フグリとは
「
「
「あはァっ、善ぅ喋る善ぅ喋る」
猫に話し掛けて、まともな返答など返ってくるはずがあるまいに。
「じゃが困ったのぅ……腕が一本しかないこの身では、あ奴がおらねば着付けもままならぬと云うのに」
大事な旦那を
「ひゃっ!? 何じゃそなた、乳か、乳なぞ出ぬぞ
ざらついた舌で
「ひゃぁぁああんッ!」
それにしても、猫の体と云うのは凄い。何が凄いって、嗅覚が凄い。璃々栖の甘い香りが鼻腔をくすぐり、皆無は頭がクラクラしてくる。
「あんっ、そこは駄目ぇ……ん? んんん? この、的確に予の弱点を責めてくる感じ――まさかッ!?」
乳の下を責めている時に、ついに璃々栖が気付いた。
乳の下と云えば忘れもしない明治三十六年四月二日、璃々栖と出逢ったその次の日に、両腕の無い彼女を風呂に入れ、無理矢理手で洗わせられた場所である。初対面の男児に自分の性感帯を責めさせ喜ぶとは、実に悪魔的な行いであった。
「あっはっはっ! そなた、皆無か!」
その璃々栖が、こちらの首根っこを掴んで、己が猫の身を眼前に引きずり出した。
「
「何とまァ。どうした、元に戻れぬのか? 【
主の赤い瞳が、一瞬だけ眩く輝く。皆無の状態を把握したらしい彼女が、
「ふむ。精神の方は安定しておるようじゃが……何じゃろうな、これは。呪いの
全く動揺した様子の無い璃々栖。
親を殺され、國を奪われ、腕を切り落とされてもなお笑って前を向き続けられるほどの巨大な精神力を持つこの王が、今さら亭主が猫になったくらいでは、驚くにも値しないらしい。
「まァ、そのうちに何とかなるであろう。今までだってそうやって来たのだから。洋服店に行こう。くっくっ……猫用の
(ね、猫のまま
数日後には、
(それに、猫のままやったら絶ぇッ対ダディに
一方、璃々栖の『最後の近衛』こと悪魔君主
何しろ
一國の王が他國に足を踏み入れると云うのに、護衛が皆無一人である時点で、推して知るべしである。
「しかし困った」
麗しの主が唸る。
「どうやって着替えようか?」
「
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引き続きご覧下さり、誠に有難うございます。ねこはいます。
本作は
過度な期待はなさらず、流し読みして頂ければ幸甚の極みにございます。ねこですよろしくおねがいします。
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