12 神々の塔

「冒険者たちよ! 神々の塔へ、 ようこそ!」


勇壮な声と一緒にここにいる、 すべての人々は緊張した雰囲気だった。


「これから、 ここにいるすべての冒険者たちは試験を受けることになるのだ! そして! 冒険者たちには、 実力に見合ったランクと所属が与えられるはずだ!」


玉の中で、 言葉が終わった瞬間、 遠くから、 誰かが歩いてくる様子が見えた。 私たちがいる、 所へ歩いてくる10人の人々は、 尋常ではない雰囲気であり、 彼らの冷ややかな雰囲気に冒険者たちは、 緊張した冷汗をかきながら唾を飲んだ。


言葉は、 続いた。


「これから、 ランカー選抜試験を始める! 冒険者たちは、 みんなそれぞれの位置に!」


玉を囲んでいた冒険者たちは、 彼の言葉通りそれぞれ大きな魔法陣がいる所へ歩いて行った。 周囲に円形に位置している魔法陣は、 エストと私を含めて31つが存在した。


私は、 あたりをきょろきょろ見回し、 どこに行けばいいのか悩みに陥り、 エストは、 そんな俺を横目でちらっと見て、 私の手首をつかんで席が空いている魔法陣で私を導いた。


「いつまで、 じっとしているの?」

「ご、 ごめん…」


エストと私は、 空いている魔法陣の上に一緒に躍り出て、 我々を見守っていた10人の人員は静かに私たちを眺めるだけだった。 私は、 注目されたような気に負担を感じ、 普段より数倍はもっと緊張された。


あまりに、 じっと見つめているんじゃないの? 負担なんだけど…。


「さあ、 冒険者よ! 今から、 監督官の 『ルリ』 の主体のもと、 ランカー選抜試験1対1 ランダムトーナメントを、 開始する! ルールは簡単! 能力の使用は自由! 何をしてでも、 生き残る方の勝利! そして、 制限時間は24時間! 逆に、 24時間以内に決着がつかなければ、 二人とも失格だ」

「……」


本当に、 始まるのかな…。


ここの試験場内は緊張感に満ちていた。 みんな、 お互いの顔色を見て警戒している表情だった。 十分にそうしそうなのは、 お互いの能力も知らず、 知っている情報もないだけでなく、 ランダムトーナメントというのが、 一番大きなハードルだ。 私は、 アイリスが 「試験はかなり、 難しいですよ~」 と言ってくれたことを、 今になって理解することができた。


「それでは、 説明はここまで! ゲームを始めるようにしよう!」


玉の言葉が、 終わると同時に足元に位置していた魔法陣から光が放たれ始めた。


「…まぶしい!」


私は、 顔をしかめながら目を守った。 しかし、 それもつかの間、 私たちは、 知るすべのない空間に移動していた。 野生動物の鳴き声に満ちた森の中。 そして、 高くそびえる大木。 私たちが、 初めて世界に移転した時の場所と非常に似ていた。


「うう… くらくらする… だから、 私は空間魔法が一番大嫌い…」


エストは、 目まぐるしい髪を抱えながら苦しい表情でうずくまっており、 私は、 ゆっくりと首を回して周りを見渡した。 瞬間、 どこからか女の子の声が聞こえてきた。


『ああ~ マイクテスト~ 一、 二、 一、 二~ ちゃんと、 聞こえてるんだよね?』

なんだ? あれは…


私たちの枕元の上には、 『ももこ』模型の人形が宙にふわふわ浮いていた。 エストは依、 然として頭を抱え、 頭痛を訴えていたが、 私は宙に浮いている、 ももこ人形に視線を集中した。


『私の名前は、 ルリ! 今日、 この試験を管理することになる選別委員だ! 君たちが移転した場所は、 《嘉祥領域》という空間だ! それぞれの地形の特性をうまく応用して、 生き残れるように! それでは、 全力を尽くして技量を見せてほしい。 この試験は、 有力ギルドの主力メンバーが注目しているので、 上位ランカー、 そして、 ギルド入団は、 冒険者の君たちにとって必要不可欠(ひっすふかけつ)! 彼らにはいいアピールになるだろう! じゃあ、 健闘を祈る!』


ももこ人形から、 流れ出た女性の言葉が終わると同時に人形は姿を消した。 森の中は、 尋常ではない向かい風が吹き始めたし、 私は背筋がぞっとしてくる感じを受けた。


「エスト! しっかりしろ! エスト! とりあえずここを早く抜け出そう!」

「うぅ…、 むかむかする…」


私は、 目がくるくると回っているエストの手を取りながら早く走った。 普段より体が、 軽くなった感じだ。 運動神経が、 なかった私には走りさえもうまくできなかった私だったが、 今は、 以前と変わった感じだった。


