35 精霊とつるはし①

「…あの子、 誰?」

「……」


私は殺伐としたエストの顔に静かに視線を避けた。 そうした渦中、 向いに座っていたアミールが笑わせるという目でエストを見ながら言った。


「ふふ、 お前か? 私の契約者をいじめる奴が!」

「はあ?契約者?…」


エストは「契約者」という言葉で片眉をちりちり痛め、 私をじっと見つめているエスト。 私はエストの厳しい視線をわざと無視した。 アミールは慌てて席から立ち上がり、 エストの前に堂々と立った。


「私の名前はアミル! 偉大で!高貴で!美しい! 闇の精霊王だ! 今日からハルは私と契約をしたから! 貴様はこれから、 2位の座に退け!」

「……」


エストはアミールの発言に怒りがこもった目でアミールを見下ろした。 エストの目には「お前、 死にたいの?」って言ったし、 エストの殺気立った顔を見てびっくり仰天した。


「……あのね、 妹くん? け、 喧嘩は悪い…ひぃぃぃぃ!…」


ヒカリはそわそわした表情でエストとアミールの間に割り込んでエストを落ち着かせようとし、 エストはそんなヒカリが邪魔になったのか、 首をくるりと回してヒカリをにらんだ。 ヒカリはエストの殺気が盛り込まれた瞳に怖じ気づいたのか私のそばに早く近づいてきた。


「い、 妹くん怖いなのだ…」

「……」

だから、 何で割り込んだんだよ…。


私は私のそばで、 ぶるぶる震えているヒカリを見ながら、 ため息をついながら首を横に振った。 エストとアミールはお互いに激しい神経戦を繰り広げていた。 何のために、 ああするのかは知りませんが、 まずヒカリと私は静かに見守ることにした。


「そっちが精霊王が、 精力王が、 そんなことはよく分からないけど、 もう、 ハルから離れてくれない? 契約は私が先にしたから」


と言って笑うエスト。 笑う姿も本当に殺伐としている。


「ふふ、 もともと、 セカンドが本物のもの!見たところ、 俺の契約者をたくさんいじめたらしいな。 お互いの契約も不安定なようで… 最近、 力もまともに発揮もできなかっただろう?」

「…うっ」

うわぁ、 エストが負けてる… アミルすごいな…。


エストはアミールの発言にドキッとした。 そしてこの状況を遠くから見守っていた私はアミールの発言が全部正しいとして、 しきりに頭を縦に振った。 アミールは正確に、 的を射た。 エストと私は最近に力をきちんと使用したことがなかった。


力をきちんと使用したとしても初めてここに来てゴブリンたちの襲撃、 そしてランと戦った際だけ除いたら全部古いつるはしとして戦った以外にない。


アミールは軽く笑いながらつまらない存在を見ているような視線でエストを見上げて、 発言を続けた。


「そういう、 契約は契約者にも大きな影響を与えるということを知らないのか? 不安定なピュラの使い方、 そして、 お互いに心さえすれ違うのに。 どうやって、 契約者が貴様の力をどうやって使うの?つまり、 貴様はハルを本気で思ってないってこと。 ただ、 貴様がハルを利用しようとするだけ」

「違う!…」


エストは、 アミールの言葉に困惑した顔で否定した。 アミールは、 そんなエストの反応に腕組みをして、 質問を投げた。


「じゃあ、 ここで質問、 貴様は、 ハルに教えたことがあるか? ピュラの使い方とリュウマの使い方を?」

「…それは」

リュウマ?


エストはアミールの質問に戸惑ったかどうか冷や汗を流した。 エストは何の返事もせずに、 アミールは次第に、 殺伐とした顔に変わって行った。


「まさか…教えてくれなかったのか?…」

「……」


エストはどういうわけなのか分からないが、 口をぎゅっとつぐんだまま頭を下げた。 すると、 アミールは怒りするように、 殺気がみなぎった目でエストを眺めながら、 エストの胸ぐらをつかんだ。


「ふざけるな!貴様はハルを殺したいのか!」


本当に、 憤りが盛り込まれているアミルの声にそれを見守っていたヒカリと私は、 ぎくっとした。 そして、 アミールの周辺には、 黒いおらがささやかれ始めていた、 膨大な波動が起きた。


「……」


エストは依然として慌てた表情で私の方をちらっと眺めた。 私は直感的に知ることができた。 エストに如何事情があるだろうということを。


私はこれ以上放っておいたら、 大変なことになりそうだったので、 あわてて彼らがいるところに近づき、 エストとアミールを落ち着かせた。


「さあ~ さあ~ いったん落ち着こう…」

「ぶ、 無礼もの! これ放せ! 私は絶対に落ち着けない!」

「わ、 わかったから。 一応、 言葉にしよう。 暴力はだめだよ」


僕は一生懸命、 笑顔でアミールを 抱き上げたし。 アミールは「離せ! 私は容認できない!」と大声を出し、 エストはがっくりと首を下げて、 私と目を合わさなかった。


「……」


私はそんなエストをまじまじ眺めながら以前のように笑う顔でエストの頭に手を上げながら言った。


「エスト、 とりあえずあそこに座ろうよ。 何の事情があったかは分からないが。 私は君を信じてる」

「…ハル」


そう、 エストがたとえ、 ツンデレみたいな性格があるが、 心は温かい子供だっていうことを私は知っている。 誰より私を一番先に心配してくれたやつだから。

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