エピローグ

 国王陛下から言葉をもらった後。

 クリフォード王子が俺達の元へとやってきた。


「ノア、クラウディア、ティリア。素晴らしい活躍だったね」

「俺達はただ出来ることをしたまでです」

「そうだね。そしてそれが、僕にとっての追い風となった。心から感謝するよ」


 あの後、エンド王子は国王陛下からキツい叱責をされた。遠回しな言い方ではあったが、彼が王太子に選ばれることはないだろう。そういう内容の叱責だった。


「お祝いをしたいところだけど、今日はこれから王城でパーティーがあるんだ。キミ達への感謝と御礼は後日としよう。なにか欲しいものを考えておくといい」


 クリフォード王子はそう言って立ち去っていく。

 ちなみに、意識を失ったエンド王子も運ばれていった。パーティーがあるとのことだが、あのままパーティー会場に運ばれていくのだろうか?

 完全に、公開処刑な気がする。


 そんな風に考えながら見送っていると、メリッサがエンド王子の後を追い掛けていく。落ち込んだ彼に付け込んで、自分の言いなりにするつもりなのだろうか?

 俺の視線に気付いたのか、不意に振り返ったメリッサが俺をみて無邪気に笑った。

 ……怖い女である。



 だが、俺達はすぐにそれどころじゃなくなった。

 国王陛下から言葉を賜ったチームとして一躍ときの人となって、縁を繋ぎたい者達に囲まれた。とくに、クリフォード王子に取り次いで欲しいという話が多い。


 という訳で、俺はティリアを生け贄にしてクラウディアと逃げた。

 逃走先は屋上。

 普段は使われていない秘密の場所である。


 そんな屋上のフェンスに寄りかかり、クラウディアに視線を向ける。


「……ようやく静かになったな」

「うん。でも……ティリアちゃんをおいてきてよかったの?」

「あいつなら、上手く逃げられるから大丈夫だ」


 俺よりもよほど要領の良い妹だ。

 今頃とっくに逃れていることだろう。


「それより、俺とクラウディアの関係、live中継で知れ渡っちゃったな」

「あぁうん。ノア様は……嫌だった?」

「まさか。むしろ、クラウディアが嫌かなと思ってた」


 傷心のガゼフを気遣ったとかもあるが、それが一番の理由だ。

 そう答えれば、クラウディアはぶんぶんと首を横に振った。


「嫌なんかじゃないよ。私はノア様の隣に立つために聖女になったんだから、ノア様が嫌じゃないって言ってくれて、凄く、凄く嬉しいよ」

「……そっか。じゃあ俺もクラウディアにお礼を言わなきゃな。おかげで、キミともう一度会えた。聖女になってくれて、ありがとう」


 互いに微笑み合う。

 俺が少し顔を寄せれば、クラウディアも同じように顔を寄せた。そうしてお互いに顔を寄せ、やがて――二人の距離がゼロになる。

 そして――


「お兄ちゃんっ、自分達だけ逃げるなんて酷いっ!」

「ノア、約束通り、クラウディアちゃんとの関係を話してもらうぜ!」


 バーンと屋上の扉が開かれ、ティリアとガゼフが踏み込んできた。

 彼らは俺とクラウディアを見比べ――


「あ~その、昨日は我慢したもんね。邪魔してごめんね?」

「ま、その……なんだ、関係はよく分かった。見せつけられるとは思わなかったけどな」


 二人はそう言って「「お邪魔しました」」と帰って行った。

 視線を戻せば、クラウディアが真っ赤な顔でぷるぷると震えている。


「ノ、ノア様のせいなんだからね!?」


 相変わらずの責任転嫁である。

 俺は苦笑いを浮かべ、可愛い聖女にもう一度キスをした。

 

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【連載版】コイに堕ちた悪役聖女はナナバイ可愛い 緋色の雨 @tsukigase_rain

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