32 精霊王③

「……あ、 あのね? アミール」

「は、 恥ずかしいからそんなに見ないでね?…と、 とにかく、 早く契約しよう!」


一体、 何が恥ずかしいの? 私が非常に悪いことをするような雰囲気を作るな!


「いや、 それがね…」


私は冷汗をかきながらわざと笑みを浮かべた。


「何か、 誤解しているようだが… 俺はね…」

「…はっ! ま、 まさか!?」


アミールは私の言葉に驚いた表情を浮かべて私を見つめた。 そして、 慌て両手で自分の体を覆いながら後ろに退いた。


「け、 契約するのも足りなくてあたしの体まで!?ま、 まさか?ロリコン!?」

「ち、 違う! 私を犯罪者にするな! そして小学生に興味ない!」

ああ、 こいつの頭…、 一発だけでも殴りたい!


私はふるえる拳を努めて抑えて目を閉じた。 そして唇をそっとかみしめた。


私はただ、 「何をしたので村人が不便がってるの?」って聞いてみたかっただけだよ! それなのに「契約しよう」などと、 私を「ロリコン」に追い込むなんて! ひどいじゃん! 契約なんか要らない!…と言いたかったが、 それができなかった。


「……」


アミールは凍りついていることのように何も言えず私を眺めるだけだった。 何かすごくショックを受けた表情をしているアミールだった。


うん?なんで、 急にこの反応を?


私は一歩遅れて何かが間違っているということを悟った。 私は凍りついたアミールを見ながら冷や汗を流してた。そして、 アミールの目はだんだん涙があふれ始めた。


大きな黒い瞳は少しでも触れば、 涙が下がるほどいっぱいになり、 私は、 やっと、 過ちを犯したということを悟った。


「……」

…はっ!まさか、 思ったことを口にしちゃったのか!


「じ、 邪魔してごめんね…いや、 すみません…あたしがすみませんでした…」


がっくりと首を下げたアミールは元の場所にうずくまって、 指をくるくる回しながら床に丸を描き始めた。


や、 やばい…


私は冷汗をかきながら、 アミルを慰めるために近付いており、 アミールは玉のような涙を流しながら依然として床に視線が集中していた。


「しくしく!…とても浮かれてすみません… 気が利かなくてすみません… 生まれてすみません…」

「う、 うわっ! ち、 違うよ! アミル!アミルは何も間違ったことないよ! 間違ったのは私だった! あ! そ、 そうだよ! 私だったんだ! 私が悪い人間だったな! あはは!…」

いったい、 何を言っているんだ… 私は…


私は最大限のアミールの気分をほぐすため、 色々試した。 慰めもしてくれたし、 面白い冗談もしてくれたし、 前にシェポンからもらった棒キャンディもあげた。


しかし、 アミールは相も変らぬ面持ちで何も言わなかった。 私は現在、 アミールとエストがあまりにも重なって見えた。 万一、 エストが今よりはるかに幼い年に会ったならば、 アミールのような行動をしているのではないだろうか。という気がした。


本当に考えただけでもぞっとする。


「…名前」

「うん?」


アミールは、 涙声の小さな声で私に話し、 私はアミールの小さな声でよく聞こえなかったため、 再び問い返した。 アミールは私のそのような反応に垂れていた首を持ち上げて私を見つめた。


「…名前を言って」

…いきなり?


アミールは涙が溜まっている顔で私を見上げながら言ったが、 私はアミールの質問にうかうかと言った。


「た、 武田ハル……だけど?」

何だろ、 この不安は?…


私は頭を掻きながら慌てた表情でアミールに名前を言ってくれた。 アミールはそんな俺をまじまじ眺めながら私に手を差し出した。


「…手」

「…はぁ?」


私はアミールの突然の行動に疑問を分からないという表情をしながら頭をかしげた。 アミールはそんな私の反応がもどかしかったのか泣き顔を浮かべて私に叫んだ。


「手!」

「はい、 はいっ!」

な、 何だ? 一体どういうつもり?


私はまた泣き出しそうなアミールの反応に素早くアミールが差し出した手の上に私の手をのせた。 アミールは自分の手に掲載された私の手をじっと眺めていたのに、 いきなり頭をさっとそむけた。


「左手」

「…えっ、 どうして?」


私は冷汗をかきながら努めて笑って見せたし、 アミールはそんな俺を無視しながら、 怒りを露にした。


「右手はもう別のやつと契約してるだろ! だから左手!」

「はぁ?契約?」

まさか、 エストのことかな?


そういえば、 いつもエストと手を握った手が右手だったようだった。 そして今、 アミールに差し出した手も、 右手であったから、 それで左手を要求するのか?


ところで、 なんで手をくれって言ってるんだろ?


私は何も考えずに左手をアミールの手の上に乗せて、 その瞬間「契約」という単語が頭をかすめて通り過ぎた。 以前にもエストと手を握って契約を交わしたんだけど… あっ、 ちょっと待って! まさか!…


「あっ、 ちょっと待って!…」

「もう、 遅い!」

ちくしょう!このちびが!


アミールの手に乗せておいた私の手では紫色の光が放たれ始めた。 そしてアミルと私が座っていた場所には大きな魔法陣が描かれた。 紫色の光はアミールと私を襲った。

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