06 勇者になった

「お…、 広いな…」


私は、 塔の中を見ながら感嘆し、 目を光らせる。 塔の中はとても高級な雰囲気だった。 金でデコレーションされた装飾品はつやが流れ、 素敵な彫刻が飾られていた。


私たちは、 オッドアイ美少女の案内を受け、 大きなテーブルがある席にかけた。


「私の名前は、 アイリス。 ここを管理しながら塔を登りたがっている、 勇者たちを案内しています」


顔もきれいですが、 名前もきれいだ。 本当に、 この世界に来てよかったようだ。 私たちは、 アイリスの向かい側にいすを持ち出して座った。 アイリスは、 おとなしく座って私たちを見ながら笑みを浮かべた。


「もしかして、 ランカーに興味が、あっていらっしゃったんですか?」

「…ランカーですか?」

「ランカー?」


私とエストは、 彼女の言葉に何も知らないという表情で首をかしげた。 すると、 アイリスは少し困惑して表情をしたが、 それもしばらく、 ぱっと笑ってきちんと説明してくれた。


「ランカーとは、 塔を登る勇士たちの愛称だと思ってください。 ランカーの種類はそれぞれ異なりますが、 EランクからSランクまで存在します」

「そうですか…」


このように、 説明を聞いたらゲームの中の世界観の中に存在するシステムな感じがした。 そうだったら、 私たちも登録すれば、 ランカーになるの? したくないけど…


「ランカーに登録するとどうなるんですか?」

「もし、 ランカー登録をするとまず実力を確認するために試験を受けることになります」

「試験ては…難しいですか…?」

やべ、 私勉強は最悪なのに…


私は不安な表情でアイリスを見ながら話し、 アイリスはそんな俺を安心させするかのように笑いながら話した。


「はい、 難しいです! まいど、 志願者は多いけど合格者はあまりいないんです。 たまに試験に落ちた人たちの中に昏睡状態で入院する人もいますよ」

「……」


あの、 アイリスさん? それは単純に難しい問題ではないですけど? それより、 笑いながら話すからもっと怖くて不安ですけど!?


私のそばに座って、 対話を聞いていたエストは短く笑ってがらテーブルに置かれている、 オレンジジュースを飲みながら言う。


「ふん! 試験のくせに! なにが怖いんだよ!」


自信満々な表情で、 オレンジジュースを飲んでいるエストだったが、 ジュースが入っていたガラス杯はひどく震えるのが見えた。


「……」


私は、 言葉と行動が異なるほか、 行動するエストを切なく眺めた。 アイリスは、 自分の書類かばんで何かを無意識に取り出し、 テーブルの上に載せた。


「これは、 ランカーを登録する書類です。 そして、 もう一つは試験を受けることができる表です。 お二人は、 一緒に行動されるようですから。 代表者の名前はハルさんのお名前で、 申し込んでおきます~」

「あ…、 はい…」


私は、 うかうかと申請書に名前を書いてしまった。


アイリスは、 幸せな笑みを浮かべ、 私に代えて書類を私の署名を除いたすべてのものを作成してくれた。 私とエストは、 作成されていく書類を呆然と眺めてばかりいた。


「さあ! 終わりました! 試験は、 明日のひるすぎ3時までここに来てくださればいいです!」

「あ…、 ありがとうございます」


本当に、 ランカーに登録してしまった…。あまりにも、 順調に状況が流れていった私は気がつく傾向もなかった。 もう、 一度アルゴノートの偉大さをここで感じることができた。


アイリスは、 私に受験票を渡し、 エストと私は受験票を静かにみつめてばかりいた。


『受験番号:4888/名前:武田ハル』


受験票には、 きれいな書体に私の名前が書かれていた。 精密に作成されている書類の下段には小さな字で何かが書かれていた。


『E Rank勇者(Unknown)』


エストと私は、 それを見ながら首をかしげた。


◇◆◇◆


「ああ…、 おなかすいた…、 エスト…食べるものない?…」

「それをなんで、 あたしに聞くんの!ばか!」


エストは、 空腹で疲れている私に怒った。 私たちは、 村の真ん中にあるクラナドの広場と呼ばれる噴水の隣に座ってぼんやりと空を望んでいた。 私は、 自分の手に入っている受験票を見ながら、 深いため息をつく。


