終幕「全テヲ語ル正覚」
終幕之壱「狐ニ化カサレタヤフナ話」
》同日
「以上が、ことの
「なっ、なっ……」顔を真っ赤にした
「本当に、本当に申し訳ございませんでした」手乗り狐の姿となった父が、会議机の上で平身低頭する。「閣下の金言を無視しておりましたこと、誠に汗顔の至りです。
「まぁまぁ。阿ノ玖多羅少将閣下は記憶を喰われておったのじゃ」璃々栖が仲裁に入る。「そも、全ての元凶は
「ぐっ……レディ・璃々栖がそう仰るのであれば」
「それで、ダディ」皆無は手乗り狐の父の後頭部をぐりぐりと押しながら、「す、べ、て、話して
何しろ、分からないことが多すぎる。なるほど己は璃々栖の
「痛いって皆無! ああ、忘れてしまったことも多いけれど……
「あー失礼、
「はい?」
「東京へ
「へ? 閣下も一緒にお聞きになるんですか?」
「あのですなぁ……」拾月中将が盛大な溜息を吐く。「陸軍代表……いや、日本国代表……いや、人間代表として、話を聞く者が必要でしょう?」
「…………」
†
「まず最初に、お前に謝らなければならないんだ、皆無。私はお前の父では無い。それどころか、本当のお前の父親を殺した――
「
「どこから話せば良いかな? 十三年前? 百年前? それとも、もっと昔?」
「最初から、がええかな」
「ふぅむ……では、むか~しむかし、時は紀元前十一世紀――」
「
†
昔々、あるところに、巨大な妖力を持つ
狐はこの国でも好き勝手にしていたが、ある日、あっさりと捕まってしまった。そして、狐退治に一役買った修験者に使役される身となった。その修験者は、後に『阿ノ玖多羅』を名乗った。
†
「待った待った!」皆無は父の話を遮る。「有名な九尾狐の話と、阿ノ玖多羅家の開祖の話は知っとるけど、それとダディにどう関係が……ま、まさか」
「うん。私だ」
「……え」
「私が、九尾狐だ」
「「えぇぇえええッ!?」」皆無と拾月中将の声が重なる。
「九尾狐は百数十年前から冬眠中やなかった!?」
「そうだね。百数十年前と云うと、私が人の姿を取るようになった頃だ」
「――…いやいやいや、そもそも妲己とか玉藻前って女やんな!?」
「私にはそもそも性別が無い。女の姿の方が便利ならば女になるし、男の姿の方が便利なら男になる。その時の気分次第さ。それで、阿ノ玖多羅家が提示してきた条件が極上の女達だったものだから男の姿を取り、長くその姿で居続けたが為に、今では心もすっかり男だね」
「条件?」
「私は確かに阿ノ玖多羅の僧に調伏されたのだけれど……時間とともに回復してゆく私を力だけで押さえつけられるほど、その修験者は強くなかった。だから、その僧は私に『極上の食事』を提示し、私は対価として阿ノ玖多羅家に力を貸すことにしたんだ」
「しょ、食事……?」
「私の歴代のお嫁さん達だ。阿ノ玖多羅家が方々から搔き集め、育てた娘達の中から、特に見目麗しく霊能力に優れた娘を娶り、夜は彼女らの使い魔として朝廷に仇なす妖魔を祓い、昼には彼女らの肉体を楽しんだ。子供はついぞ出来なかった……やはり、狐と人の間で子は成せないのだろう。そして、
「け、計算が合わんくない?」
「しょっちゅう冬眠してたからね」
百数十年間眠りっぱなし、という阿ノ玖多羅家の発表は、何も作り話ではないらしい。
「それにしても、人を喰うなんて……」
「私には人の心というものが無かったからね。それに当の嫁達自身が皆、本当に、喜んで私に喰われた。
そして、百八人目の嫁。これが、いささか
気が付けば――女の晩年の頃には、今のような姿と心になっていた。
とまぁ、これが百数十年より以前のお話」父が朗らかに云った。「続いて、
璃々栖と
「そうじゃ!」璃々栖が云う。「百数十年前と云うと、折りしも
「その通りです、レディ・璃々栖」手乗り狐が頷く。「
「【
「その通りです、
「実際、先王様が私の母――先代
「そうですね。そして二つ目が――」父が、急に皆無の方を向く。「お前だ、皆無」
「……俺?」
「
「はい」母が頷く。「改めて、名乗らせてもらいますね。私の名前は
†
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