16 はさみとつるはし①

「くぅっ!…」


やつは、 鼻を抱えながら一歩後ろに退いた。 いや、 後ろに退こうとしたが、 エストがやつの足の甲を踏みながら、 シェポンは動くことができないようになった。


「逃げようとするな」


エストの拳は、 昨日のように青色が輝いた。 逃げられなかったスェポンに向かってエストは拳を振りかざし、 やつの腹部に価格。 しかし、 やつもエストの動きをすでに把握していたのか両腕をあげ、 ガードの姿勢で防御した。 エストは、 「ちぇっ!」とし、 面倒という表情をした。 しかし、 攻撃を止めなかったエストは体を回転させてやつに蹴りを攻撃を試みた。


だが、 それを見守っていた私は変な気がした。 シェポンは、 エストの攻撃にも当惑した気配が全く見せなかったからだった。 一体、 なんでだろ? エストが、 やつに蹴り攻撃を試みた瞬間、 その時だった。


「エスト!危ない!」


私は慌てて、 エストの名前を叫んだ。 また、 他の大きなはさみはひずむ空間の中で召喚され、 鋭い刃を広げてエストの足を切断しようとした。 エストは、 自分も予想できなかった状況に困惑した表情だったし、 私は急速にエストに手を伸ばした。


体が率いる通りに動いた。 見慣れた感じ、 慣れた気運、 慣れた機運の戦慄が私の体全体に広がった。 すべてが映画のようにゆっくり見せ始めた。 鋭いはさみの日はゆっくり動いたし、 当惑したエストの瞳は微細に震えるのが見えた。


…エストが危ない!


エストを向かって伸びた手で光が強く吹き出した。 手の甲でも刻まれていた文章は青みを吹き出しながら頭の中に慣れていても、 聞き慣れない単語が浮かんだ。


『リコール(recall)』


光はさっきより眩しく光を出し、 ある瞬間、 つるはしで変わったエストは私の手に入っていた。 すれすれにエストを無事に回収できた。 鋭いはさみは殺伐とした音をたてて閉じられたし、 シェポンは残念だという表情をして舌なめずりをした。 エストの震える声が私の頭の中から聞こえてきた。


『な、 な、 なに?… あ、 あ、 あんたが、 どうやって「召喚」の注文を…?』

「わ、 私もよくわかんない…」


そうだ。 私もどのように使ったかよく分からない。 ただ、 ムムが動くままに行動しただけだった。 私は緊張した顔で舌なめずりを打つシェポンを眺めた。 両手に二つの巨大なはさみを持っているやつは依然として殺伐とした微笑をしていた。


もし、 私がエストを求めていなかったら、 恐ろしい状況を目撃したのだ。 私は、 武器と化したエストを眺めながら緊張した表情で唾を飲んだ。


「ああ ~、 残念~ 今、 その生意気な友達の足を切ってあげようと思ったのに~」

「……」

どうしたら?…


私は慎重に考えた。 はさみを舌でなめて、 殺伐とした表情をしているやつは今この状況を楽しんでいるようだった。 これから私たちに与えられた時間はあと12時間だけ。 時間の余裕がない。 私は、 私の手に入っている古いつるはしをまじまじ眺めた。ランと戦った際のあの感じとは全く異なる。 一体、 どうして?


『ハル!左だよ!』

「…うっ!」


私は、 エストの言葉にあわてて、 体をひねった。 鋭いはさみは私の左肩を刺そうとし、 エストのおかげにすれすれに攻撃を避けることができた。 昨日より、 攻撃速度が速い。 やつの攻撃を回避する瞬間、 今度はまた、 他のはさみが私の腹部に向かって刺して入ってきた。


それをすでに見抜いていた私は後にしりぞくとしたが、 その瞬間、 怪我を負った太ももで痛みが押し寄せた。


「うっ…」

痛!…


私は、 押し寄せる苦痛に小さくうめき声を出してつまずくた。 包帯が巻かれた太ももを横目でちらっと見たスェポンは悪魔のような微笑を浮かべて攻撃の怪盗を変わった。 やつの攻撃は私の腹部じゃなく、 私の太ももに向けった。 危険ということを直感的に感じた私は急速にやつの攻撃を、 つるはしで打ち返して、 出した。


鉄同士でぶつかる音が鳴り、 摩擦によって小さな炎がはねた。 私は唇をかみしめて痛みを我慢した。 シェポンは、 殺伐とした目で私を見つめた。


「僕を無視する奴らは全部悪いんだ。 だから、 みんな死んでほしい」

「…おまえは狂ったよ」

「いや? 僕は狂ってないよ? ただ、 何の理由もなく、 僕を憎んで恨むこの世界が狂ってるんだよ! 弱者を無視して、 踏みにじり、 この世界の社会は間違っている! 僕はこの神の塔の神になって、 すべてを平定する!」

「……」


私は、 やつの発言に何の話もしなかった。 弱者の前では強く、 強者の前では弱いなこの社会は私が住んでいた世界にも同じたからだ。 弱そうだやつは強者に利用されていじめを受けるこのゴミのような社会は私も嫌いだった。 前では親切にしてくれて、 後ろでは人を悪口を言う人間たち。 この人間のために私も人々と対話することをはばかっていた。 人たちと付き合うことを嫌ったために一人で過ごすのを選んだ。


しかしさ、 それは私、 自身が変わらなければ、 周りの人たちの態度も変わらないということを最近に気付いた。


【君は、 何の本が好き?】


一人で、 寂しく本にのみ期待していた私に暖かい手を差し延べてくれた彼女が思い出した。 周りの人たちを全く気を使わず私に取っ付き易いに近づいて来て言葉をかけてくれた彼女。 彼女と会った以後、 私はいろんなものが変わっており、 周りにいた人たちの視線を少しずつ変わっていった。


「みんな、 お前を憎むって? それでこの世界を平定したいって? それが、 お前の復讐? ふざけるな!」


私は、 真剣な表情でシェポンを眺めた。 依然として太ももで感じる苦痛を堪えてやつに早く駆けつけた。 シェポンは私の突然の行動に慌てたのか、 防御の姿勢をしたが、 私は持っていた古いつるはしをやつに勢いよく振り回した。


「そんな、 ばからしい偏見は捨てろ!」

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