「エスト」

「なに」

「試験…、 大丈夫だよね?…」

「……」


私の問いに、 エストは何も言わずに、 私たちの前を歩いている鳩たちをぼんやりと眺めた。 いつも、 自信満々たエストが何が口を閉じていることにわたしの不安感はさらに拡大した。


私は、 ずきずきしているこめかみをかかえながら、 絶叫した。


「ああ! 私たちはもう終わったよ! 終わったって! 私はもう家に帰れない! 一生行けない! 彼女に会いたい! ゆうこ!ー」

「……けっきょく、 完璧なばかになったな」


私は、 精神崩壊になったかのように踊り狂った。 エストは、 目を細くしながら僕の反応に首を振った。


「ど、 どうすればいいんだ? エスト! 答えてくれ! お前は、 神の武器だろ! そのゴミ女神の武器だろ? だから、 早く! 答えてく…ケゲック!」

「うるさい! ばか! うるさい! うるさい! うるさい! このばかたれ!」

「ケケッ! 息が! ケッ!」


エストは、 これ以上我慢できなかったのか押さえていた感情を爆発させた。 私の胸ぐらに摑み、 精いっぱい振り始めたエストのおかげで私は息が詰まったし。 エストは、 コーラを揺さぶるような私を左右で思い切り振った。


「これは、 全部誰のせいなのか分かる? 全部きみが原因だよ! このばかたれ! 私はマ、 ナ様の最高の武器だよ! 神々の中でも、 最高の武器と言われた 『エステリオン』 だよ! それも、 最高のデスサイドだったんだよ! でも、 今はどうなったか知ってる? ただ、 つまらない最下位武器のつるはしだよ! つるはし! ドワーフも使わないつるはし!—」

「ケケッ…! ケッ! い、 いちおう落ち着いて…。 ケケッ!」


エストは、 私を殺しそうににらみつけて、 興奮を止めなかった。 私の胸ぐらを、 捕まえているエストの手を早くテップを打って苦しい表情を見せ、 エストは、 そんな俺を許さないという表情で眺めながら叫んだ。


「黙れ! このばか! 変態! ばかたれ! 勇者はなんの勇者! けっきょくは、 私の力を使って塔に上がるのに!」

「ケケキ!…わ、 わかったから… い、 息が…ケケッ!ケッ!」


エストは、 依然として方が取れていないせいか、 私の胸ぐらを狂ったように振り始めた。


「むかつく!むかつく! むかつく!」

「……」


あ…、 本当にこのままで死ぬかも…


私は、 学校で授業で 「走馬灯」 ということに習ったことがある。 走馬灯。 それは、人が死ぬ前、 今までいた思い出を頭の中をかすめていくという。 人が、 死ぬ一歩直前に感じるというのが、 走馬灯だ。 そして、 今私の状況がそうだ。


「ケケック…そ、 走馬灯が…!」


私は、 震える手で自分の胸ぐらを捕まえていたエストの手を握っており、 エストは、 下唇をかんで私を地面に押しのけていった。 床に倒れた私は、 がっくり場にくずおれになった。


「ああっ! …痛! 私のお尻が!…」


私は、 痛いお尻を撫で、 涙を浮かべた。 それを見ていたエストは、 深いため息をついて再び噴水台に座る。 エストは、 腕を組んで頭を反対側に回して私の視線を避けた。


「…本来の力さえ取り戻せていれば、 こんな心配もなかったのに」

「……」


エストは、 自尊心が傷つけられたのか泣きたい気持ちをぐっと我慢しているのが見えた。

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