第4話 雪路
シンシンと雪が降り積る今日。
晴れの日か雪の日しかないこの国では、湖も常に凍っている。
「よっ、と…。はァ…。雪かきなんかしなくても良いですけど…」
誰もいなくなった、誰も通らなくなった道になど足跡も残らなければ雪をかいて足場を作る必要も無い。
神はひとり、風にマフラーをたなびかせて必要の無くなったハズの雪かきをひたすらに続けている。
「虚しいな…」
1人そんなことを呟いたところで、慰める人間も誰もいない。
この雪のどれもが、彼らの残骸なのだ。
日が照れば溶けてしまう。
思い出も一緒に溶けてしまう。
神は自分の住処に入り、暖炉を焚く。
暖かな火も、人をここに呼寄せるための温もりだったのに…もう、誰も来やしない。
ここに集まった人間と、ハーブティやチャイ、コーヒーを飲んで雑談し、時に煌びやかな食事を囲んでパーティをしていた。
また、あの光景を見たいと思った。
どうしたら?どうすれば?
あの厄災の原因は分からない。何故あんなことが起きたのか…。この何千年も続く国を共に見続けてきた中で、このような事はなかった。
孤独な時間は突然やってきて、全て消し去っていった。
一人になった途端、やることも何もなくなってしまった。管理すべき土地も、荒らすものがいない。
管理対象の人間ももうどこにも居ない。
「雪かきもそろそろ疲れてきましたね…」
一人、応答してくれるような誰かも居ない中で呟く。
その声は虚空に消えていく。
雪の降る国で、溶けない分厚い雪の道を歩けるように整える必要もなくなってしまった。
「久しぶりに、あの人達のところにでも顔を出してみましょうか」
持っていたショベルを自宅の収納に片付けて、空を見上げる。
今日は比較的穏やかに降る雪を見て、どこに行こうかと思案する。
強がりに見えて寂しがりやな、最年長の紅の国か。
のんびりでマイペースな、それでも人一倍周りを見ている桜皇の国か。
陽気でハキハキとした、みんなの相談役になる天道の国か。
そんなことを考えて、結界を超えられるところまで上昇していくのだった。
終わったあとも君達と 春夏冬 @shiz
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