「うわぁ、 お前、 意外と速いな~」

「……?」


その瞬間だった。 幼い男児の声が、 耳元でささやくように聞こえてきたし、 私は首を回して声が聞こえてくるところを見た。 すると、 大きな、 棒キャンディを舌でなめている小学生の姿の男の子が、 殺伐とした表情で私を見ていた。


私は、 「うわっ!」悲鳴を上げて後ろに退いた。 男の子は、 私の反応に首をかしげながらあめを口にくわえた。


「なんで、 びっくりするの?」


私は、 息を切らしてエストと私を殺伐とした表情で、 見守っている男の子を警戒した。 異様な機運を漂わせている男の子は、 魂が込められていない瞳で私たちを注意深く眺め、 惜しくもという表情を浮かべた。


「一緒に遊ぼう~ 私、 すごく、 すごく、 退屈だよ~」

「……」

何だ、 このぞっとする感じは…?


私は、 直感的に感じることができた。 こいつは危険だ。 とても不吉な機運を漂わせている。 私は、 私のそばで元気がなさそうなエストを見て冷や汗をかいた。


本当に、 おかしい。 いつもの日だったら、 今にも回復したエストが、 今は、 少し違う。 これから、 残った時間は24時間。 たぶん、 我々の相手は不吉な機運を漂わせているあの男の子のようだ。 平凡な服装をしている男の子は、 依然としてあめをなめながらにこにこ笑っていた。 外見は、 危なくない平凡なちびだけど、 油断してはならない。 ここは、 ファンタジー世界だ。 魔法と超能力が存在する世界。 何の能力がない私にはとても不利な世界だ。


「…ちぇっ、 ちくしょう」


私は、 頭痛のために苦しんでいるエストを両手で抱き上げた、 目をつぶっているエストは、 何の反応もしなかった。 いつもの日だったら、 「触るな! 変態! ばか!」とし、 体をばたつかせたエストだったが。 今は、 そんな力が残っていないように見えた。


私は、 急速に反対側に向きを変え、 精一杯走った。


とりあえず、 逃げよう!


「え~ なんで、 逃げるの?~」

「……」


当たり前だろ! 私は、 戦って勝つ自信がないよ! このようになった以上! エストが、 回復するまで長期戦にしよ!


男の子は、 なめていたあめを止めて遠く逃げる私を哀切な目で見つめた。 しかし、 それもつかの間男の子は歯を食いしばった。 表情が急激に変わり始めた。 笑う顔、 泣き顔、 怒った顔、 嫉妬する顔、 無表情な顔。 彼の顔は、 継続して変わっていった。 段時間がたつほど暗くなる彼の表情は、 「悪魔」そのものの顔に変わって行った。


私は、 首を回して横目で男の子の姿を見守った。 遠くから逃げる私を、 じっと眺めている男の子の視線に、 背筋がぞっとしてきた。 私は、 しきりに 「やばい! やばい! やばい!」 を心の中で叫びながら、 できるだけ男の子と遠く落ちるために努力した。


「うっ… ハル… ここは、 どこ?」

「エ、 エストさん? い、 今、 かなり、 危険な状況なんですけど… もしかして…、 手伝っていただけないでしょうか?…」


私は、 切ない表情でエストの目を眺めながらはなし、 エストは、 まだ頭が痛いのか、 こめかみを手でついて印象をしかめた。


「……私も、 そうしたいんだけど、 頭がすごく痛い。 まるで、 誰かに邪魔されているような気分が…あっ! ハル! 気をつけて!」

「…ん?」


エストは、 驚いた表情で空を指し、 私はエストの言葉にさらに不安な気がした。 私は、 緊張した表情で頭をゆっくり回して空を見上げ、 そこには、 先のその男の子が空中にいた。 とがっていて巨大なはさみを持っている男の子は、 一匹のうさぎを狩る猛獣のように私たちに飛びかかった。


「ひー、 ひーっ!あ、 悪魔! 悪魔だ!」

目、 怖い!


私は、 私たちを殺そうとする男児の殺伐としたまなざしに、 仰天した表情でズボンに小便をするところだった。


これから、 私たちに残った時間 23:32:51秒。

私たちは、 こちらで生き残らなければならない。

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