03 契約成立

「「「キャアアア!!」」」


ゴブリンたちは、私を警戒するようにしばらく後に退いた。 しかし、 短剣は、私に向かっていた。


私は、自然に姿勢を低めた。 体が、導かれるままつるはしを両手で取り合った。 つるはしに、刺さっていた赤い玉は明るく光を輝かせながら、私の体の中で、うろついていた力がつるはしに食い込むような感じがした。


『ふり下ろして!』

瞬間、頭の中で、エストの声が聞こえてきた。


私は、エストの言葉通り、乾いた土にふり下ろした。つるはしは、大きな爆発音とともに森の全体が揺れ始め、爆発音に驚いた鳥たちは群れをなして逃げ切り、周りにいた動物たちが、速いテンポで逃げ始めた。


私を警戒していたゴブリンたちは、萎縮して冷や汗を流す。 私は、ゴブリンたちを凝視し、乾いた土の靴底に、打ち込まれていたつるはしを、力強く抜いた。


「ふぅっ!…」


私は、呼吸を大きくし、再度、つるはしを振り下ろした。 その結果、つるはしで青い光が放たれた、青い光は、ゴブリンたちを襲った。


「「「キエエエエエ!—」」」


青みに襲ってきたゴブリンたちは、苦痛の悲鳴を、上げてしんきろうのように、ほこりになって消えており、彼らがいた場所は、森に一直線に穴が空いたように消滅していた。


「うっ…」


頭がずきずきし、くるくると回るような頭痛が押し寄せた。 体から、力が抜けた感じを受けた、私は持っていたつるはしを床に落とした。 足の下に、落ちたつるはしはいつの間にか、エストの本来の姿に戻っていた。 私は、がっくり体が崩れるように床に倒れた。


「 !」

「……」


聞こえなかった。 エストは、おどろいた表情で、私を見つめながら、語る声が聞こえなかった。 体が、とても重い。 意識が、分解して深い闇の中に沈む気がした。


眠い…


私は、徐々に精神を失っていった。


◇◆◇◆


エスト、彼女の本当の名称は「NO.1エステリオン」


彼女は、12つの神の兵器のうち、『死後の世界の神』の最強の武器だ。 エストには、他の神々の武器とは、別に特別な力が存在した。 死後の世界の神は、他の神様とは違い、好奇心が、多くの神として有名だった。 それで、死後の世界の神、マナはエストに特別な力を、付与してくれた。


それは、まさに武器を、自由自在に変形できる力!


そうだ。 エストは、自由自在に変形できる力がある。 契約者の能力と、特性によって彼女は姿が変わる。 「エクスカリバー、デスサイド、ハンマー、銃、盾」…など多くの兵器に、変形が可能である。 他の兵器より、優れていたエストは自信満々な勢いで、ハルと契約を結んだ。 しかし、予想とは違って、ハルはエストの力を、全部吸収してしまったのだ。


ところが、 ハルは、能力を吸収する才能が優れていたが、体力条件が、ついてこなかったことだ。 エストは、契約者の能力に比例して姿が変わるエゴソードだ。 ハルの体力は、レベル1にも近い能力値を持っていたために、エストは結局、最下位武器と呼ばれるつるはしに、なってしまった。


「あ…あり得ない!…神の武器で、あたしが… 神の武器で、あたしが! つるはしになっちゃうなんて!— ちくしょう!— 」


エストは、気絶しているハルを恨みながら、涙を浮かべた顔で叫んだ。 エストは、恨みに満ちた目つきで、気絶しているハルをにらみつけて、歯を食いしばった。 エストは、神々の中でも最高の神の武器だと認められた、マナのエゴソードだ。 マナを、失望させないために、多くの修行と能力を、自由の自制で違うことができるように練習し、マナに、見合った神の兵器として誕生することができた。


しかし!


ハルと契約を成立した後、最下位の武器である、つるはしになってしまった、エストは今まで、努力してきたすべてのものが、水の泡になってしまったわけや他ならなかった。


「マナ様! 本当に、これが、あたしの試練なんでしょうか? もし、 そうだったら、あたしはもっと、熱心に努力します!」


だとし、澄んだ空を、見上げて叫ぶエストだったが、100ゴールドに、売られ、ここに来るようになったことを、まだ、知らないエストだった。


エストは、依然としてハルを肩に背負って、森の中にある道に沿って、村があるところに向かった。 しばらく、道を歩いていたエストはどこかで、馬車が動く音に耳をそばだてた。


「あの!ちょっと待って!…」


エストの声に、追い越して行こうとしていた、馬車は止まった。 大きな馬車の中には、誰も搭乗しなかったのか、ただ、年老いた老人と馬車を引いている、巨大な赤いミミズ「ももこ」が、運行をしていた。


バカみたいに、生じたももこは、この世界の霊物と呼ばれるほど、とても、特別な存在だ。 ももこは、いつも、子犬のように長い舌を出しながら、移動するのが特徴だ。 ももこの特別なともは、平凡な人間には近づかない点。 そして、ももこらを触ることのできる人間は、ももこらに、認定を受けた人間だけが可能だ。


ももこは、かわいい目で、気絶しているハルを眺めながら、目を輝かせた。


「…この危険な、森の中でどんな用件か?」


年が、多く見える老人は、体を震えながら、エストに聞いたし、エストは、老人を見上げながらせつに頼んだ。


「ちょっと、町まで乗せてくれない?…少し事情があって…」

「ふむ…」


老人は、震える手で白いひげをなでながら、思いにつかったように、エストとハルを交互に見た。 老人は、ハルを輝く目で、見つめている、ももこの反応に首を縦に振った。


「事情が、あるとしたら… しょうがないですね。 一緒に、村に同行しましょう」

「…ま、マジで!? 本当に、ありがとう! いや、 本当に、ありがとうございます!」


エストは、老人の許諾に明るい表情で、頭を何度も下げて感謝を示した。


心だけは、暖かい子ということに、気づいた老人はエストのそんな姿に、「ふふふ!」言いながら笑った。

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