17 はさみとつるはし②

私の名前は、 シェポンアルミンだ。 小さいころのことだった。 私の家は貧しかった。 いや、 最初は富裕したとした。 母は貴族出身であり、 平民出身だった父と駆け落ちしたとした。 だが、 夜な夜なお酒と賭博で財産を蕩尽した父のせいで、 我々はいつも生活苦に悩まされなければならなかった。


酒に酔うと暴力を振るうアルコール中毒者である父。 そして、 私を抱きしめ、 お父さんの暴力から保護してくれる母。 私は、 「どうして、 父は、 私たちを苦しめているのかな」 という考えをした。


私はいつも、 同じ年齢の子供たちを羨ましがった。 清潔な服と暖かい料理、 そして、 家族。 しかし、 私にはそんなのは存在しなかった。 いつも、 私に戻ってくることは暴力だけだった。 周りの人たちも傷だらけの私を避けて通って、 私にはただ優しいお母さんだけだった、 彼以外には誰ももなかった。


母は、 いつも傷だらけだった。 でも、 私にいつも、 優しくしてくれた。


「かわいくてきれい、 うちのシェポン… 今のように純粋に育ってくれてね…」


私はいつも、 そんな事を言ってくれる母をきょとんと眺めるだけだった。 幼い頃から口数が多くなかった私は黙々と母の話を聞いてばかりいた。 ただ、 頭をなでてあげたりする母の暖かい手に頼り、 「みんなが、 幸せになったらいいな」という考えだけだった。


しかし、 私の願いは行われなかった。 私が、 6歳になった日、 私は初めて殺人ということをした。 精神を起こした時はすでに、 父は首から赤黒い血を流して死んでいた。 母は、 涙を流しながら私を抱きしめていた。


手には、 血で染まっているはさみを持っていた。 きょとんと床に倒れて死んでいる父の死体を見ていた。 母の首を絞めて殺そうとした父の行動を目撃した後は、 何の記憶がなかった。


「シェポン…うちのシェポン… シェポンは、 何の過ちもないんだよ。 お母さんが…、 お母さんが、 全部解決するから…」

「……」

どうして、 お母さんがそんなことを言うんだろう。


私は、 母の言葉に首をかしげた。 理解できなかった。 私が殺したが、 母の過ちがないのに、 どうして、 母が全部解決なさるとしてるんだろう? 私は、 理解できなかった。 母は、 最後まで私を見てあどけなく笑ってくれた。 涙を流していたが、 私を見ながら笑っていた。


母は、 私に初めに清潔な服に着替えさせてくれて、 「しばら、 く外で遊んでいろ」と言った。 きょとんと門が、 閉まるのを眺めていた私に向かって笑顔で、 手を振ってくれた母の姿はそれが最後だった。


「ああ、 本当に、 ひどい現場だな」

「そうです。 おそらく、 妻が夫を殺害したあと、 首をつって自殺したようです」


私は、 手帳に何を書いているおじさんたちに囲まれ、 あめをなめていた。 おじさんたちは優しい声で「しばらく、 おじさんたちと話そうか?」と言い、 私にあめを渡しながら、 いくつか質問をした。 そして、 今は家に入ったおじさんたちを遠くから眺めているだけだった。


おじさんたちは、 二人で何かを話し、 私をかわいそうな表情で眺めた。 私は、 そんなおやじたちを見て、 あめをなめた。 おじさんたちは、 お互いに何かを話し始め、 とても困った顔だった。 しかし、 少しの時間が流れると、 そのうちの一人が私に近付いてきた。


「ご飯は食べた?」

おじさんは優しい声で私に話し、 私は依然としてあめをなめながら首を振った。 おじさんはそんな俺の反応に苦労して笑いながら顔についた土を手で拭いてくれた。


「じゃ、 おじさんたちとおいしいものでも、 食べに行こうか?」


◇◆◇◆


その後、 あれこれ調査を受けた私は保育園に送られた。 母が自殺をしたという事実も、 保育院に移された後、 数年経ってから分かるようになった。 母の墓を見た時、 頭の中で何かが切れるような気がした。 心が故障がなっちゃった。 動かしていた歯車が壊れたかのように、 これ以上動かなかった。 周囲の人たちが私を見る目つきが変わった。 みんな私を遠ざけ始めた。 保育園にいるすべての人たちも、 私を避け、 私を無視して苦しめ始めた。 その後、 私は変な力を得ることになった。


なんで、 私のことが嫌いなの?

なんで、 私を無視するの?

親がいなくて?

私が、 何を間違ったの?

私が、 生まれたことが間違っているの?


「しっかりしろ! 人を恨んで憎んだからといって、 変わることはない!」

「……」


いつのまにか私の上に乗ってつるはしで戦ったやつを見上げた。 どうして、 そんな心配する表情をしているの? 私は、 理解できなかった。 私の肩を両手で押さえつけて、 私を見つめる彼を理解できなかった。


暗い暗雲が徐々に押し寄せ始めた。 冷たい雨粒は一滴ずつ落ち始めた、 私の顔を濡らした。 私はたぶん、 ハルっていうやつの言葉通り誰かを恨んで嫌ったようだった。 私の幸せを妨害して無視していた人たちを憎んだ。 いつも暴力を振るう父を憎んだ。 幸せに暮らし同年代の子供たちを羨ましがって憎くて恨んた。


私だけ不幸なのが嫌だった。 私の悪口をして無視していじめる奴らを批判した。 それで、 私はそんな奴らを殺してきた。 ところで、 ハルは私を悲しい表情で眺めていた。 どうして? なぜ、 私をそんなに見るの? みんな、 私を軽蔑した目で眺めるが、 なんで、 私をそんなふうに見てるの?


少し、 ずつ降った雨がにわか雨のように降り注がれ始めた。 私は、 歯を食いしばってやつの太ももを足で蹴った。 すると、 「ううっ!」 苦痛な音を立てながら、 自分の傷をかばおうとした瞬間、 私は、 早くやつから抜け出して席から立ち上がった。


そして、 両手にはさみを持って苦痛に満ちた顔をしているやつに、 向かった怒鳴った。


「お前が、 何を分かるんだ? 何を、 知ってるんだよ! そんな目で、 私を見るな! むかつく! むかつく! むかつくんだよ!」

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